サイトアイコン HR BLOG | 経営者と役員とともに社会を『HAPPY』にする

欠勤中の従業員に診断書の提出を拒否されたら?

病気で欠勤している従業員に「医師の診断書を提出してください」と求めたところ、提出を拒否されました。強制することはできないのでしょうか?

提出を義務化するなら就業規則に定めましょう

会社が診断書の提出を求めるのは、従業員の健康状態を確認し、復職が可能かどうかを判断することが主な目的です。当然、会社としては診断書を提出してもらいたいと考えるでしょう。

提出を強制できるかどうかについては、就業規則に定めているか否かが判断のポイントとなります。就業規則に規定がない場合、提出は任意となり、従業員の意思に委ねられます。つまり、就業規則に定めがなければ、提出を強制することはできないのです。
そのため、規定がない場合は、診断書の必要性を従業員に納得してもらった上で提出を求めましょう。

一方、就業規則に定めがあれば、業務命令として診断書の提出を指示することが可能です。

就業規則に規定する内容とは?

規程を定める際のポイントは、以下のとおりです。

(1)診断書の提出を求めるケースを具体的に定義する(欠勤が4日以上続いた場合など)
(2)使用目的
(3)会社指定医の診断書を求める場合は、その旨を規定
(4)提出に応じない場合の懲戒事由を定める

このとき、『正当な理由がない場合は、診断書の提出を拒むことはできない』などと規定しておくとよいでしょう。また、診断書は個人情報であるため、使用目的や取扱いについても定めておくことが重要です。
厚生労働省は『健康管理上の個人情報の取扱い』について、就業規則のモデル規範を以下のように示しています。

『会社への提出書類および身上その他の個人情報(家族状況も含む)ならびに健康診断書、その他の健康情報は、会社の労務管理、賃金管理、健康管理、出向、移籍等のための人事管理の目的のために利用する』。
また、出社や復職を判断する際の基準となる“治癒”の要件も明確にしておくとよいでしょう



提出を拒否した従業員の解雇を認めた判例も

長期休職していた従業員が診断書の提出を拒否したことにより、解雇が認められた裁判例もあります。

A社は自律神経失調症で休職していたBさんに対し、18カ月の病気休職期間が満了したことから、復職の可否を判断するために診断書の提出を求めました。しかし、Bさんがこれを拒否したことから、就業規則所定の『精神又は身体に障害があるとか、又は虚弱、老衰、疫病のために勤務に耐えられないと認められた者』に該当するとして、裁判でBさんの解雇が有効だと認められました( 大建工業事件H15.4.16 大阪地裁)。

診断書の提出に関しては、就業規則に定めているかどうかによって義務付けの判断が異なります。従業員とのトラブルに発展する前に、就業規則にあらかじめ規程を作成しておきましょう。