オンボーディング Onboarding 「新卒社員」や「中途社員」が辞めない仕組みづくり
『オンボーディング』とは、新入社員をスムーズに社内に溶け込ませ、パフォーマンスを上げさせるための一連の仕組みづくりを言います。この冊子ではHR先進国であるアメリカ企業の事例も踏まえ、人材育成のための最新のメソッドを解説。
オンボーディングの具体的な取り組み方をご紹介しています。
HRの基本
公開日:2020.10.30
企業を立ち上げる際、重要な要素とされているのが「ミッション」「バリュー」「ビジョン」の3つです。ビジョンはカタカナ語としてよく使われるので、おおまかな意味はわかる方も多いかもしれませんが、バリューとミッションに関しては、企業において何を示しているのか、いまいちわからないという方も多いのではないでしょうか。
ここでは、企業を組み立てるときの重要ポイントである「ミッション」と「バリュー」についてまとめていきましょう。
目次
端的に述べると、ミッションとは「組織が持つ最終的な目標」を示しています。もうひとつのバリューは、「組織が共有する価値観」のことです。ビジョンとあわせて、経営学者であるピーターF.ドラッカーはこの3要素を企業における最大の重要性だと位置づけていました。
ミッションは、英語で「任務・使命」と訳される単語。つまり、企業におけるミッションとは、企業が果たすべき使命、特に最終目的が長大なものを示しています。たとえば、「世界中の情報を整理し、世界中の人がアクセスできて使えるようにする」というものが、企業のミッションです。上述したミッションを掲げているのは世界最大のIT企業といっても過言ではない「Google」ですが、こうした一見長大な目標をかかげることが、「どのような業務を行うのか」をイメージしやすいようになります。
バリューとは、英語で「価値」もしくは「価格」を示している単語です。企業においてのバリューとは、その単語のとおり価値をどこに置いているのかを示しています。つまり、バリューとは企業がどんな行動に価値を見出しているのか、ということです。バリューを明確にすることで、従業員は迷わずに会社への貢献ができるようになります。たとえば、バリューがたくさん契約を取ってくることだとするのなら、従業員は契約を増やすためにさまざまな創意工夫を凝らすようになるはずです。
従業員の意識がバリューに向かって走っていけば、自然とミッションを達成する方向に会社が動いていきます。ひいては、会社が成長していくことができるでしょう。そのため、バリューは、ミッションよりも長大ではなく、短期的でわかりやすい内容で設定します。なぜなら、バリューは従業員たちの行動規範になるからです。何をするのかを考えさせる内容ではなく、何をすればいいのかを端的に示したものがバリューになります。
ミッションとバリューは、どちらも行動の規範となるものを示しています。企業が設定したものに限定すれば、いずれも「何のために行動するのか」ということを端的に示したものです。しかし、ミッションとバリューはそれぞれ別のものが定められています。なぜなら、ミッションとバリューはそれぞれ企業における役割が違うからです。
ミッションの役割は、「社会における企業の役割」を示しています。社会において、その企業が担うべき使命と言い換えてもいいでしょう。たとえば、車をメインの商品として取り扱う企業であれば、「車を普及させ、自動車業界をリードする」や、「地球環境への貢献」などがミッションとしてあげられるでしょう。つまり、ミッションとは企業が将来的に行きたい方向への理由付けのことです。要するに、企業が何らかの目的を持つ時、「〇〇だから」という「〇〇」に使われるのがミッションなのです。
「業界におけるシェア率ナンバーワンを達成したい」という目標があったとしましょう。なぜそうした目標を持ったのか、という理由付けがミッションです。自動車業界であれば、「自動車業界をリードする」というのが先述した目標に対してのミッションだといえるでしょう。
一方のバリューは、ミッションに比べるとよりわかりやすく、社員に周知されているものです。自動車業界をリードするというミッションがあるのなら、「よりよい車を開発する」「より広い場所に営業をかける」「よりよい接客を目指す」といったものが「バリュー」になります。
ミッションが社会と企業のかかわりの中で意識すべきものであるのなら、バリューは企業内だけで完結する目標のことです。一般社員にとって、ミッションはあまり意識する機会はありませんが、バリューはより意識する必要があります。この点も、ミッションとバリューの違いでしょう。
余談ですが、ミッションとバリューの他にも「ビジョン」というものが存在します。ビジョンとは将来的にミッションを達成した後、企業がどうなっているのかということを示した単語です。
ミッションは「ビジョンに辿り着きたい理由」、ビジョン「企業が辿り着きたい目標」、バリューが「ミッションとビジョンを達成するための行動規範」となります。この3つはそれぞれ関連していますが、どれも違うものです。ミッションとバリューを設定するときは、それを意識して設定しましょう。
なぜミッションとバリューを設定する必要があるのでしょうか。簡単にいえば、それはミッションとバリューを定めることが、企業にとって大きなメリットになるからです。具体的なメリットは大きくわけて3つあります。それぞれについて解説しましょう。
一つめのメリットは、「社会に評価されやすくなる」という点です。ミッションを定めることは、「私たちはこのように社会に貢献します」と宣伝することと同じです。コマーシャルでのスローガンや広告での宣伝も簡単にすることができます。
二つめのメリットが、「企業内で協力がしやすくなる」という点です。ミッションを定めることは、企業がどのような方向を向いているのか、従業員全体に知らしめることと同義といえます。そうすることで、経営にかかわらない従業員も、「ミッションのために行動する当事者」として仕事へのモチベーションがあがります。また、バリューを定めることは企業の評価基準をはっきりとさせることです。こうすることにより、従業員の多くが共通の目標に向かって業務をこなせます。共通の目標を定めることで、従業員の中にも結束が生まれ、好ましい形で組織運営ができるようになるのです。
三つめのメリットは、一貫性のある運営ができるという点です。企業を経営するにあたって、迷いのない経営は非常に大切です。経営判断の軸がブレてしまっていると、従業員は困惑しますし、出資者にも不信感が募ります。そこでミッションという一貫した軸を持つことにより、高い安定性と一貫した戦略に則った方向へ舵を切ることが可能です。例え合理的であっても、ミッションに反した選択は企業の根幹を揺るがしてしまうと考えられるため、その判断を却下するのにも役立つでしょう。
ミッションとバリューを定める方法は、経営陣が全員参加する場所で、しっかりと話し合いながら決めるといいでしょう。重要なのは、この話し合いの場を設けるタイミングです。
ミッションは企業を経営するうえで譲れない軸ともいえるものなので、定めるのならできる限り起業したタイミングで定めたほうがいいでしょう。ミッションを定めないまま企業運営を続けていると、経営方針に一貫性がなく、信頼のおけない企業という認識を持たれてしまう可能性もあります。また、何か問題が起きてしまったとしても、その問題を「ミッションに則っているかどうか」で判断できます。以上の点から、ミッションは起業したその瞬間に定めるのが最適なタイミングです。
バリューに関しては、最初から定めていてもバリューを意識する従業員がいなければ何の意味もありません。また、の企業初期は経営陣と従業員との距離が近く、バリューを意識する必要もあまりないかもしれません。よって、バリューを定めるのなら従業員がある程度揃ってから定めるのがいいでしょう。
ミッションやバリューを定めるときは、先述したとおり経営陣が集まって話し合いをするのがベストです。しかし、話し合いにも手順があります。
まず第1に、ミッション、バリューの言葉の意義をそれぞれ共有しておきましょう。ミッション・バリューのそれぞれの意味がわかっていなければ、何を決めるのかという軸がブレてしまうからです。しっかりと言葉の定義、そしてこれらを決める理由について話し合い、メンバーの中で明確化しておきましょう。
次に、ミッションとバリューについて、アイデアを出しましょう。起業に際してミッションを定めるのなら、起業時のメンバーで「当社のミッションは何にするのか」をそれぞれから話してもらってください。アイデアに対する意見は、この時点では出す必要がありません。とにかくいろいろな意見を集めましょう。
アイデアを出したら、次は出したアイデアの中で実際にひとつの言葉にまとめてください。言葉にまとめるということは、出したアイデアを、ホームページに掲載する言葉、あるいは出資者に紹介する用の言葉に落とし込むということです。すべてのアイデアを盛り込む必要はありませんが、一つひとつのアイデアに対してなるべく検討しながら盛り込みましょう。お互いに「何が譲れないものなのか」という価値観をそれぞれすり合わせていってください。
ミッションとバリューは、企業において非常に重要な要素です。いずれも、企業の従業員や経営者が行動を起こすための行動規範といってもよいものです。どちらも早めに定めておかなければ会社の方針がずれてしまうので、出来る限り早い段階で、経営陣で集まって話しておきましょう。
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