新入社員の早期退職を防ぐための施策として、「オンボーディング」が今注目を集めています。一方、離職する際の動きの1つである「オフボーディング」と呼ばれる施策も企業にとっては大切な要素です。今回は、オンボーディングとオフボーディングの違い、オフボーディングの成功するための施策などについて詳しくみていきましょう。
目次
オンボーディングとオフボーディングの違い
ここでは、オンボーディングとオフボーディングの意味をそれぞれみていきます。
オンボーディングとは、新入社員に対して行う教育、育成プログラムです。もともと、「on board」という英語から生まれた言葉で、飛行機や船に乗っている状態を指します。その本来の意味の通り、育成プログラムとしてのオンボーディングは、「新入社員がしっかりと企業に馴染み、力を発揮する状態」にすることを意味するものです。早期戦力化はもちろん、従業員のモチベーションアップ、早期離職の防止、エンゲージメントの向上などの効果があります。
対して、オフボーディングとは、従業員が「退職」する際の施策です。従業員が退職の意思を表明してから退職が完了するまでをしっかりとサポートし、企業と従業員の「良好な関係」を維持したり、築いたりすることを目的としています。
オンボーディングとオフボーディングは反対語とも言える施策であるものの、共通項としては、退職率の改善を図り、従業員のロイヤリティの向上も期待できる点です。
オンボーディングとオフボーディングの考え方は異なるものの、似たような効果を持つものといえます。そのため、どちらか一方だけではなく、どちらにも力を入れることが大切です。
オフボーディングが注視される理由
オフボーディングが注視される理由は、大きく分けて以下の2つの要素だといえます。
退職者の声による会社の評判
個人がSNSで自由に情報を発信できる今、退職者の声は会社の評判につながります。退職時に不誠実な対応をしてし待った場合には口コミサイトや転職サイト、SNS等にネガティブな書き込みをされる可能性があります。実際、悪評は、企業にとって退職率の増加などにつながるなどの悪影響が出ることが懸念されます。
雇用形態の変化
かつては1つの企業に退職まで勤める終身雇用や1つの企業に長期間勤務することが当たり前でした。しかし今は、複数回に渡る転職や副業、フリーランスになるなど、キャリアの築き方は多様化しています。また、一度離職した企業に再び雇用されるという「アルムナイ」という雇用形態も広まりつつあるのが現状です。
アルムナイのように再雇用しないまでも、退職者が過去に所属していた企業と協業することもよくあるパターンです。そんな時、企業と離職者が良好な関係を築いていなければ、再雇用や協業は実現できません。フレキシブルな雇用形態に対応できる企業こそ、新しい時代を生き抜いていけるはずです。そのためにオフボーディングをしっかりと実施し、誠意をもって退職者へ対応することが求められているといえるでしょう。
オフボーディングのポイント
オフボーディングを進めるために、特に必要と思われるポイントを3つにまとめました。
オフボーディングはピークエンドの意識を持つ
オフボーディングを行う際には、面談を実施することがあります。就業中の体験がよかったとして、オフボーディングの失敗によって企業全体の評価が下がる可能性がある点を把握しておきましょう。退職者に対する意識や意見に対して強く反対することのないように注意が必要です。
フィードバックをもらう
退職を決意した従業員から、その立場だからこそ感じる企業に対する意見を吸い上げることが大切です。フィードバックによって会社の問題点の把握が可能になります。離職者に対しても、「改善する意思がある企業」としての姿勢を見せることができ、良い印象を持ってもらうことが期待できます。
退職理由から社内体制の改善を図れる
退職理由にはポジティブなもの、ネガティブなものがそれぞれあるものです。特にネガティブな意見の中には、社内の問題点が潜んでいます。それを汲み取ることで、職場環境・社内体制の改善へつなげることが可能です。
オンボーディングだけでなくオフボーディングも大切に
オフボーディングは企業にとって、以下のようなメリットがあると想定されます。新入社員を企業に根付かせる策であるオンボーディングと同様に、離職者に対しての施策であるオフボーディングも大切な点は経営者層は把握しておきましょう。
1 企業のブランディングUP
転職サイトなどに書かれた企業の評判は、勤めている人よりも退職者によるものが多いものです。オフボーディングによって退職者が企業に対して良い印象を持つことができれば、ポジティブな評判が書かれ、企業のブランディングUPが期待できます。
2 社員の満足度UP
退職者のフィードバックによって得られた社内の問題点を改善することは、現社員にとっても喜ばしいものだといえます。働きやすい職場環境が整うことに加え、退職者からのポジティブな評判は現社員の誇りにもつながり、従業員満足度が高まるためです。
3 担当者の負担軽減
オフボーディングの実施によって、退職までの一連の流れを整理し、やるべきことを規定化できます。そのため、上司や人事部など、退職手続きを行う担当者の負担を軽減することが可能です。
オン、オフボーディングの両輪で企業環境、利益向上をはかろう
オンボーディングは入社時、オフボーディングは退職時に実施される施策です。どちらも現在の企業のための施策であるだけでなく、特にオフボーディングに関しては、再雇用までを想定した施策といえます。
企業にとって、従業員の離職は痛手です。しかし、従業員満足度を高めるヒントも離職のタイミングで把握しやすいといいえます。企業にとって利益を生むチャンスでもあるため、オフボーディングを積極的に実施してみましょう。