オンボーディング Onboarding 「新卒社員」や「中途社員」が辞めない仕組みづくり
『オンボーディング』とは、新入社員をスムーズに社内に溶け込ませ、パフォーマンスを上げさせるための一連の仕組みづくりを言います。この冊子ではHR先進国であるアメリカ企業の事例も踏まえ、人材育成のための最新のメソッドを解説。
オンボーディングの具体的な取り組み方をご紹介しています。
HRの基本
公開日:2020.10.6
人事の仕事をしている方ならぜひ知っておきたいものがコンピテンシーです。聞いたことがあるという方もいらっしゃるでしょう。今回はそんなコンピテンシーについて、メリットやデメリット、活用場面を解説します。
目次
コンピテンシーとは優れた結果を出すことができる個人の特性のことで、業績のよい人の行動特性と訳されることが多いです。学歴や知能が同等でも業績の差が出るのはなぜかという研究が行われ、その中でコンピテンシーが提唱されました。そして高い業績を上げる従業員の行動特性をモデル化し、人事や人材活用の場で使われるようになりました。
コンピテンシーは具体的な行動とともに、親密性や傾聴力、係数処理能力、論理思考といった能力にも注目します。これらの評価はその人材の会社への貢献度にリンクしやすいという特徴があります。特にアメリカではコンピテンシーが採用と結び付けられることが多く、そうした人材採用のことをコンピテンシー採用と呼びます。
コンピテンシーとは、ご説明したとおり高業績と直接結びつく個人の行動特性のことです。したがって、コンピテンシーを重視して人事評価をすると、その人材は仕事で業績や成果を出しやすいというメリットがあります。人事評価というのは会社に大きく貢献する人材を評価するのが目的であり、そのためコンピテンシーの導入は人事評価の本来の目的と合致するといえるでしょう。
コンピテンシーで重視される能力の定義をきちんと公表して、これをもとに人事評価をしていると従業員に伝えれば、人事評価の公平性を高めることができます。従業員は評価基準を知り、自分の評価がそれに基づいて行われていると実感することができます。評価の根拠を知ることができれば、より納得できるのです。
一般的な人事評価は評価者に大きな負担がかかるものです。コンピテンシーを取り入れる場合は基準が明確になり、コンピテンシーを有するかどうかをもとにして評価を決めていけばいいため、人事評価の負担が軽減されます。
コンピテンシーを利用することは必ずしもメリットだけではありません。実はデメリットも存在しているため注意しましょう。コンピテンシーの活用で生じるデメリットについて紹介します。
コンピテンシーには明確な定義が存在するわけではなく、人事評価に活用するならば、自社独自の基準を定義しなければいけません。すべての部署や職種で同じコンピテンシーを用いるのは難しいため、それぞれについて細かく定義する必要があります。コンピテンシーの分析をして、モデルを開発し細かな調整をしてから導入するという流れになるため、導入までに時間がかかりハードルが高いといえます。
コンピテンシーを採用する際には自社に適した内容を定義しなくてはなりません。しかし、その際に間違えたコンピテンシーを採用してしまうと、コンピテンシーによる評価は見当外れなものになってしまい、むしろ組織へ悪影響を与えてしまうでしょう。組織の業績に本当に貢献できるようなコンピテンシーをきちんと定めて評価することができなければ、無意味なものになるのです。
企業の環境は徐々に変化していくもので、その際にはコンピテンシーの内容を改定していかなければいけません。環境が変わったにもかかわらず、コンピテンシーをそのままにしておくのは悪影響があります。会社が人材に望む要素はどんどん変化していくものであり、それに合わせて会社に貢献できる人物のモデルを変化させることが大切です。コンピテンシーは企業方針や事業の変化などに適応しにくいというデメリットがあることをよく理解しておきましょう。
これから会社でコンピテンシーを導入するための流れについて紹介します。
コンピテンシーを導入するにはまず最初に、自社ではどのような特徴を持った社員が仕事で成果を上げているのかを考えてみます。そういった特徴を持った人物像をモデル化することができれば、それをもとにして人事評価の基準をつくることができます。実際に仕事ができる社員に注目してみて、その行動特性を分析したり、どんな仕事の仕方ができる社員なのか考えてみたりしましょう。
手本となる従業員の行動特性をまとめることができたら、実際にそれをどの程度実践できているのか、スキルをチェックしてみましょう。明確に基準を定めれば、それと照らし合わすことによって、個々の従業員のスキルを判断することができます。
社員のスキルをチェックしたあとは、それぞれの社員に気づきを与えることが大切です。その会社で成功するための行動特性を自分が身につけているのかどうか、何が不足していて、どのような努力が必要なのかを考えさせてみるのです。そのために月報や朝礼などで確認を実施してみるとよいでしょう。
コンピテンシーでは自己評価をするだけではなくて、上司や同僚、部下からの評価も大切です。行動基準を実際に達成できているかどうか評価させることによって、より正確な分析ができ、思い込みや勘違いなどを修正する機会が生じます。指摘された点を意識して改善していくことによって、より水準がアップするでしょう。
コンピテンシーをいきなり人事評価にリンクさせようとしても失敗することが多いです。社内でコンピテンシーによる評価が定着したところで、リンクさせるとよいでしょう。まずはコンピテンシーの基準をつくり、それぞれの従業員について評価や分析をして、改善するという流れをつくります。この流れが上手くできれば、コンピテンシーと人事評価のリンクはスムーズに進むでしょう。基準を多く満たした社員の人事評価をアップさせて給与に反映させるのです。
面接にもコンピテンシーを取り入れることは可能です。そこで、コンピテンシー面接のメリットを紹介しましょう。
コンピテンシーを面接に取り入れることによって、より会社に貢献できる人材を雇えます。すでに社内の人事評価にコンピテンシーを取り入れているのであれば、自社でどういった行動特性のある人材が活躍できるのかはっきりしているはずです。その人材特性を有している人材を面接で見極めていくことで、将来戦力として活躍してくれる人材を集められます。
従来の面接では担当者によってどうしても評価差が生じていました。コンピテンシー面接の場合には、面接における評価基準がしっかりと定まっていて、第一印象などの影響が低いため、採用担当者による違いが生じにくいという利点があります。より客観的な面接が可能となり、自社に貢献できる人材の選別を公平かつ正確に行えるようになります。
コンピテンシー面接によって、自社で活躍できる行動特性を持った人材を雇うと、その人材はスムーズに会社に定着するようになります。会社の業務との相性の良い人材を積極的に採用することになるからです。採用後は会社ですぐに力を発揮することができるため、離職率の低下にもつながります。
現在、コンピテンシーはとても注目されています。その理由や背景について詳しく説明しましょう。
日本の企業の多くが成果主義を導入するようになりました。人事評価において業績や成果を重視するケースが増えていったのです。そうなると、人事評価についてより客観性が求められるようになります。本当に自社の事業に貢献した人物を評価することが求められ、そのためにコンピテンシーが注目されたのです。コンピテンシーを導入することで、自社の業績に直結する能力を有する人物をきちんと評価できます。
近年、どの業界においても企業の競争がとても激しくなっています。他社に遅れをとってしまうと、そのせいで企業の業績がすぐに悪化して倒産の可能性が出てくるのです。このような状況で企業が生産性を高めるためにコンピテンシーが求められました。コンピテンシーを活用することで本当に企業に貢献できる人材を選び評価できるようになれば、企業の成長に大きく寄与すると期待されているのです。
企業はコストカットに必死になっていて、ムダな人員を雇う余裕がなくなっています。教育にかけるコストも限られていて苦労している企業が多いのです。そこで、コンピテンシーを取り入れれば、企業に貢献できる人物を選ぶことができ、伸ばすべき能力もきちんと指摘することができます。それが結果的にコストカットにつながると考える企業が多いため、コンピテンシーが注目されるようになったのです。
今、日本の企業が注目しているコンピテンシーについてまとめました。コンピテンシーにはさまざまなメリットやデメリットがあります。本記事をご参考によく内容を理解してからコンピテンシーの導入を検討してはいかがでしょうか。
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