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フレックスタイム制を使用している社員に、どうしても早出や残業をお願いしたいとき

当社では、研究部門を対象にフレックスタイム制を適用しています。フレックスタイム制は「早出出勤や終業後の残業を命じることは基本的にできない」と認識していますが、労使協定で特定の日について適用を解除したいという提案が社内からありました。この場合は、どのように考えればいいのでしょうか?

【結論】コアタイムの変更で対応が可能。しかし、本人の意思に委ねる必要がある

フレックスタイム制では、清算期間を通算して1週間当たりの労働時間が40時間を超えた分のみを時間外労働として扱います(労働基準法32条の3)。
その代わり、「始業および終業の時刻を労働者の決定に委ねる」必要があります。
会議等を行う場合でも、使用者が一方的に時間を指示することはできません。従業員の同意を取り付けるべきとされています。同意した従業員は、会議の開催時間を中に挟む形で当日の始業・終業時刻を「自発的に」決定することになります。
フレックスタイム制に関して労使協定で締結すべき事項は、次の6項目です。

  1. 対象労働者の範囲
  2. 清算期間(1ヵ月以内)
  3. 清算期間内の総労働時間
  4. (年休取得時等の)標準となる1日の労働時間
  5. 必ず勤務すべき義務がある「コアタイム」の時間帯(設けないことも可能)
  6. 選択により労働することができる「フレキシブルタイム」の時間帯

始業・終業時刻に関しては就業規則において定めるべき事項です(労働基準法89条1項1号)が、5.6.を定めるときは、それも含めて就業規則に規定する必要があります。
1.の「対象労働者」は労使の話し合いによって定められます。その範囲は各事業場で任意に定められることから、事業場全体ではなく、個人ごと、課ごと、グループごとに決めることもできます。

まとめ

始業・終業の時刻を労働者に委ねる必要性があることから、使用者が、フレックスタイム制において早出等を命じることは、制度の趣旨と矛盾するといえます。
労使協定で特定の日について適用を解除するのも、考え方としては同じです。
この場合、労働者の同意を得たうえで、労働者の自発的意思により早く出勤してもらうことになります。その場合の労働時間の算定は、「通常のフレックスタイム制と同様に、清算期間を通じて計算することになるだろう」とした旧労働省労働基準局監督課の解釈があります。
コアタイムを設定しているのであれば、コアタイムの繰り上げ、繰り下げという方法もあり、その旨を労使協定で定めて運用して行うことは適法と考えられています。
ご不明な点は専門家へ相談してください。


【記事提供元】安全スタッフ2016年11月15日号
http://www.rodo.co.jp/periodical/staff/