サイトアイコン HR BLOG | 経営者と役員とともに社会を『HAPPY』にする

成城石井という『ブランド』―成城石井が誇る商品知識・現場対応力の秘訣とは?

現場の従業員のお客様対応力に定評があり、小売業界の中でも圧倒的な存在感を放つ株式会社成城石井。創業以来、時代の変化にも柔軟に対応しながら着実に成長し続け、たくさんのファンに愛されてきました。成城石井がお客様の信頼を得ている背景には、充実した研修制度や従業員満足度向上のための施策があります。

今回は、そんな成城石井の従業員の採用から研修・育成について、人事部採用教育課 課長の荻巣 浩徳様に取材しました。


現場対応力の秘訣!成城石井の「チームマネジメント」に対する考え方とは?

新卒採用時、就活生のどのような面を見ていますか?

荻巣氏:
求める人物像としては3つあります。
「食が好きである」こと、「>チームワーク、チームマネジメントを大事にしている」こと、そして「チャレンジャーである」こと。この3つのキーワードを採用の際には大切にしています。

また、選考を受ける皆さんに職場見学レポートを提出してもらっています。

見学店舗数は特に指定していませんが、3~4店舗、多い人だと20店舗も見てきてくれる人もいます。レポートのテーマは他社と成城石井の違いを考察してもらうことなので、少なくとも2店舗以上は見学してもらいたいですね。

当社はたくさんの店舗フォーマットを持っており、地域によってさまざまですので、やはり複数の店舗を見学していただかないと分からない違いもあるはずです。そういったところも仕事に対する価値観や姿勢などの判断材料の1つにしています。
レポートの内容には本当に個性が出ますね。中には商圏分析までしてくれる人もいます。目の前にある事実だけを捉えてしまう人が多いのですが、人事部としてはその裏にある「意図」や「仕掛け」をくみ取ってもらいたいと考えています。

また、小売業なので「チームマネジメント」という観点には重きを置いています。

成城石井のようなBtoCの現場ですと、従業員はアルバイトさんが中心になっていますので、働く事情や目標がみなさんそれぞれにあり、ベクトルを1つにすることが大変難しいものです。
だからこそ、採用時には学生時代にチームで成果を上げた経験や、方向性の違う人たちをマネジメントした経験のある人を求めています。
実際の面接では、学生時代に周りの人と協力しながら取り組んだ経験があるか、その中で自分はどういう役割を担ったのか、また最終的にはどのような成果を上げたのか、ということを聞くようにしています。特に、チームの中でどのような役割を担っていたのかを聞き出すようにしています。大きい組織をまとめてきたという経験がある人は入社後のイメージが持ちやすいですね。

独自の観点でお客様との接点を創り出す!知識を活かすための商品研修

成城石井にはチーズ・ワインスクールといった御社ならではの商材研修がありますが、その他の研修制度についても詳しくお聞かせください

荻巣氏:
新入社員に対しては、入社後すぐに10日間ほど集合研修を行っています。ビジネスの入り口についての研修を行い、成城石井のマインドについて知ってもらいます。
また、当社には非常にたくさんの部署がありますので、各部署の所属長には部署や、そこでの主要な取り組みなどの紹介もしてもらっています。成城石井のビジネスを正しく知り、会社の目指している方向性を理解する、という目的です。その後は現場のOJTに入りますが、2ヵ月ごとに集合研修を行っています。全体としては実務にウェイトを置いた研修が多いですが、成城石井というブランドやマインドをより深く学んでもらったり、PDCAを繰り返しながら現場での働きを振り返ってもらったりしています。新入社員ならではの悩みを共有するような場としても活用していますね。

入社前に関しては、イベントを行って内定者との接点を作っています。ここでは接客体験をしてもらったり、商品研修の前段階として、他社商品との食べ比べのイベントなどを実施しています。

ワイン・チーズスクールは1クールで年に5回行っています。目的は接客・サービス力の向上です。現場のお客様が実際に求めているレベルを知り、ご要望により多くお応えできるようになることが目標です。
以前は商品知識のインプットに特化した研修だったのですが、得た知識を実際の現場でお客様に伝えるためには、アウトプットの機会が重要であると考え直しました。従って、現在ではインプット+接客講座(ロールプレイング)をセットにした研修内容となっています。

ワインに関しては一度の研修で60種類くらいテイスティングしてもらったり、チーズに関してもさまざまな種類を用意して試食してもらったりしています。

他にも年に2回、優秀な成績をあげた社員を対象とした海外研修があります。こちらは報奨的な要素を兼ねており、渡航費などはすべて会社負担です。

接客では、『売り場を眺めているだけではわからないその商品の裏側のストーリーを伝える』ということを大事にしています。そこで、世界中のお取引先メーカー様を実際に訪問し、製造現場の視察を通して作り手さんの熱意を理解してもらったり、生産者の思いを学んでもらったりする機会を作っています。また同時に、流通・小売業の視察も行っています。諸外国の食文化や流通がどのようにリンクしているのかを知り、帰国後の現場仕事に活かしてもらったり、一層の成長に向けたモチベーションにしてもらっています。

海外視察で見てきた商品が、帰国後に売り場に並ぶこともよくあります。そうすると、実際に渡航した従業員にとっては『現地で見た生産者の思いを伝えたい!』というモチベーションにもなりますし、何よりうれしいですよね。

また、帰国後は視察の報告をする場も設けています。経営方針説明会での全社向け報告や、公式サイトでの社外向けの情報発信がそれにあたります。
今年に関しては、現地で見たものを実際の販売により活かしていくため、現地レポートの販促物を作成しています。

現地での経験や情報を持っている、というだけで現場でのお客様の反応も変わってきます。そうすると、商品の売れ方も変わってきます。この経験がもとになって、自分の常連さんにできるということもあると思います。従業員にとってはやはり特別な意味を持つ研修となっていますね。

規模としては先ほど申し上げた通り、年に2回。1回の渡航では15人ほど参加しています。
参加者の選出は推薦で、役員による推薦、カスタマーサービスで高い評価を得た方や会社の発展に大きく寄与した方、そして店舗運営・マネジメントで高い評価を得た方など、カテゴリごとに優秀な社員を選出しています。

社員の成長意欲を促すような取り組みにはどのようなものがありますか?

荻巣氏:
現場での接客レベル向上の施策に関しては、新入社員を対象に毎年、接客コンテスト新人戦を行っています。2年目以降は『ファイブスターコンテスト』という年に1回の全社向け接客コンテストに参加してもらうようになります。若い人では3年目で受賞する人もいますし、アルバイトさんの受賞も多いです。年次や立場に関わらず、能力がある人を評価しています。

そのほか、毎月ホスピタリティーモニターという覆面調査を行っています。そこで各店のお客様満足度のレベルを定量的に測っています。それを四半期ごとに評価し、上位店舗を都度表彰しています。店舗の売上に関しては、毎週のように変わる『売込み商品』の売れ行きで計測することが多いですね。
そのあたりがうまい店長だと、売り込み施策とCSを絡めて向上させることを考えてくれます。実際のところ売り込みとCSというのは連動している、というのが落としどころですね。

また、現場での店長への昇格はチェッカー技能検定3級が条件になっています。スタッフに関しては強制ではありませんが、1級を目指してもらうことを推奨しています。
レジ検定の一級や二級などの資格を取ると会社から手当が出ます。
他の資格だとワインソムリエ、チーズプロフェッショナル、食品表示検定などは手当が出ます。

ちなみに、私は「ウィスキーエキスパート」という資格を取得しました。
これは個人の趣味の延長で、手当の出ない資格ですが(笑)

資格を取ったのはお客様に自慢できるものが欲しかった、というのがきっかけひとつではありますが、周りの影響も大きかったです。
私が現場にいたころ、所属していたチームの結束が非常に強かったんです。1つの目標に向かって、みんなで団結してものを成し遂げていくことにチーム全員が価値を感じていました。その中で、何か目標を決めて一緒に勉強しようということになりまして。そんな流れで取得しました。楽しかった良い思い出です。
結果的に、資格のバッジなどをつけているとお客様は見てくださいますし、それでお声がけしてくださる方もいらっしゃるので、コミュニケーションのきっかけにもなります。改めて商品知識の大切さを実感しました。

まとめ

成城石井の高いお客様満足度の背景には、実務に活かすことを前提とした商品研修や、従業員のモチベーションを上げるための評価制度などがありました。また、食に関する資格の取得も積極的に行われていました。食に対する愛情があり、探求心が深く、チームワークを大事にしている同社ならではの風土であると感じました。
そして同社には、従業員のモチベーション向上とお客様満足度の向上を同時に叶える仕組みがありました。一見すると相反するようにも見えるこの2つの要素は、実は密接にリンクしており、この2つを同時に叶えることこそが現場での対応力に直結するのではないでしょうか。
アルバイト・正社員関係なく現場での実力・能力を評価し、チームマネジメントを大切にする成城石井。人材や働き方の多様化が浸透してきた今だからこそ、成城石井のような観点での採用・評価が大切になってくるのではないでしょうか。