オンボーディング Onboarding 「新卒社員」や「中途社員」が辞めない仕組みづくり
『オンボーディング』とは、新入社員をスムーズに社内に溶け込ませ、パフォーマンスを上げさせるための一連の仕組みづくりを言います。この冊子ではHR先進国であるアメリカ企業の事例も踏まえ、人材育成のための最新のメソッドを解説。
オンボーディングの具体的な取り組み方をご紹介しています。
エンゲージメント
公開日:2020.3.27
「エンゲージメントサーベイって、従業員満足度調査とどう違うの?」「似たようなものじゃないの?」そんな声が聞こえてくることがあります。両者を混同すると望んだ結果にたどり着けないどころか、社内で混乱が生じてしまう可能性もあります。この機会に両者の違いを理解しましょう。
目次
エンゲージメントサーベイと従業員満足度調査の違いについて、あなたは即座に答えられますか? エンゲージメント向上に取り組んでいる会社の経営者、幹部、担当者であれば、その違いははっきりと認識しておかなければなりません。
エンゲージメントサーベイは、理想とするエンゲージメントのあり方を実現すべく、従業員の熱意、会社への愛着度、コミュニケーションの現状などを把握し、会社と従業員の関係性を強める施策を講じるために行われます。一方、従業員満足度調査は、従業員がどれだけ会社に満足しているかを確かめる調査です。「居心地のよさに関する調査」と言ってもいいかもしれません。調査結果は、待遇、報酬、福利厚生などの改善に役立てられます。
従業員満足度が高まると、従業員が職場に不満を持っていない状態となるため一見すると「すばらしい職場が実現した」かのように思えます。しかしながら、待遇を労働条件を改善するだけでは「つらい仕事だけれど給料がいいからやる」「面白い仕事ではないけれど残業がない職場だから不満はない」といった状況が生まれるに過ぎず、従業員が目の前の仕事に没頭するような展開にはつながりません。
一方、エンゲージメントが高い会社では、会社のために貢献しようと積極的になる従業員が増え、サービスや品質の向上や業績アップが望めます。サーベイの結果を施策に反映させていくことで、仕事内容への満足感や、自己成長への期待感、評価される喜びなどが高まっていくのがその理由です。エンゲージメントと業績の相関関係は、さまざまな研究によってすでに明らかになっています。
従業員満足度は、雇う側が提供する条件や職場環境に、雇われる側がどの程度満足してるかを確かめるもので、ある種の主従関係が基盤となっています。従業員満足度を向上させることで、従業員による会社への忠誠度が高まっていく構図が成り立つのです。
対照的に、エンゲージメントの高い会社では、会社と従業員はパートナー関係になっていきます。従業員は会社のビジョンに自分のミッションやキャリアプランを重ねて仕事に没頭し、会社側も従業員のがんばりによって業績を上げることができるようになるのです。お互いに対等だからこそ「大切なパートナーのために貢献したい」という思いが強まります。
エンゲージメントが高まると、離職率が下がることも知られています。会社への帰属意識が高まり「この会社で自己実現したい」と思うようになる従業員が増えると、定着率のアップや、入社希望者の増加につながり、評判が評判を呼んで結果的に業績が向上するといった好循環につながっていくのです。
離職率低下により、採用コストや社員教育のコストを抑止できるようになることも、経営者にとっては大きなメリットでしょう。少子化による人材難を乗り切るためにもエンゲージメントの重視は不可欠だと考えられます。エンゲージメントサーベイと従業員満足度調査の違いをはっきりと認識し、間違いのない方針を打ち出してください。
エンゲージメントサーベイはアンケートが中心になるため、従業員は質問項目を通じて「会社の求める従業員像」「会社が目指している方向性」などを感じ取ることになります。また、サーベイ結果の分析後に会社が講じる施策によっても、従業員は会社のビジョンやスタンスを読み取ります。
このように、エンゲージメントの視点を会社運営に取り入れると、会社の方針や戦略が自然と従業員に浸透していきます。普段から、経営者がわかりやすい言葉でメッセージを発信していれば、その効果はさらに高まるでしょう。
働き方や価値観が多様化するなか、お互いに歩み寄れるポイントを模索していくのは簡単ではありません。それゆえ、会社側と従業員による対話や、社内コミュニケーションも重要になります。従業員が発言しやすい環境をつくるのは会社側のミッションです。
このようにコミュニケーションが重要視されていく点も、エンゲージメントと従業員満足度の大きな違いと言えるでしょう。コミュニケーションによって、従業員は一人の社会人として認められている実感を得て、責任感や集中力を高めていきます。同時に会社側が、従業員が最良のパフォーマンスを発揮できるような健康管理や、プライベートな時間の確保にも気を配ることで、信頼関係はいっそう強くなるでしょう。
従業員満足度調査では「居心地の良さ」を確かめられますが、居心地がいいだけでは熱意や信頼関係は育まれません。従業員満足度調査とエンゲージメントサーベイの違いを理解し、使い分けて、理想の会社を目指していきましょう。
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