オンボーディング Onboarding 「新卒社員」や「中途社員」が辞めない仕組みづくり
『オンボーディング』とは、新入社員をスムーズに社内に溶け込ませ、パフォーマンスを上げさせるための一連の仕組みづくりを言います。この冊子ではHR先進国であるアメリカ企業の事例も踏まえ、人材育成のための最新のメソッドを解説。
オンボーディングの具体的な取り組み方をご紹介しています。
オンボーディング
公開日:2019.8.22
人材の早期戦力化や人材定着率向上を実現するために注目されている施策「オンボーディング」。人材不足の現代社会において、多くの会社が採り入れ始めています。貴重な人材を定着させることは、人材不足の解消だけではなく、採用・育成コスト引き下げにもつながります。
会社が人を採用するには、採用コストと育成コストがかかります。一人の社員が一人前の仕事ができるようになるまでにかかるコストは、100万円ともいわれているのです。早期に離職されてしまうと、このコストがすべて水泡に帰してしまいます。定着率を上げることは、会社にとって重要なことなのです。
オンボーディングは、従来型のオリエンテーションとは異なる新人教育です。この記事では、中途採用者、新入社員それぞれについての施策と、オンボーディングの成功のコツについてご紹介します。
中途社員に対するオンボーディングの必要性は、新卒社員より低いと思われがちですが、特に中途社員にこそオンボーディングが有効だといえるのも事実です。
中途社員には「即戦力」になってもらえるであろう期待感をかけられる傾向があるためです。経験者として採用されている人であればなおさらです。
そうした雰囲気は中途社員本人にも伝わります。そのため、業務のなかで疑問点や理解できない点が生じた際に、気軽に他の社員に尋ねづらいのです。
一方で、既存社員からすると、どこまで前職までに経験してきたかわからない中途社員に向けて助言をすることは難しいものです。すでに知っていることであれば、不快に思わせてしまうかもしれない。馬鹿にしているのかと思わせてしまうかもしれない。そうした思いから、声をかけにくい心理状態になるのです。
こうしたことが、中途社員の孤立を生んでしまいます。孤立状態を防止するためにも、オンボーディングが必要なのです。
中途社員には、まず成果を出すことを求める前に、職場環境に適応してもらうことを重視しましょう。そのうえで、必要な知識やスキルを学んでもらったり引継ぎを行ったりしましょう。そして、成果を出し周囲にも影響を与えていく、といったステップを踏むことが大切です。
一方、新卒社員にとってもオンボーディングは有効です。新卒社員に対して、特に有効に働くのは、戦力化のスピードアップと離職率の低下でしょう。
新卒社員が一人前に仕事をできるようになるまでには一定の時間が必要です。しかし、オンボーディングを意識すると、効率的に仕事を教え、育てることができます。早期戦力化は、業績の向上にもつながるでしょう。
新入社員・中途社員を問わず大切なことは、わからないことを何でも質問できる場があることです。「わからないことがあれば聞いてね」と伝えつつも、実際は「それは私に聞かれても困る」と答えてしまったことはないでしょうか。
新しく入ったばかりの人からすると、どの質問を誰に聞けばいいのかわからなくなってしまいます。人間関係も手探りであるため、質問自体を躊躇してしまうこともあるでしょう。「ここに聞けば大丈夫」という場を設けることで、それらの悩みを払拭できます。
また、会社の一員として、望ましい行動規範を設定しておくことも重要です。社員数が多ければ多いほど、社内共有はむずかしくなってきます。確実に理解できるよう、あらためて言語化しておくことが大切です。一度言語化しておくと、次に新しい人が入ってきたときの説明も容易になります。
行動規範が共有されていることで、社内外でもトラブルを防ぎ、より潤滑なコミュニケーションがとれるようになるでしょう。
オンボーディングを成功させるためのコツには、以下の4つがあげられます。
オンボーディングに限らず、何となく導入して何となく実施するのでは望ましい効果は期待できません。
社員の評価やコスト面も検討し、必要に応じて実施内容の見直しや改善が必要でしょう。
オンボーディングを成功させるために重要なことは、目先のコスト・時間の削減ばかりに意識を向けないことです。長期的な視野を持ち、一人の社員が定着し、戦力として活躍してもらえる環境をつくりましょう。
「辞められたらまた採用すればいい」と悠長に言っていられる時代ではありません。若者の数が減っていくなか、今後ますます採用は難しくなっていくでしょう。会社側が手厚くサポートすることは、新卒社員・中途社員を甘やかすことではなく、社員と会社双方のためになることなのです。
会社のコストを削減し、生産性を向上するためにも、ぜひオンボーディングを導入してみてはいかがでしょうか。
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