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HR駆け込み寺

【第3回】 労働基準監督署が調査に来た!是正勧告にはどう対応したらよい?

Q2.その労働時間、適切ですか?…訴えられたら負けますよ?!

「やりがい搾取」という言葉をご存知ですか?その業界、職種で働きたいという意欲を持つ従業員に対し、経営者が「やりがい」をたてにして不当に安い賃金や劣悪な労働環境下で働かせることを指します。労働人口の低下による人材不足から採用がうまくいかず、「やりがい」を理由に在籍している社員に負荷をかけてしまっているケースも少なくからずあると思います。会社に対するエンゲージメントが高い社員ほど、真面目で責任感が強いため、「やりがい搾取」に陥りやすい傾向にあります。「社員が何も言わないから」と放置していたら、後で取り返しのつかない事態になりかねません。そのような不測の事態を防ぐために、経営者、管理職、人事担当者はどのようなことに気を付ければよいのでしょうか。人事・労務トラブル解決のプロフェッショナルである社会保険労務士の五味田匡功(ごみたまさよし)先生にアドバイスしていただきます。

ケース01:労働基準監督署が調査に来る!是正勧告にはどう対応したらよい?

受託開発を行うIT会社を経営しています。創業して数年のベンチャー企業で、就業規則をはじめ、雇用関係の契約などを整備しないまま、今まで会社を運営してきました。
開発部門が担当しているプロジェクトがうまくいっておらず、クライアントと約束した納期に間に合わせるために、メンバーはずっと深夜残業や休日出勤を続けています。職種的に他部門の人を入れるわけにもいかず、派遣会社、協力会社からもマッチするスキルの人材がいないという状態で、人員の補充をせずにやっています。
このような状況を2カ月以上続けていたら、労働基準監督署から近々調査に来る旨の連絡が入りました。どうやらプロジェクトメンバーの家族が、なかなか家に帰って来られないのを心配して労働基準監督署に相談したのがきっかけのようです。

今回質問したいのは下記3点です。

  1. 労働基準監督署の調査に対して、会社としてどのようなことに気を付ければよいでしょうか。勤務時間がわかるものとしてタイムシートやメールの送受信履歴は用意しています。それ以外に必要なものはありますでしょうか
  2. 会社として、プロジェクトがうまくいっていないのは担当者のスキル不足が原因であり、見積り以上の余分な人件費をかけているので、残業代の支払いや休日出勤の代休にしたくないと考えていますが、法律的に問題ないでしょうか
  3. 社員の誰か、もしくはその家族が、労働基準監督署に相談したかを知ることはできるのでしょうか。そのうえで対象者に何らかの処分を下すことは法的に可能でしょうか

A.原則としてすべてのビジネスは法令順守をしたうえで成り立つもの。コンプライアンスを無視したビジネスは長続きしない。会社が守るべき「安全配慮義務」の責務を果たした経営を。

まず適正な残業代を払うべきかどうかですが、これは「払うべき」です。なぜなら、法律でそのように決まっているからです。納期的に間に合わないのであれば、外注を使えばよいですし、外注費や残業代を支払ってしまうとコストアップになって赤字になる、というのであれば、そもそもの受注金額の見積りが間違っています。コストアップしないと成り立たないようなビジネスであれば、そのビジネス自体の内容が破綻しているので見直すべきです。

そもそも企業には、社員が安全で健康に働くことができるよう配慮する「安全配慮義務」があります。2008年3月以降に施行され、労働契約法の第五条で明文化されています。日本国内においてビジネスを行っていくのであれば、国のルールに従ってビジネスを行わなくてはなりません。

どういうことかを説明するために、わかりやすい例として、ある地域のラーメン屋さんのお話をします。そのラーメン屋さんは駅から離れた、車がないと行きづらい所にありました。そして近隣には駐車場がありません。そのお店にラーメンを食べに行く人は近くに路上駐車をしていました。当然、法律上許されない行為です。しかし、ラーメンを食べる間だけだからいいだろうと、お店の人も訪問客も軽く考えていました。

ところが交通規制の取り締まりが厳しくなり、このラーメン店の近隣の違法駐車も対象となりました。ラーメン一杯を食べるために、その何倍もする駐車違反の罰金を払うことになるのでは割に合いません。当然、車で来るお客はいなくなり、来店者が減ったことで売上が下がり、そのラーメン店の経営はあっという間に厳しくなってしまいました。「取り締まりが厳しくならなければ…」と店主はぼやきます。しかし、本当にそうでしょうか。

ここで言いたいのは、「違法な行為を前提とした経営は成り立たない」ということです。ラーメン店の例でいえば、そもそもお客が違法駐車をしないと食べに来られないような立地や条件で商売をする前提でいるところから間違っています。最寄駅から遠くてもわざわざ食べに来てくれる程の味を目指す、近くに駐車場を用意するなど、違法行為に頼らないやり方はあるはずです。

ましてやインターネット上に情報が行きわたってログが残る今の時代、その後のことを考えていかないといけません。飲食店だと、宣伝広告費にお金をかけて料理にまでコストが行き届かず肝心の料理が美味しくない、というケースがあります。こういう店の店主は「一見の人だけを相手にしているからリピーターは来なくてもよい」と考えています。

しかし口コミや評判がインターネット上にアップされていけば、その情報を見た一見客になりえる人たちもお店には来なくなり、やがてそのお店には誰も行かなくなります。肝心の提供するサービスそのものを見直さないと、ビジネスそのものがうまくいかなくなるのです。

会社についても同じことが言えます。採用の口コミサイトなどにひどい実態が書き込まれていれば、誰もその会社に入りたいと思わなくなるでしょう。法律を守らないほうが競争優位性が高くなるという状況は、情報の透明性が進んでいる今の世の中では起こりえないでしょう。法律を守ったうえで優位に立つことを考える必要があります。

繰り返しになりますが、今回の相談事例でいえば、残業代を支払うとコストがかかり、それが原因で赤字になるようであればビジネスモデルとして成り立っていない、という視点に立って考えるべきです。残業が多いのは社員のスキルが足りていないから、役に立っていないから残業代は払わない、という視点で考えてはいけません。「うちはベンチャーだから…」というのは法律を守らない理由にはなりません。

これらの内容を踏まえて、今回いただいた3つの質問について回答します。

  1. 労働基準監督署の調査に対して必要なもの
    タイムシートやメールの送受信履歴、あと入退室のログを取っているシステムなどありましたら、そのデータも用意しておくとよいでしょう。労働時間の実態を把握することが目的ですから、仕事をしていたことが確認できるデータは可能な限りすべて用意しておいたほうがよいです
  2. 残業代や代休について
    これらは支払い、与えるべきです。法律でそのように決まっているからです。法律に従えないようであれば、労働基準監督署が会社に指導しに来るのは当然のことです
  3. 誰が労働基準監督署に相談したか
    これは誰が相談したかわからないようになっています。まず、このような犯人探しをするより、そもそものビジネスの内容を見直したほうが健全です。視点を変えましょう

ホワイト企業認定の代表理事からの金言

情報の透明性が進んだ今の世の中では、過去の言動を含めてすべてインターネット上に情報が残り、違法性を前提にしたビジネスは顧客の信頼が得られないため成り立たない。

  • 事業構造からの見直しを
  • 法律を遵守したうえで競合に対して優位に立てるような視点を持ってビジネスを行うこと
  • 労働時間が把握できるデータを用意しておく
  • 法律で決められたルールに従って

発生した残業代を支払い、代休を与えるべき


今回の回答者
五味田 匡功(ごみた まさよし)氏

ソビア社会保険労務士事務所 所長 社会保険労務士/中小企業診断士
一般財団法人日本次世代企業普及機構(通称:ホワイト財団)代表理事

ホワイト財団が提供する「ホワイト企業認定」とは?

ホワイト企業認定

次世代に残すべき素晴らしい企業を発掘し、 「ホワイト企業」として認定します。

ホワイト財団は、“次世代に残すべき素晴らしい企業”を発見し、ホワイト企業認定によって取り組みを評価・表彰する組織です。

私たちが考える「ホワイト企業」とは、いわゆる世間で言われている「ブラック企業ではない企業」ではなく、労働法遵守は大前提とした下記のような企業が、ホワイト企業と呼ぶにふさわしいと考えています。

  1. 健全なビジネスを続けられる優れたビジネスを行う企業
  2. 従業員が安心して働くことができる優れた社内統治を行う企業
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この記事を書いた人

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HR BLOG編集部

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