働き方改革が叫ばれるなか、新型コロナウイルスの感染予防対策としてテレワークが一気に浸透しました。しかしながらテレワーク経験者からはオンライン会議に関するストレスの話題が聞こえてきています。何が問題なのか、また、どう解消すればいいのかを考えてみましょう。
オンライン会議で感じるストレス、疲労は気のせいではなかった
コミュニケーション不足が懸念されるテレワークにおいて、顔を合わせながらやり取りができるオンライン会議システムは、重要度の高いツールとして活用されています。しかしながら「会話のリズムがつかみにくい」「思うように集中できない」といった声があるのも事実。従来の会議室での会議では感じなかった疲れやストレスを感じてしまうのは、どうやら勘違いではなさそうです。
オンライン会議でストレスを感じるのはどんな時でしょうか。次のような理由が、その代表例だと言えるでしょう。
・実際に対面しているときのように会話できない
・インターネット環境の不備による通信トラブル
・自宅の様子を見られたくない
・家族や会議中の訪問者への対応が難しい
・気持ちが切り替えにくい
・画面に自分の顔が映っていると常に注目されている感じがする
・専用の会議スペースを確保できない
・使用するツールの操作方法が分かりにくい
人は「変化そのもの」にストレスを感じる生き物です。テレワークへの変化や、オンライン会議への対応が、そもそもストレスフルな事象であるとも言えます。
オンライン会議では、自分から積極的に発言しないと、ただ人の話を聞いているだけになってしまうのも気がかりな部分です。気配りできる議長が働きかけをしない限り、発言しない参加者の参加意識、当事者意識が薄れ、時間を無駄にしたような感覚に陥ってしまいます。そうしたネガティブな感情もストレスにつながっていくのです。
また、議長を任される側からは「誰が発言したがっているかを感じ取れない」「順番に意見を求めるだけの展開になりがちで、議論へと発展しにくい」「2人以上の発言が重なってしまった場合の対応に困る」といった声が出ています。
ストレスが生じる理由を知る、それだけで気持ちは和らぐ
前述したストレスの理由となる要素は、簡単には解決できないものが多く、慣れていくしかないとも考えられます。しかし「なぜストレスを感じるのか」を深く探り、やり過ごし方を知っておくだけでも気分は和らいでいきます。
実際に対面しているときのように会話できないのはなぜでしょうか。人間の感情や態度は、発言内容の他に、表情、声のトーン、動き、姿勢、距離感などによっても相手に伝わっています。パソコン画面の中では、そうした情報の多くが削ぎ落とされてしまうため、相手の感情を読み取るのが困難。アイコンタクトで発言のタイミングを譲り合うようなことも難しいため、ストレスが募っていきやすいようです。
自宅からオンライン会議に参加する際には、散らかっている部屋を見られたくない、家族から声を掛けられるかもしれない、訪問者や宅配業者が来ても席を離れられない、といった問題も生じます。気にしていないつもりでも、無意識に頭のどこかで違うセンサーが働いている状態では、会議に集中できなくても無理はありません。
オフィスでの会議は、自分のデスクから会議室に移動し、時には事前に軽い打ち合わせを挟んだりすることで、気持ちを切り替えるのが容易でした。しかしながら、自宅からオンライン会議に参加する場合は、気持ちの切り替えが難しく、結果的に思考が鈍化する事態に陥りがちです。また、斬新なアイデアが生まれにくいという声も上がっています。
さらに、画面に自分の顔が映ることにストレスを感じる人も多いようです。会議室での会議では、発言中こそ注目を浴びますが、それ以外の時間に誰かの視線を意識することはありませんでした。しかしオンライン会議中は、常に自分の顔が画面に表示されているため、参加者から監視されているような感覚になる……というのが、ストレスの主な理由だと考えられます。また、自分自身のネガティブな表情は、他人の同じ表情よりもストレスを感じるという研究結果もあるため、そもそも自分が考え込んでいるような顔が見えてしまう状況は、会議に不向きだと言えそうです。
他にも、画面がフリーズしてしまう、マイクの性能が悪く発言が聞き取れないといった問題も、オンライン会議でストレスを感じる原因になっていると考えられます。パソコンやツールの不具合、回線の状況、音声の伝わり具合などは、参加者自身が自力で気づけないケースもあります。「やけに自分の発言がスルーされるな」と感じたら、インフラの不具合も疑ってみましょう。
ストレスを解消するため、小さな工夫を積み重ねる!
オンライン会議が普及していくなかで、ストレスを解消するための積極的な工夫を凝らす企業や参加者も増えてきています。
シンプルなところでは、使用するパソコンやwi-fi環境の整備があげられるでしょう。インフラを整えると、会話のタイムラグが生じにくくなり、音声もクリアになります。性能のいいマイクやヘッドフォンを使うことも、会議の効率に好影響をもたらしてくれます。
あえて映像は表示せず音声のみで会議を行って通信データを軽くし、トラブルを緩和することも可能です。オンライン会議における疲労やストレスに関する研究で知られる米国・ボンド大学のリビー・サンダー准教授も、この方法を推奨しています。
ある研究によると「室内を少し歩くだけでも想像性が60%高まる」という結果が出ているそうです。カメラをオフにして、歩きながら会議に参加できれば、いつもよりいいアイデアが出るかもしれません。しかしながら、顔を合わせて話し合うべき局面も必ずあります。その使い分けは一般的にリーダーや議長に任されるため、必要に応じてカメラのオン・オフを判断していきましょう。
デスクから会議室への移動が、気持ちを切り替えるスイッチになっていたタイプの人は、通常業務と会議用のスペースを自宅内で切り替えるのも効果的です。会議前の緊張感を和らげるために、参加者同士が事前に連絡を取り合い、打ち合わせや雑談をしてから会議に臨むのも有効です。会議中はチャット機能を併用し、いつでも発言できるようなルールを設けておけば、誰かが発言している最中でも、自分の意見を参加者に周知できます。チャットに投じられた意見を、折を見て議長が拾い上げるような会議方法も想定できるでしょう。
曖昧な表現は避ける、誤解が生じそうなときは入念に確認する、そういった基本的なルールをその都度周知することも、ストレスを減らす対策となります。よりよいオンライン会議が行えるようにルールを整備し、環境を整えるための支援を行っていけるよう、経営陣やリーダーが気配りをしていってください。