2018年グッドカンパニー大賞特別賞、2019年GPTW(Great Place to Work® Institute Japan)の働きがいのある会社ランキングへのランクイン、第4回ホワイト企業アワード「働きがいのある会社部門受賞」など、数多くの賞を受賞して知名度を上げている株式会社ピアズ。通信業界専門のコンサルティングを提供している会社として、ここ4~5年で規模も拡大しているなか、どのような採用や人材育成を行っているのでしょうか?今回は、株式会社ピアズ代表取締役社長の桑野隆司氏に「新卒採用」と「内定者の育成」について伺いました。
目次
少人数のイベントを設けて、学生が「本音」で話せる雰囲気をつくる
新卒採用で一番重要だと考えていることは何ですか?
桑野氏:
私たちの会社では、選考において履歴書は不要で、選考前や選考中に「面談」という形で学生の悩みや意志に向き合う時間を設けて、「学生と本音で話すこと」を最も重視しています。本音で話をしないと、学生の価値観と会社のビジョンが本当に合っているのかを見極めることはできません。もちろん、学生だけに本音を求めるのではなく、私たちも学生と向き合って本音で話すことが大事です。
そのために、「採用は社員全員でやる」という考えを基本として、同じ目線を持てる入社3年目の社員を新卒担当に置いたり、選考に進んでもらう前から座談会や食事会を開催したりするなど、少人数でフランクなイベントを数多く開催して、コミュニケーションを増やすようにしています。学生ができるだけ話しやすい場を設けたうえで、「本気 for you(利他主義)」「over the limit(成長意欲)」「every thanks(感謝)」といった私たちのポリシーに合うようなエピソードなどを聞くことで本心が見えてきます。他にも、学生が望んでいる働き方や就職活動のなかで企業を選ぶ基準など、とにかく学生の本音を引き出せるようにさまざまなことを質問するようにしています。
次の選考の段階では、学生の志向やビジョンを見極めたうえで、面談で話してもらう社員をアサインしています。例えば、若いうちから管理職になってバリバリ働きたい学生には若手の管理職をアサインするようにしています。
また、学生の就業意欲の強さも早い段階で見るようにしています。採用活動をしていると、なぜ働くのか目的や目標が明確でない人が就職活動をしているように感じることも多々あります。働く目的がないまま就職活動をするなら、働かないという選択肢があっても良いと思います。社会人としてスタートが他の人より1~2年、たとえ10年遅れたとしても、最終的に働くことに対して真剣になってもらえればいいと思います。私たちも人やお金などのコストを掛けて全力で採用活動をしているので、本気で就職活動をしている学生と出会いたいですね。
半年間の内定者研修を通じて、会社を好きになっていく
内定者研修ではどのようなことを教えていらっしゃいますか?
桑野氏:
課題図書や動画を見て、プロとはどのような人たちなのかというマインドを主に学んでもらっています。私たちの会社では、内定者を「ピアズジュニア」と呼び、入社後は「新卒」という言葉を使わずに、「プロ1」という呼び方をしています。なぜ「プロ1」という呼び方にしているかというと、入社1年目だとしてもプロの基準を満たしていないといけないという考えがあるからです。ドラフト1位でプロ入りが決まった高校生がチームに合流するまで遊んでるかと言えば、そうではありませんよね(笑)。プロのチームに入って、すぐ活躍できるように練習を積み重ねているはずです。
それと同じように、内定者期間中に3回の合宿をしたり、毎週Skypeでディスカッションしたりするなど、会社としても時間とコストをかけて、内定者たちに多くのことを学んで成長してもらえるようなプログラムを設計しています。合宿やディスカッションでは、ビジネスモデル分析、財務分析、成長戦略の考案など、MBAの授業で出されるような課題を出します。ほとんどの学生がビジネスを教わっていないので、座学を通した説明はせずに、ディスカッションやプレゼンなどの実践を多く課すようにしています。答えが明確にない課題ばかりなので、内定者はすごく大変だと思います(笑)。
ただ、早いうちから育成をしておけば、30歳、40歳になった時に優位性を生むことになるので、少しでも早く仕事について学び始めることに越したことはないですね。実際、入社後に他社との合同研修を受けた様子を見ると、うちの内定者は会社の理念もしっかり言えていますし、ディスカッションにも積極的に参加してる学生の割合が多いです。そういった姿を見ると、入社してから彼らの成長や早期から育成を始める有効性を実感しますね。
そこまで大変だと、内定者研修中にモチベーションが低下してしまう学生はいないのですか?
桑野氏:
内定者研修が長期間にわたるので、モチベーションが低下してしまう学生は一定数います。ただ、そういった学生を内定者たちだけで、いかに動機付けてやる気を起こさせるのかといったこともチームビルディングの課題として入っています。リーダー、サポーターなど、チーム内での役割も内定者たちで決めて、成果を出すように求めています。本当に困ったときは私たち社員も手助けしますが、基本的には内定者たちで解決してもらうようにしています。ですので、辞退する学生が少ないどころか、お互いが励まし合うので、逆に同期同士の絆が深まって、いいグリップになっていると思います。育成を通じて会社を好きになっていくのでしょう。
何でも吸収しようとする姿勢があれば、どんどん変わっていける
内定者からの評判が良い研修はありますか?
桑野氏:
歴史ウォークという研修があります。これは私自身、歴史が好きで始めた研修です。内容としては、歴史上の人物にテーマをあてて、その人物の状況を想像して、自分たちだったらどうするかといったことを考えて、ビジネスに活かしていくというものです。
例えば、実際に桶狭間に行って、「織田信長は今川義元に関する情報を最初に持ってきたものに1番の恩賞を与えたというように情報の価値に重きを置いていた」ということを教えたりしました。他にも、稲葉山城の崖を登ったり、「山本五十六に学ぶミドルリーダーシップ」というもので、現場と上司の板挟みになっている中間管理職の状況を想定して、自分たちだったらどうするかということを考えたりもしています。
なぜここまで育成に力を入れるのですか?
桑野氏:
私たちが提供しているサービスはすべて人がベースになっているので、人そのものを磨かなければ他社との競争において優位に立てないと考えているからです。ですので、どんな人材でも育てるという気概を持って、育成を体系化してモデルを作りたいと考えています。社員全員が日常的に好奇心をもって新しいことを学ぼうとしているので、育成の費用には糸目を付けないようにしています。
プロ2年目の社員の話なのですが、彼は内定者初期の時は笑顔があまりなく固い印象で人前に出るタイプではなかったんです。ですが、今では朝礼で自ら音頭を取って、進んで盛り上げ役になったりしています(笑)。彼は「自分が良ければいいという考えがなくなり、チームで1つの目標を持って、それを達成するための熱意やメンバーに思いやりを持つことが大事だと知った」と語っていました。たった半年の育成でここまで考え方が変わります。吸収力があれば人はどんどん変わっていけるのだと思います。
まとめ
会社の価値観と合うかどうかを見極めて採用をし、内定時からみっちりと研修を行うことで、他社より何歩もリードしている新入社員を育成している株式会社ピアズ。
採用を全員で行い、入社前の育成に時間やコストをかける分、人事担当者の負担が増えることになります。しかし、そうすることで入社後に早くから戦力となり活躍してもらえる、ひいては内定者のエンゲージメントを高めることにもつながります。
十分な採用人数が確保できていない、内定辞退者が多いといった課題を抱えている人事担当者の方は、まずは採用から内定者育成までのプランを考えてみることから始めてみてはどうでしょうか。