人事方面の知識として、よくHRという言葉があげられます。HRとはHuman Resourcesの略で、直訳すると人的資源などの意味。一般的に人事部などを指します。HRにおいて社内でシステムを考案し、運用することが最大の目的であるため人事のシステム化に重要な影響を与えます。
そこで、今記事ではHRシステムに注目。併せて基礎的なHRの歴史と元となったHRポリシーについてもまとめますので、社内システムの構築にぜひお役立てください。
目次
HRシステムの成り立ち
HRシステムとは人事面における従業員の採用や育成を考えるシステムのことで、Human Resourcesの頭文字を取ったものです。一般的にHRは「人材・人事部」という意味合いで使われます。HRシステムは人事部の仕事である人材の「採用・評価・配置・成長」を効率的に行うシステムのことであり、一般的に人事部の従業員と情報を用いて構成されるシステムの総称です。特徴としてはHRポリシーというものに基づいて構成がおこなわれます。HRポリシーの全容は下記のとおりです。
- HRポリシーはビジョンやミッションの達成を前提とし、組織や人に対する企業側の考え方や取り組み、方向性を示したもの。(一般的に大方針と呼ばれるものとなる)
- HRポリシーには人事制度のすべてが含まれ、「採用・評価・報酬・配置」といった人事部で決められる項目について、判断基準となる。
- HRポリシーはシステムの正否を考えるうえでの基準ともなり、そのシステムに整合性が取れている前提で運用される必要がある。
このようにHRポリシーは企業のビジョンに合わせてつくられる、人事システムの根幹を評価する基準となる考え方です。提唱者としては多数説が存在していますが、経営コンサルタントのジェイムズ・チャンピーが発表した「リエンジニアリング革命」の中で提唱したものが元とであると言われています。
このHRポリシーを元とした人事システムのことをHRシステムと呼び、多くの企業で構築が必要とされています。人事システムの作成においては人事部の構成と社内の情報システムの構築が必要とされ、専門的な知識も必要とされています。次は人事システムであるHRシステムの特徴について解説していきます。
HRシステムと人事部の役割
HRシステムにおいて、人事部は特殊な立ち位置となります。その理由としては人事部は直接利益を生み出すことがなく、既存のリソースを活かして利益を最大化することが目的となるからです。そのため、多くの企業では人事部自体に割くリソースは少なく設定され、負担が大きくなりがちです。その少ないリソースを補うために考案されたのがHRシステムです。HRシステムの特徴としては以下のようなものがあります。
- 経営方針(大方針)に合わせた人材の配置がおこなわれ、その配置に情報的な根拠が示せること。
- 情報を活かした評価基準を作成し、その評価に不当性がないこと。
- 人事部そのものを評価できること。
- HRポリシーに反するシステムについては含まれていないこと。
重要なポイントとしてHRシステムは企業側の利益を高めるため、最適な人材配置を見つけ出せる必要があります。最適な人材配置は従業員の資質やスキル、人間関係など多くの要素から導き出す必要があります。そのため、多くの情報を扱えるシステムの構築が必要。当然費用も大きくかかるため、内容によっては経営の負担となります。そこを補うのが人事部とされており、人事部の役割としてはHRシステムの構築と運用が主となります。
企業によってはシステム構築を外部に依頼することもありますが、ポイントを抑えることで作成は可能です。そこでHRシステムの核となる4つの要素について、構築基準を見ていきます。
人材配置
人材配置は個々の資質やスキルによって決定します。資質やスキルは従業員の実績や資格によって評価されるため、経歴の管理が重要となります。人材配置をシステムに組み込むためには定期的な実績の評価を付ける必要があり、総合的な判断が必要となります。近年ではAIによる人材配置も行われていますが、一般企業においてAIの導入・運用は費用対効果がよくありません。
そのため、人材配置については情報を集める程度のシステムにとどめ、最終的な判断は人事部長に一任するシステムが推奨されます。この場合、人事部長の決定と人材配置について一定の客観的合理性を示せることが重要となります。
人材評価
人材評価は、正しい人材配置を前提としたうえで、その人材を評価するものです。人材配置が不適切であった場合を除き、評価には一定の基準が必要となります。HRシステムにおいては各従業員ごとに目標を設定し、その目標の妥当性と達成の有無によって決定するシステムが一般的。結果によって大きく評価が変動するため、日本企業での導入が少ないのも一つの課題とされています。
前述したAIでの評価も可能ですが、その他、条件などによっては不当評価となってしまうことも。一般企業においては目標達成度の判別に用いて、それ以外の要素は人事部で調整して総合的な判断を行う方式がおすすめです。この場合は明確に評価基準を示すことで、従業員側の反発を防ぐことが可能です。
報酬
報酬は評価を元に設定され、会社の業績など外部情報を追加して決定されます。人材評価が正当に行われている前提のため、上記2つの要素が正しい前提となります。報酬については過去のデータと実績から、HRシステムで一元的に決定することが効果的です。理由としては人材配置や人材評価が正当な場合、報酬は見合ったものが提示されるからです。報酬については会社業績の影響を受けるため毎年一元的とはいきませんが、一定の基準に則ることで従業員側のモチベーション向上につながります。HRシステムにおいては唯一システム内で判断を下せる内容であるため、人事部側の負担削減に繋がる要素です。
人事部の評価
HRシステムにおいて見落としがちなのが、人事部の評価です。企業のなかには人事部の評価を役職者や社長が行うケースもあります。
しかし、HRシステムを導入する場合、人事部自体の評価もシステムに組み込むべきです。
人事部は特性上利益を生み出さないため、上記3要素の精度やその他項目で評価基準を決定する必要があります。評価基準は企業ごとに異なりますが、人材配置や評価の妥当性を示せることが重要となるという共通点があります。人事部の評価は難しい部分もあるため、人事関連の外部機関に依頼する方法もあります。妥当な根拠を提示できない場合、大きく評価が下がる可能性があることを事前に伝えておくことで、正確な仕事にも期待が持てます。
HRシステムの構築と人事部での運用
上記であげた4つの要素を意識したHRシステムを構築することで、人事部での運用が可能となります。実際にHRシステムを構築するときは、人材のデータベースの作成が必要となります。人材のデータベースには経歴やスキルを始め、直近の評価や目的といった情報も必要です。
データベースの構築は、人事部での通年作業とすることがおすすめです。これらデータベースの情報を元に、定期的に人材配置と人材評価を行うことが人事部の仕事となります。実際には4半期や決算直前、年度末に作業が集中するため、事前のデータベース作成は重要となります。データベースを元に評価を行う場合は、必ず妥当性の提示が必要です。場合によっては人事部の人間によるヒアリングが必要なケースもあるため、事前に年次計画の策定をしておくケースもあります。
このようにHRシステムはデータベースを中心とした、総合的な運用を含めて考案する必要があります。システムを構築する場合は、人事部の人材も意識して行いましょう。これら役割に加えて新卒採用や既卒採用の決定、不要人材の選定といった作業も必要となります。基準については社内のスキルの偏りや事業ごとに変わるため、会社の大方針を理解することが重要です。HRシステムの構築においては人材の特性をデータベース化することが大切であり、そのデータベースを運用する人事部も同じぐらい重要。システムを構築するときは運用面を含めて考えなくてはなりません。
まとめ HRシステムと人事部は相互に活かしあう
今記事ではHRシステムの構成について解説しました。HRシステムは人事に影響を与えるシステムであり、多くの企業で導入が進んでいます。費用対効果の関係で完璧なものを組むことができないケースもありますが、原則と要素を理解することで一部構築することも可能です。その場合は運用する人事部についても意識して、人事部の評価に偏りが生まれないようにすることがポイントです。
今記事を参考にHRシステムを構築する場合、必ず人事部の決定は根拠に基づくことをおすすめします。唯一データベースを参照にできない部分であるため、根拠の重要性が高まるからです。今記事がHRシステム構築の第一歩となることを期待します。