当社の従業員は500人超で、2016年の社会保険適用拡大の対象となりました。その際、契約時の条件から週20時間以上の要件を満たさないと判断し、社会保険加入の手続きをしなかったパートがいます。しかし、近年の人手不足により予定外の出勤が増え、平均すると20時間を超えている可能性があります。早急に社保の手続きをするべきでしょうか?
【結論】
パートでも賃金や労働時間によって社会保険の加入対象になる場合とならない場合がありますが、実際の労働時間が週20時間を超えている場合、加入手続きが必要な可能性があります。
そのパートの方の直近2カ月の勤務状況を、あらためてチェックしてみましょう。
所定の条件によりパートも被保険者に
パートやアルバイトなどの短時間労働者が社会保険の被保険者となる要件は、健康保険法(以下、健保法)3条1項9号に記載されています。原則は『1カ月の所定労働日数が同一の事業所に使用される通常労働者の4分の3以上』、いわゆる『4分の3要件』を満たすことですが、そうでない場合も『1週間の所定労働時間が20時間以上』『1年以上継続して使用見込み』『報酬が月額8万8,000円以上』などの条件にあてはめれば、被保険者となります。
ただし、当面、特定適用事業所(規模500人超の企業の事業所)以外については『4分の3要件』のみに基づいて、加入の必要の有無を判断します(健保法平24・附則46条)。
所定労働時間と実態を比較してみる
『4 分の3 要件』の具体的な運用については、2016年に『短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大に係る事務の取扱いについて』という通知が出されています。これによれば、週20時間という基準は、『所定労働時間』に関するもので、1週間の所定労働時間とは、『就業規則、雇用契約書等により、その者が通常の週に勤務すべきこととされている時間』をいいます(平28・5・13保保発0513第1号)。祝日などにより休みが増えた日は考慮に入れません。また、時間外労働なども、対象には含まれません。
ただし、今回ご相談があったケースのように、所定労働時間と労働の実態が乖離しているときに関しては、先述の特別な取り扱いルールが定められています。
短期労働者に対する休憩時間の付与については下記の記事がおすすめ。
安心して働いてもらうため制度基盤の見直しを
同通知にはまた、『事業主に対する事情の聴取やタイムカード等の書類の確認を行った結果、残業などを除いた基本となる実際の労働時間が、直近2カ月において週20時間以上である場合で、今後も同様の状態が続くと見込まれるとき』は、所定労働時間が週20時間以上であるとみなし、事実上『4分の3要件』を満たしているものとして取り扱う旨が記されています(保保発0513第2号)。
パートの方の直近2カ月の勤務状況を確認してみて、労働時間が平均して週20時間を超えていれば、やはり社会保険加入の手続きが必要ということになります。
事故や病気など万が一のときに給付が受けられる社会保険は、働き手の安心にもつながります。安心して働いてもらう基盤を整え、優秀な人材確保につなげましょう。