終身雇用制度が機能していた時代とは異なり、現代の労働環境は流動的です。新卒の新入社員が1~3年目までに離職してしまうことも珍しくなく、採用・育成コストの抑制が企業の課題になっています。
少子高齢化が進むなか、労働人口の不足も課題です。インバウンドによる従業員の雇用を掲げる会社もありますが、価値観が広がりを見せるなか、企業文化にマッチした人材の採用は今後もますます難しくなっていくでしょう。
新しく採用した従業員の定着を図るには、「オンボーディング」が有効です。オンボーディングとは、新しく入社した社員をいち早く戦力化させるためのプロセスのこと。エンゲージメントを高めることで、早期離職の防止にもつながる考え方です。
オンボーディングは、入社後にいきなり始めるものではなく、採用段階から始めることが大切です。今回の記事では、選考時・入社後のオンボーディングについてご紹介します。
採用選考段階で行う「オンボーディング」とは
オンボーディングは、採用後のみ行われるものではなく、採用段階から活かせる考え方です。早期離職者の離職理由として、「会社に馴染めなかった」「会社とマッチしていなかった」というギャップが多くあげられています。そのため、採用段階から企業文化を求職者に伝え、エンゲージメントを高めていくことが大切だといえるでしょう。
まずは、母集団形成の段階からオンボーディングは導入できます。ここで大切になるのは、会社のブランディングです。ブランディングは、会社の文化、価値観と置き換えてもよいでしょう。
これらを、母集団形成の早期段階で伝える工夫が必要です。この際、押さえておきたいのは、良い点だけではなく、悪い点についても包み隠さず情報提供すること。いいことだけを聞いて入社した人は、その後のギャップにとまどい、その結果離職してしまうケースが多いのです。
その後、選抜の過程でもオンボーディングを行います。大切なのは、求職者に悪い印象を与えないようにすることです。採用側だからといって、高圧的な態度を取ると、新規社員のエンゲージメントを得るまでに時間がかかってしまうでしょう。
内定後、入社に至るまでの間にエンゲージを保てる策を講じることも有効です。
入社後のオンボーディングは最初の1週間がカギ!
入社後、もっとも大切なのは初めの1週間です。誰しも、スタート時は緊張感とストレスでいっぱいになっているもの。だからこそ、この期間に職場に馴染むためのサポートが大切なのです。
入社後のオンボーディングを考える際は、ビジネス面・コミュニケーション面の両面から考えましょう。
知識とスキルを高めるためには、オリエンテーションやOJTが例としてあげられます。実際に実務にあたることでスキルを身につけられるOJTは、すでに取り入れているところも多いのではないでしょうか。
また、OJTのほか、Off-JTを導入してもよいでしょう。Off-JTとは、ロールプレイングや社外研修を通してスキルを身につけていくものを指します。OJTとOff-JTをうまく組み合わせ、業種や職種、自社のオンボーディングに合ったスタイルを選びましょう。
コミュニケーション面では、以下のような施策が例としてあげられます。
・メンター制度
・1on1ミーティング
・歓迎会
・オリエンテーション
主に、既存メンバーとの関係性を築くきっかけの場を提供することが目的です。メンター制度や1on1ミーティングは、特定の上司・先輩と定期的に密なコミュニケーションを取る場を設けることで、不安や疑問点を相談しやすい状況をつくることができます。ビジネススキル面においても有効に働く施策だといえるでしょう。
「何かあったら聞きに来なさい」だけでは、なかなか声をかけられない新入社員もいるものです。年配社員になればなるほど、このようなタイプの社員を「消極的だ」と否定的に捉えてしまうかもしれません。しかし、性格や価値観は個人によって異なります。まずは声をかけやすくなる雰囲気を既存社員がつくり上げることは、会社の取り組みとして大事ではないでしょうか。
なお、オリエンテーションの場や仕事が始まる前などで、既存社員がふだんから使っている略語・専門用語を説明することも大切です。口頭伝達だけではなく、マニュアルを用意して配布してもよいでしょう。こうした配慮も、新たな従業員を歓迎しようという雰囲気づくりに効果的で、エンゲージメント向上につながるのです。
まとめ
従業員の離職を防ぎ、高いパフォーマンスを発揮してもらうためには、会社への思い入れや愛着、つまり「エンゲージメント」の向上が必須だといっても過言ではないでしょう。
オンボーディングは、従業員のエンゲージメントの向上につながる施策です。採用時から入社後まで、手間を惜しまず会社にいち早く溶け込める施策を実施しましょう。心理的安全を感じられることで、長く働こうと思えるはずです。