当社では、営業マンに仕事用のスマートフォンを配布しています。ところが、勤務時間中に支給したスマートフォンで私用メールやLINEを頻繁にしている営業マンがいます。メールやLINEばかりしているため、連絡がとりにくく、注意しても改まりません。この営業マンを罰することはできますか?
勤務時間中の私用メールは職務専念違反となる
基本的に、従業員が仕事中に私用メールやLINEを行うことは、懲戒処分の対象となります。なぜなら、従業員には勤務時間中は仕事に集中しなければならないという『職務専念義務』が課されているからです。そのため、私用でメールやLINEをすることは『職務専念義務』に反する行為になります。
ただし、そもそも従業員側が『私用でメールやLINEを行ってはいけない』という認識を持っていないことも考えられます。そのため、一度、会社から従業員に対して、『職務専念義務』違反であることを説明するようにし、今後は私用メールやLINEをしないように注意しましょう。
また、今後、会社側と従業員側との認識の違いが起こることを防ぐためにも、就業規則の中に『私用メールやLINEを禁止する』という明確な規定を記載しておいた方がいいでしょう。あるいは入社するときに従業員から『職務に専念する』という旨の誓約書をもらっておくのもよいと思います。
まずは、これらのことを行ったうえで、懲戒処分を科すためには、就業規則で懲戒理由をあらかじめ定めておく必要があります。もし何の規定もない場合は、たとえ勤務時間中に従業員が私用メールやLINEをしても罰することができなくなる可能性もありますので、気をつけましょう。
懲戒処分にするにはメールの頻度や内容も重要
しかし、私用メールやLINEをしたからといって、すべてのケースを懲戒処分の対象とするのは、厳しすぎます。長年に渡って働いていると、ときには家族への緊急連絡など、生活上やむを得ないケースも出てくると思います。何もかも禁止というのではなく、処分を行うときは、従業員が行った私用メールやLINEの頻度や内容をチェックしてから判断することが必要です。
たとえば、ある会社が勤務中に1日2通程度の私用メールを行った従業員を懲戒解雇処分にしました。しかし、納得のいかない従業員が会社を訴えたところ、裁判では『仕事をする上での支障になるほどではない』とみなされ『解雇は無効』となりました。つまり、私用メールを行った従業員に懲戒処分を下したとしても、場合によっては、裁判で覆されてしまうこともあり得るのです。一方、出会い系サイトへの利用という遊び目的で、5年間という長期にわたって3,000件程度のメールをやり取りしていたという従業員を解雇した場合は、裁判でも『解雇は妥当である』と判断されました。
従業員への懲戒処分を適切に行うためには、まずは就業規則に懲戒理由を明記することが大切です。
さらに、私用メールやLINEの頻度や内容を考慮することが重要になってきます。
従業員への懲戒処分を下した後に、トラブルに発展することを防ぐためにも、上記2点をしっかりと押さえるようにしましょう。