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エンゲージメントを高めるために『人材開発部門』を育てましょう

業種、業界問わず、すべての企業にとって将来の会社を担う従業員の育成は急務。人材を従来の「採る」から「活かす」へ転換させるために今、『人材開発』には何が求められるのでしょうか。今回は、アメリカ会計事務所の人事担当者が集う『Talent Circle Winter Meeting2020』の後に行われた、ブーマー・コンサルティング CEO サンドラ・ウィリー氏と株式会社アックスコンサルティング 代表 広瀬元義氏の対談模様をお伝えします。

※サンドラ氏、広瀬氏の対談動画はこちら

サンドラ氏

タレントサークルお疲れさまでした。広瀬さんに来ていただいてみんな喜んでいました。


広瀬氏

ありがとうございます。みなさんとのタレントサークルはとても楽しい時間でした。少し質問させてください。“エンゲージメント”がテーマになったのはいつごろからですか?


サンドラ氏

何年も前からあったんだけど、ここ5年くらいでとりあげられるようになってきました。


広瀬氏

どのような背景があったのですか?


サンドラ氏

なぜ、エンゲージメントが大切になってきたのかという大きな理由は、多くの人が離職して、別の職についてしまうという問題があったことです。才能・人材の取り合いが起きています。いい才能、いい人材をひきつけないといけません。基本的に、人材が不足してきているという現状があります。世代間の話はあまりしたくないけれど、ベビーブーマー世代は多くの仕事をしたいという考え方が一般的でした。でも、ミレニアム世代は違います。だからその世代に合わせていかないといけないのです。


広瀬氏

“エンゲージメント”を短い言葉で、説明するとなんですか?


サンドラ氏

そうですね。コネクション(つながり)になります。仕事と個人とのつながり。その人たちが会社にいてほしいと感じているということです。


広瀬氏

よくわかります。エンゲージメントがエンパワーメントにつながるという理解を私はしていますけど。


サンドラ氏

私も同じように、エンゲージメントはエンパワーメントにつながると思います。もっと人に権利や責任を与えていくと、その人たちがリードする存在になれる。エンゲージメントによって必要とされていると感じると自分たちが正しいという自信が持てるからです。


広瀬氏

では、エンゲージメントを高めるためにすぐに始められることはなんですか?


サンドラ氏

そうですね。5つあります。
1つ目は、決定に関わってもらうこと。3~5年経ってから難しい仕事をさせるというのが普通でした。でも入社当初から、委員会やプロジェクトに参加して、重要な決定に関わってもうらうことが大切です。2つ目は、自分が委員会やプロジェクトに関わっているということがわかるとエンゲージメントを感じることができます。3つ目は、学ぶ機会があるということを知りたいと思っています。入社当初のレベルにとどまっていたいという人はあまりいないはずです。具体的にどのように学んでいけるのか明確にしてあげることが大切です。4つ目は、実際にはお客さんに会ったりとか、行ってみたりとかしたいと思っているはずですが、その機会を与えてあげるようにしてあげることが大切です。5つ目は、良いものを提供するということです。例えば、パソコンなどのスペックが低かったり古かったりすると従業員のエンゲージメントが下がります。大学や家のパソコンなどのテクノロジーより、会社の技術が遅れていたらテンションが下がるでしょう。

広瀬氏

日本でもやっと、採用した人がすぐに辞めてしまうなどの問題に気づいてきましたが、解決する際、どこから手をつけたらいいの?という質問をうけることが多いです。サンドラさんだったらどのように答えますか?


サンドラ氏

私たちも同じ状況にあります。(大卒者の)人は入社から6~8週間でこの会社にいたいかどうかを決めます。実際、最初の60日で心を決めることが多いです。最初に、あまりにも多くの知識を覚えさせるということは決してやってはいけません。コアバリューというものを説明しつつ、どのようなトレーニングをうけていくかいうことを明確に示す必要があります。あなたという人を知りたいということを示し、興味があるということを示すことが大切です。

個人の環境、たとえば兄弟は何人かとか、犬がいるとか、そういう個人的な情報から始めて、個人のことを知っていく必要があります。人が知りたいのは仕事で何をするかということだけでなく、どのように、どうしてやっていくのかということも知りたいと思っているということを理解しないといけません。最終的にはオーナー(社長)を知りたいと思うようになります。オーナーのキャリアがどのようなものかを知りたいと思うようになるのです。


広瀬氏

流れがよくわかります。面白いですね。まだ付け加えることはありますか?


サンドラ氏

たわいもないこと(floppy stuff)です。休みを多く与えるとか、何かをプレゼントするとか、そういうことです。要は、企業にとって、自分が大切だと思ってもらうがポイントです。感謝されているということをわかってもらうことです。従業員に聞いて、質問することです。その従業員が何を大切に考えているかを理解しようとすることです。従業員には、何を大切に思っているのか聞きます。あと、本当にあなたが来てくれてよかったと感謝することです。コミュニケーションを密にとることです。もし、あなたが本当に会社にとって大切だと思っている人に、最後にいつ感謝したか、「本当にいてくれて助かっている」という言葉をかけたのがいつだったか、思い出せないというのであればもうだめでしょう。

すごく大切に思っていることは、フレキシビリティ(柔軟性)とリモートワークを提供してあげることです。従業員は時間を自分たちでコントロールをしたいと思っているので、仕事の内外で仕事がいつでもできるようにすることです。仕事以外の個人の時間も大切にしているから、この2つを提供してあげるのは大事だと思います。


広瀬氏

今までは会社が従業員を雇ってあげているという考え方でした。でも、今は会社と従業員はWin-Winの関係であるべきであると思います。それについてどう思いますか。


サンドラ氏

本当にその通りだと思います。昔はヒエラルキーがあって、トップが考えていることに従うというのが基本的な考え方でした。ついこの前まではフラットになったと言われていました。最近ではcollaborative(協働、協力、協調)という考え方になっています。自分の考えや声が聞いてもらえる環境をつくることが重要です。誰かが最後に決定しないといけないけれど、そのプロセスの中で自分の意見がどのように取り入れられているかが大切です。リーダーがどのように関わるかが重要となってきます。私は、入社したときから、なにか気づいたことがあれば言ってもらうように言っています。会社のトップがそのような環境をつくっていくことが大切です。自分の声が聞いてもらえていると感じてもらえるようにすることです。


広瀬氏

日本では会社から離れるのではなく、上司から離れると言うことを聞きました。これについては、どう思いますか?


サンドラ氏

その通りだと思います。人がやめるときは、会社が自分を気に入ってくれていると感じていればやめる理由にはなりません。でもその上司がそのような環境を提供していなくて、コミュニケーションをしっかりとっていなくて、存在価値を感じられないような方法をとっていたらダメです。マネージャーを改善しないといけません。


広瀬氏

日本では、人材開発という考えがあまりなくて、「人の研修を単に組む」というのが一般的となっています。「人材教育」と「人材開発」、その違いはどうなっているのですか。


サンドラ氏

いい質問です。HRには、3つの要素があります。
1.コンプライアンス(ペイロール、福利厚生、基本的な人事のこと)
2.人材開発 (Development)
3.L&D(Learning and Develoment:学習と成長)

この3つにわけることができると思っています。
1と3に関して、基本的な人事のことやトレーニングプログラムや教育については、日本のみなさんの文化でもできていると思います。人材開発が不足していると思います。

人材開発は会社が大切に思っていることを教育していくことです。会社の文化をわかってもらうこと、個人と会社のビジョンをつなげることです。自分の会社にあった人を採用し、作っていくことが人材開発の役割です。文化を変えていけば、離職が減って、モチベーションがあがり、ビジネスが上手くいくようになります。


広瀬氏

ありがとうございました。フェニックスで過ごした時間は、とても有意義でした。また、早く再会できることを祈ってます。


サンドラ氏

本当に来て、タレントサークルに参加していただきありがとうございました。私のお話が、日本の皆さまのお役に立てば幸いです。

サンドラ・ウィリー(Sandra Wiley)
ブーマー・コンサルティング
CEOリーダーシップ開発、教育分野について高く評価され、チームビルディング(構築・形成)のアドバイスを行う。米国CPA業界でもっとも影響力のある人物TOP100、最もパワフルな女性TOP25、エッジイノベーションアワード受賞など輝かしい功績を持つ。人材開発などの著書も多数。

広瀬 元義氏
株式会社アックスコンサルティング
代表取締役

士業コンサルティングを中心に事業を展開し、1万件以上の会計事務所をサポート。2019年3月、企業における「人事」の課題解決を後押しするクラウドシステムを発売開始。会計事務所および経営者向けセミナーの講演は年間50回以上。これまで出版した著書は45冊以上、累計発行部数は48万部を超える。