オンボーディング Onboarding 「新卒社員」や「中途社員」が辞めない仕組みづくり
『オンボーディング』とは、新入社員をスムーズに社内に溶け込ませ、パフォーマンスを上げさせるための一連の仕組みづくりを言います。この冊子ではHR先進国であるアメリカ企業の事例も踏まえ、人材育成のための最新のメソッドを解説。
オンボーディングの具体的な取り組み方をご紹介しています。
テレワーク
公開日:2020.12.22
新型コロナウイルスの感染予防策として、国内ではテレワークを導入する企業が急増しました。数々のメリットがある一方で、コミュニケーションの希薄化が懸念され、さらに近頃はメンタル面への悪影響も指摘されるようになってきました。テレワーク成功の鍵であるメンタルケアについてみていきましょう。
テレワークには、通勤ストレスの解消、プライベート時間の増加、交通費やオフィス賃貸料の削減、遠方在住の優秀な人材を確保できるといったメリットがあることが知られています。介護や育児などで退職を余儀なくされていた社員の引き留め策ともなり、2016年に厚生労働省が発表した働き方改革の「切り札」とも注目されています。
パーソル研究所がテレワーク経験者を対象に20年5月~6月に行ったリサーチによると、69.4%が新型コロナウイルス収束後も「テレワーク継続を希望する」という結果が出ました。入社して即テレワークとなった新卒社員が多かった会社では、むしろ、以前のような勤務形態に戻すことが困難といえるでしょう。
しかし、テレワーク導入後に心身の不調を訴える社員も増えています。正しく評価されているか分からない状況への不安や仕事とプライベートの切り替えの難しさなどで、メンタル的に消耗している社員も多いためです。イライラが募り、仕事に集中できなくなると、生産性は低下します。場合によっては、思うように成果を上げられず、さらにイライラする……という悪循環にハマってしまうこともあるでしょう。
そして、テレワーク中のイライラの原因は、以下の要因が代表的なものです。
テレワーカーの約3割が「私は孤立している」と感じているとのリサーチ結果もあります。実際に閉鎖的な空間は孤独感を助長するため、人の能力は低下してしまいます。
しかし、孤独感が不調の原因になっていると気付かない人が多いのも事実です。また、孤独感を成果が上がらない理由にすることがはばかられる空気も少なからずあるでしょう。そうした状況であるため、イライラを解消できず、徐々にストレスが積み上がっていくことは珍しい状況ではありません。
社員のコンディションを管理し、心身ともに健全に保つことは、会社の責務です。メンタル面へのダメージは、生産性の低下や社員の離職にもつながります。テレワークによってストレスが増加する場合、局面に応じた対策を講じる必要があるでしょう。
孤独感の原因は、コミュニケーションの頻度と質の低下が主な原因です。オフィスで交わされていた何気ない雑談も、実際には社員同士のつながりを確かめあえるいい機会でした。しかし、テレワークによって雑談の機会は失われました。
この状況を変えるためには、オンライン会議のスタート前・終了後の時間をしばらく解放し「雑談時間」に充てる対策が有効です。“決められた時間にログインして即スタート”というオンライン会議は、議題以外の内容を話すことがためらわれ、窮屈な印象になりがちです。雑談時間を設定した場合には、閉塞感を解消できるでしょう。
オンライン会議中に、常に画面に自分の顔が映っていると「発言していないときも視線を感じて緊張する」という理由から、発言者以外がカメラとマイクをオフにするというやり方も行われています。しかしながら、あえてカメラとマイクを常時オンにして、ざっくばらんなやり取りを促すことで、孤独感の解消につなげる方法もあります。社員の自発的な行動に期待するのではなく、オンライン会議のホストや議長がムード作りを行い、対応していくといいでしょう。
また、オンライン飲み会や雑談を目的にしたオンラインミーティングも有効です。無駄に思える会話が気持ちのリフレッシュになり、そこから新たなアイデアが生まれるケースもあります。社員のメンタルに好影響が出るような企画を、経営陣が奨励していくことが大切です。
テレワーク中のメンタルケアの方法についてさらにみていきましょう。
自宅でテレワークをする場合、プライベート空間で仕事をすることになり、気持ちが切り替えられずにストレスが溜まってしまう場合があります。仕事を終えた後もリラックスできず、ぐっすり眠れないという悩みを抱える人も少なくありません。
こういったケースの場合、シンプルな対策として、始業時間、就業時間を厳密に守ることが有効です。「なんとなくはじめて、なんとなく終わる」と、気持ちの切り替えが難しいといえます。そのため、毎日決まった時間を守って働くことをコントロールすることで、メリハリにつながります。
また、1時間おきに休憩を取る、始業時と終業時に体操や散歩をして、体から脳へ切り替えのサインを送るのも有効です。例えば、仕事をするときは気持ちの切り替えとして、部屋着から着替えるというのもいいアイデアだといえるでしょう。
ダラダラと仕事をし続けると生産性も低下するため、会社側や上司から、リフレッシュ方法を積極的に提案することが大切です。
正しく評価されているか不安、という社員が出てくるのを防ぐためには、現行制度の周知徹底や評価制度の見直しが必要です。テレワークでは、日々の業績や成果が主な評価対象となることを明らかにし、成長過程や業務に取り組む姿勢については定期的な面談でチェックしていくことなどを明示しましょう。そうすることが、社員のモチベーション維持を図ることが可能となります。
仕事の割り振りや評価が公平に行われているかどうかを誰でも確認できるような、透明性の高い仕組み作りも求められるでしょう。フィードバック頻度の見直しも、社員のストレスに好影響を及ぼします。
使用する端末やWi-Fi環境に不備がある場合は、会社側が率先してフォローを行うことが大切です。回線の不調でオンライン会議の映像や音声が途切れれば、単純にストレスが溜まります。また、使っているパソコンや回線の不備が原因で機密情報が漏洩するようなリスクを抱えないためにも、どんな環境でテレワークを行っているかをIT担当部門がチェックし、不備があればサポートする体制を整えましょう。
対策を講じても、心身消耗が続くときは専門家への相談を促すことが大切です。症状が悪化してからでは、回復にかかる時間も長くなってしまいます。そのため、社員の健康を守るためにも会社側が気配りをすることが重要です。
「ストレスもたまるし、出社して仕事をする社員も増えて来たし……」と、なし崩し的にテレワークを辞めてしまうのは、長い目で見て好ましくない状況です。生産性、コストカット、優秀な人材の確保、社員の生活向上などの得難いメリットを享受するためにも、メンタルケアを充実させ、テレワークを活用していきましょう。
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