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労務110番

法定の割増賃金を支払わなかった場合の「未払い割増賃金」の取り扱いについて

法定の割増賃金を支払わなかった場合、同額の付加金が発生する可能性があるといいます。もし、労働者から未払割増賃金の請求があった場合、常に同額の付加金を加えて、倍額を支払わなければならないのでしょうか?

【結論】使用者による労働基準法違反の程度や態様によって、一部減額する判例がある。

労働基準法114条では、裁判所は、労働基準法20条(解雇予告手当)、26条(休業手当)、37条(時間外・休日、深夜の割増賃金)、39条7項(年休の賃金)の規定に違反した使用者に対して、労働者の請求により、未払金のほか、これと「同一額の付加金」の支払いを命じることができるとしています。この請求は、違反のあったときから2年以内にしなければなりません。
条文からは、使用者が支払義務を負うのは、

  1. 使用者に一定の労働基準法違反となる行為があること
  2. 労働者が付加金を請求すること
  3. 裁判所が付加金の支払いを命じること

の3つの要件を満たした場合と解されます。

付加金制度は、労働基準法のうち、労働者にとって重要であり、かつ、保護を要するものについて、所定の違反に対する一種の制裁たる性質を持ち、これによって労働基準法にある所定の未払金の支払いを確保しようとするために設けられたものとされています。裁判所の命令をもってのみ付加金の支払いが使用者に義務付けられ、裁判外における未払金の倍額請求権は認められていません。
労働基準法違反行為がなされた場合、裁判所は必ず付加金の支払いを命じなければならないわけではありません。裁判所は、使用者側の違反の態様等を総合的に考慮しつつ、付加金の支払いが相当であるか否かによって判断する方法が採られています。

また、条文では、「同一額の付加金」となっていますが、裁判において、必ずしも「倍返し」を命じるわけではありません。どのような場合に、どれだけの付加金の支払いが命じられるかは、一概に言えません。裁判でも、「未払額と同額の付加金を認める例」「一部についてだけ認める例」「まったく認めない例」などさまざまなケースがあります。

付加金が未払額と同額でなかった例としては、「使用者による労働基準法違反の程度や態様、労働者が受けた不利益の性質や内容、違反に至る経緯やその後の使用者の対応等の諸事情を考慮して、支払いの要否および金額を検討するのが相当」などとして、未払割増賃金の5割相当額の付加金支払いを命じた判決(静岡地判平成29・2・17)があります。
なお、(高裁の)口頭弁論終結時までに、使用者が未払割増賃金の支払いを完了し、義務違反の状況が消滅したときには、もはや裁判所は付加金の支払いを命ずることができない、とした最高裁判決(甲野堂薬局事件、最高裁第一小法廷判決平成26・3・6)があります。


【記事提供元】安全スタッフ2017年4月1日号
http://www.rodo.co.jp/periodical/staff/

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