テレワーク応援プロジェクト特別企画

テレワーカーマネジメントノート

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テレワークを始める前に

テレワークにて、従業員が『出社して業務を行う』のと同等以上のパフォーマンスを発揮するためには、いろいろなことを事前に準備しておく必要があります。まず、テレワークに適した明確な「働き方のルール」を確立して共有すること。そして、ルールを正しく理解し、ツールを最大限に使いこなすための「トレーニング」を実施しておくことが重要です。

さまざまな事情により、準備する時間もないままテレワークの実施に踏み切らなくてはならない企業も多くあるでしょう。その場合、テレワークの実施を開始したうえで、並行して働き方のルールの共有や準備、トレーニングを行わなければなりません。管理者である上司も、その部下も、適切な研修を受けていない状態であれば、双方にとって大きなストレスが発生するでしょう。

幸いにも、アメリカではすでに『テレワーク中の従業員のエンゲージメントと生産性を向上させるための手法』が確立されています。私たちは、アメリカで確立されている手法と国内の成功事例を体系的にまとめ上げ、ここに『テレワーカーマネジメントノート』として、皆さまにお届けいたします。

目次

特に、『テレワークでエンゲージメントを高めるための6つの施策』は、幹部従業員に負担をかけることなく、全従業員のモチベーションを高め、成果を出させることができます。ぜひ今日から実施してみてください。

『テレワーク』9つの課題と解決策

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すべての管理者は「テレワーク」、つまり「リモートでの作業」において「作業効率が落ちる要因は何か?」を正しく理解しておく必要があるでしょう。事前に準備や研修が行えない場合、どんなに優秀な従業員であっても、仕事のパフォーマンスやエンゲージメントが低下する可能性があります。テレワークには、9つの課題とその解決が存在します。

1. パフォーマンスと集中力の課題

このような状況となる前、あなたはテレワークに対してどのようなイメージを持たれていましたか?床やベットに寝転がりながらMac Bookで仕事をしていたり、ソファーに座って子供をあやしながら仕事をしていたりする。そんなイメージ写真を使った記事を見かけることもあります。もしあなたが会社のオーナーで、あなたの会社の従業員がこのような仕事の仕方をしていたら、ちゃんと成果が出ているのか心配になるのではないでしょうか。

もしあなたが、自社のテレワークの手法やルールに対して、なんらかの助言や決定ができる立場であれば、テレワークルールチェック項目に、次のことを加えるべきでしょう。

【チェック項目例】
  • 自宅にテレワーク用の十分な業務スペースがあるか?
  • そこには仕事をする上で適切なサイズの机、椅子があるか?
  • そこには気が散るようなものは置かれていないか?
  • 業務を行う上で適切なデバイスが揃っているか?(※1)
  • そのスペースは、他の居住者から独立したスペースであるか?
  • そのスペースは、子供の保育スペースとは、しっかりと分離できているか?

1.1. 居住空間の共有による課題

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2020年春、新型コロナウイルスの影響で多くの学校や保育所が閉鎖される中、子供と一緒に過ごす従業員にとって、テレワークの効率化はより一層難しくなります。在宅勤務者の集中力や業務効率を考えた場合、自宅に専用のワークスペースと環境が整っていることが重要です。

ある調査によると、新型コロナウイルスの影響で「在宅勤務」を実施したワーママ(会社で働くお母さん)に、「お子様を見ながら在宅勤務を行った際、仕事の集中度合いはいかがでしたか?」とアンケートを取ったところ、実に75.5%の方が「集中できない」と回答しました。(参照元:株式会社キッズライン(KIDSLINE inc.)

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テレワークを成功に導くには、十分なワークスペース、そして十分な保育スペースの両方があることが必要なのです。

どうしても同じ部屋で業務をしなければならない場合、カーテンなどによる仕切りを付けたり、お互いに会話や音楽、テレビなどの音量を下げたりする配慮も必要でしょう。

また、学校や保育所の閉鎖により、通常であれば発生しなかったような子育てに対する責任を家族から任される可能性も高くなります。テレワークを行う場合、今回のような場合に限らず普段と同じ状況であっても、家族からの家事育児に対する要求は高まります。これには各家庭における、テレワークへの理解も必要となってきます。

企業は、各従業員のテレワーク環境を把握するとともに、全従業員に対するアドバイスや、その家族がテレワークへの理解を高めてもらえるためのサポートも行うべきでしょう。

1.2. デスクや周辺機器の課題

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仕事環境という意味において、そもそも自宅での仕事を想定していなかった従業員にとっては、準備の手間や時間、経費も馬鹿になりません。従業員によっては、自宅で仕事を行うのに適したデスクや椅子がない人もいます。企業は、それらを購入するのにかかる時間や経費にも気を配り、事前に従業員とコンセンサスを得ておくことが望ましいでしょう。

例えば会社からノートパソコンを自宅に持ち帰ってテレワークを行う場合、ノートパソコンの小さな画面ではどうしても業務効率は上がりません。会社のデスクで使っている外部モニターや、場合によってはデスクトップPC、キーボード、マウスなどを自宅に郵送する必要もあるでしょう。

また、業務内容によっては、プリンターやスキャナーを使う必要のある従業員もいるはずです。企業は各部門の上長に部下のテレワーク環境を確認し、必要な経費を出すことを検討する必要があります。テレワークのデスクや周辺機器の補填に関するルールも早いうちで統一し、全従業員に共有するべきです。

2. 生産性管理の課題

業務に集中ができる環境を適切に用意したとしても、実際に高いパフォーマンスを出し、成果を上げているかどうかは別の問題となります。企業はそれぞれの部門に対して的確な生産性管理が行われていることを確認するべきです。

これは、出勤しての業務でも、テレワークでも変わらず行われるべきものですが、出勤して業務を行う場合、その場で部下の様子を見ることができます。上司は、「部下が何をしているのか」「何に困っているのか」を逐一チェックすることができます。これにより、部下も上司や同僚からの視線を気にします。自宅でテレビを見ているときに比べれば、当然のことながら気持ちも姿勢もシャキッとしているはずです。テレワークでも、できる限りその環境をつくれるように工夫するべきでしょう。下記は、上司が部下の生産性を管理するための方法です。

【生産性管理方法例】
  • 意識面での生産性管理
     ・意識的な意味での生産性管理ということであれば、出勤中の時間帯はWebCAMを常時接続する
     ・朝、昼、夕方での定期報告を業務チーム単位で実施する
     ・定期的に電話をするなどして状況を確認する
  • 業務面での生産性管理
     ・業務管理用のシートを作成して、毎日の業務予定と実績を管理する
     ・BacklogやTrelloなどの業務管理ソフトを入れて業務毎の進捗を管理する

先述したとおり、上司は自分の部下が「サボっていないか」「困っていないか」「効率的に業務をこなしているか」と心配します。出勤しての勤務であっても、部下の生産性は常に心配の種ですから、テレワークで目が届かなくなれば、なおさら心配になるでしょう。企業は全部門の幹部社員が、そのような心配をしなくて済むようなルールの設定や、仕組みの導入を行うべきです。

3. コミュニケーションの課題

テレワークへの移行で心配を抱えるのは、上司だけではありません。部下も対面でのコミュニケーションの量や質の低下によるストレスを抱えています

部下の多くは、上司からのサポートの減少やコミュニケーションの低下により不安を抱きます。特に入社して日の浅い従業員であれば、上司や先輩のサポートがなければ業務の進行に遅れが生じたり、止まってしまうこともあるでしょう。出勤しての業務であれば、隣の席にいる先輩の都合の良さそうなタイミングを見計らって相談することができます。

テレワークになると、先輩や上司、同僚ですら目視で様子を伺うことができなくなってしまうため、どうしてもコミュニケーションの頻度と速度が落ちてしまうでしょう。その結果、部下は、上司や先輩のサポート量の減少によるフラストレーションが溜まり、普段ではありえないようなミスを起こしてしまう可能性すらあります。

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テレワーク中の上司は、部下はコミュニケーション頻度の低下によってフラストレーションが溜まっているものだと考え、普段より多めにコミュニケーションを取ることを心掛けるべきでしょう。また、できるかぎり会社でのコミュニケーションに近いツールとして、Web会議システムや、グループチャットツールを頻繁に活用しましょう。できるかぎり、会社全体でのコミュニケーションも取るようにしましょう。

4. 従業員間トラブルの課題

特に人事部が暗黙の了解で任されがちな業務として、従業員間のトラブル対応というものがあります。セクハラ、パワハラ、モラハラからちょっとしたいざこざまでその内容は多岐にわたります。

このような問題が起こった場合、出社しての勤務であれば、従業員側も声をかけやすく、同時に人事部側も従業員ひとりひとりのちょっとした変化に気がつけます。しかしながら、テレワークになって対面でのコミュニケーションが極端に減ってしまうと、どうしても細かな変化に気がつくことができず、対応が遅くなってしまうでしょう。その結果、知らぬ間に事態が悪化したり、退職や、裁判に発展する可能性すらありえます。

このような状況に人事部はどのように対応すれば良いのでしょうか。最優先でやるべきことは、従業員間のトラブルが発生しているかどうかを知ることです。例えば、テレワーク中の全従業員に対して定期的なアンケートを出したり、体調管理ができるサービスを導入するのも良いでしょう。

Web会議システムなどを活用して定期的に面談を実施することも有効です。ただ、全社員との面談は現実的ではない場合もあります。そのような場合はパルスサーベイ機能の付いたHRシステムを導入して面談対象者を絞り込むこともできるでしょう。また、パルスサーベイシステムの導入が難しい場合は、人事や総務部門主催のWebイベント(オンライン飲み会や、ゲーム大会など)を開催し、参加状況などから面談が必要な人を絞り込むのも良いでしょう。

5. セキュリティとデータ共有の課題

5.1. セキュリティ対策の課題

リモートワークの場合は、オンラインでのデータのやりとりが基本となるので、社内での業務以上にセキュリティを意識する必要が出てきます。もしも、会社の機密データやお客様の個人情報などが流失してしまった場合、最悪のケースとしては、会社が倒産するということもありえます。

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従業員全員のパソコンにセキュリティソフトを入れるのは当たり前ですが、「適切でないWebサイトを閲覧していないか?」や「適切でないソフトウェアをインストールしていないか?」などもチェックする必要があるでしょう。企業はそれらを自動で行うソフトウェアの導入も検討するべきです。前もって準備ができるのなら、リモート接続ソフトや、シンクライアントなどの導入も検討してみてはいかがでしょうか。

5.2. データ共有の課題

テレワークの業務効率を下げる要因として、情報へのアクセスの問題があります。社内であれば、簡単にアクセスできるイントラネット上のデータファイルやサーバーなども、セキュリティーの観点から、社外からはアクセスできないようにしている企業がほとんどでしょう。適切な準備がされないままテレワークへの移行を行うと、多くの場合においてこの問題が浮上します。普段とは違う情報共有の方法やデータの検索方法に戸惑い、本来であれば不必要な、追加の工数と労力が発生します。出社していれば数分で終わるような業務に数十分、数時間かかることもあるでしょう。

問題は、こういったことが一個人の業務効率の低下のみにとどまらないことです。業務に関わる全ての従業員がお互いの仕事環境(使用しているパソコンのスペックや自宅のネットワーク環境の品質)を理解し合えていない場合、大きな人間関係のトラブルへ発展する場合があります。

1つの業務に関わるメンバーの一部のみがテレワークを強いられる場合には、仕事環境のギャップが生む課題に対して、特に注意が必要になるでしょう。先に述べたように、出社していれば簡単にこなせる業務であっても、環境が変わると一筋縄ではいかなくなります。当然、従業員にはかなりのフラストレーションが溜まることになり、モチベーションも低下してしまいます。感情的になって、日報や社内の掲示板などで、必要以上に「テレワークの現状」を悪く言ったり、上司、同僚に対する不満を口にしたりする人もでてきます。

また、メールやチャットなどによる業務のやり取りにおいても、普段よりもキツイ書き方になったり、相手に対する配慮が欠けてしまったりする人もいるでしょう。それに対して、受け取った側が、相手の置かれている状況を正しく理解できていなければ、攻撃的な書き方で返信をしてしまい、状況が悪化してしまう場合があります。また、攻撃はしないまでも、相手のプロとしてのレベルを低く評価する可能性もあるでしょう。この様な状況を上司は常に把握し、チームメンバーをサポートしましょう。

6. 副業の課題

最近では、働き方改革の影響により、副業を全面的に認めている企業も多くなっています。新型コロナウイルスの影響で多くの企業がテレワークを導入する中、決して無視できないのは、本業と副業の線引の課題です。

6.1. 本業と副業の線引

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通常の働き方であれば、月曜日から金曜日を本業の会社に出勤して業務を行い、定時後や休日の時間を副業に充てる人が多いのではないでしょうか。では、あなたが会社の経営者だとして、『本業がテレワークとなった今』、あなたのすべての従業員が、決められた時間の中で、『本業の業務のみに集中している』と言い切れますか?

結局のところそれは、従業員一人ひとりの良心に委ねるしかないのです。副業を許可している企業のほとんどが、「会社への出社」を「自社の業務を行っていることの証明」としていたことでしょう。その証明の効力が失われた今、企業はどのようにして従業員の良心を繋ぎ止め、信頼すればよいのでしょうか。

PC管理ソフトなどの一部には15分ごとにスクリーンショットを取るようなツールもあります。そこには2つの効果があります。1つは、業務に関係のない作業やサイト閲覧をしていないかの確認。もう1つは画面での操作が止まったままになっていないかの確認です。

もちろん、職種や業務内容によっては、PCの操作を全くしないこともあるでしょう。ですが、このようなPC管理ソフトの導入と、Web会議の常時接続を行えば、勤務時間中に他の業務を行うことは限りなく難しくなります。

重要なのは、従業員の不正を見つけることではありません。日本の古いことわざに『瓜田に履を納いれず、李下に冠を正さず』というものがあります。これは、人に疑われる行いをしてはいけないという意味ですが、そもそも従業員が不正できない状況を作れば、そのようなことに対する心配も激減できるでしょう。

7. 研修の課題

従業員に高いパフォーマンスで成果を出し続けてもらうためには、業務の管理をするだけではだめです。アメリカ合衆国第16代大統領エイブラハム・リンカーンの言葉に『斧を研ぐ』というものがあります。従業員にも斧を研ぐ時間を与えなくてはなりません。それが、研修や課題、自己学習なのです。

【一般的な研修の種類】
  • 全社研修
     会社のビジョン、ミッション、バリューの共有やコンプライアンス研修などする
  • 新卒研修、内定者研修
     新卒や内定者が会社に馴染み、会社の一員として、成果を出していくために必要な研修など
  • 各部門毎、チーム毎の研修
     主に技術的な研修や、その部門、チームのルールであったり、使用するソフトウェアの研修。顧客や業界、自社製品を知るための研修など

テレワークが中心であったとしても、少人数からなる「3.各部門毎、チーム毎の研修」などは、Web会議システムなどを使えば比較的に実現可能でしょう。
しかし、全社をあげての研修などは会社規模にもよりますが、数百人規模で接続が可能なZoomなどのソフトウェアを活用しても、対面ほどの成果を出すことは難しく思えます。

例えば、研修内容を動画に撮り、その内容を全社員向けに配信して、全従業員の動画閲覧状況が把握できるものがあれば、より確実に研修の成果を出すことができるのではないでしょうか。研修後に簡単な小テストを実施して回答を集めるのも良いでしょう。
研修の種類に合わせて利用するサービスや、やり方を工夫する必要があります。

8. 体調管理の課題

新型コロナウイルスの影響によってテレワークを導入する企業が増加している中、運動不足やストレスから来る食べ過ぎによる体調不良の話を耳にするようになりました。

「Yahoo!リアルタイム検索」では、「コロナ太り」というワードが人気急上昇ワードになっています。外出自粛により、「なかなか外に出て運動ができない」「家にずっといるのでついついお菓子を食べてしまう」などが「コロナ太り」の主な原因となっているようです。

【Twitterでの投稿例】
  • 「毎日ジムに行っていたんですけど休業になってしまって…。1週間で5キロも太ってしまいました…」
  • 「近くのスーパーが夜の7時で営業終了してしまうので、それまでにいかないとコンビニの総菜で夕食を済ませるようにしています。ただ、コンビニ行くとついついスナック菓子を買ってしまいます…」
  • 「在宅なのでだらだらと仕事をしてしまいます…。次第に夜型の生活になってきているので、日中は集中力が散漫になり、体調もあまりよくありません…」

何を行うときも体が資本。体調を崩してしまえば、どんなに好きな仕事でもパフォーマンスは落ちてしまいます。では、テレワークの体調不良はどのように予防、解消すればよいのでしょうか。

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企業が取り組めることとしては、Web会議などを活用した「体を動かすイベント」を開催するというのも良いでしょう。下記のようなイベントを実施してみてはいかがでしょうか。

【運動イベント例】
  • ラジオ体操イベントの開催

    誰もが一度はラジオ体操を行ったことがあるのでしょう。動き自体はゆっくりですが、すべてを通して行えば汗ばむ程度の程よい運動になります。体操の内容も比較的に難しくないので、多くの人が参加できるはずです。

    毎日の「業務開始時」や「お昼休憩の終了後」、「15時頃」のタイミングで、実施してみてはいかがでしょうか。部門ごとにWeb会議システムなどで繋いで実施すると盛り上がるかもしれません。特に業務開始の時間帯で実施するようにすれば、夜型だった人も朝型に切り替えることができるでしょう。

  • 筋トレイベントを開催

    ジムの休業により、自宅で筋トレをする方も増えてきています。特にダンベルやバーベルを必要としない「自重トレーニング」であればコストもかかりませんし、畳1帖程のスペースがあれば十分行えるので、会社のイベントとしてもおすすめです。

    主な自重トレーニングの内容は「腕立て伏せ」「腹筋」「スクワット」です。筋肉を動かすことで血の巡りがよくなり、肩こりや腰痛の解消にもつながり、気分転換にもなるので、個人的に行う分にもおすすめです。

9. 孤独の課題

テレワークをするうえで忘れられやすいのが、孤独の問題です。正社員であれば残業をしなかったとしても40時間(8時間✕5日間)を会社で過ごしています。つまり毎週40時間を会社の仲間と過ごしていると言えるでしょう。

1週間が168時間で、仮に睡眠時間を49時間(7時間✕7日間)とします。出社の準備や寝支度などの時間も含めれば、一週間で12~15時間くらいになるでしょう。

つまり、私たちは、起きていている時間のうち、実に40%近くを会社の仲間と過ごしていることになります。

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私たちが思っている以上に、『会社に出社して会社の仲間とコミュニケーションを取ること』が孤独を遠ざけ、精神的安定を与えてくれているのです。特にその従業員が一人暮らしなどをしている場合、『テレワーク』の強制的な実施化において、外出すら禁止されたとなれば、他の人と接する機会は限りなくゼロに近くなるでしょう。

その従業員が、普段から会社の仲間との時間を大切にする人であれば、なおさら孤独感に苦しむ可能性は高くなるでしょう。また、「孤独」の状態が長期間にわたって継続されると、組織に対する「所属意識」が弱まり、些細なことがきっかけで会社を辞めてしまう可能性さえあります。

この課題を解決するには、「従業員同士が積極的にコミュニケーションをとり、互いに励ましあう」そのような環境を作り出すことです。

そのためにも、会社主催のイベントを積極的に開催していきましょう。もちろん、各部門で、上長の判断で解決できることもたくさんあります。

次にご紹介する「テレワークでエンゲージメントを高めるための6つの施策」は、1部門、1チームの上司が、今日から実施できるものとなっております。

テレワークでエンゲージメントを高めるための6つの施策

テレワークを成功に導く「上司の役割」とは?

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「テレワーク」には、先述したような課題と解決策がありますが、事前に準備していたとしても成功に導くのは容易なものではありません。また、「孤独感」を取り除き、「エンゲージメント」や「モチベーション」を高く保つためには、先述した課題に対する解決策だけでは十分だとは言えないでしょう。

では従業員の不安を解消し、「モチベーション」や「エンゲージメント」を高く保つためには、具体的に何をすればよいのでしょうか

これからお伝えする6つの施策は、どれも多大なコストをかけることなく行えます。尚且、会社単位ではなく、いち上司が自分のチームのために行える施策となっていますので、あなたがこの記事を読んだ後、すぐに始めることができるでしょう。もちろん上司の負担も最小限におさえたうえで、成果に繋がる施策です。ぜひあなたの部下のために実行に移してみてください。

1. 励まし、思いやりをもってサポートする

準備が十分にできていない状態でのテレワークでは、上司が部下をどれだけ気遣ってあげられるかが重要になります。

上司は特に次のことに注意して部下とコミュニケーションを取りましょう。

【チェックポイント】
  • 部下のストレスの度合いを把握する
  • 不安や心配事に耳を傾け共感する
  • 状況の改善に向けて共に奮闘する姿勢を見せる
  • 実際に改善してその達成を共に分かち合う

1.1. 上司や先輩から積極的にコミュニケーションをとる

中途、新卒に関わらず、新入社員のサポートには、より慎重になるべきでしょう。慣れない状況からくる不安やストレス、孤独を感じていても、それをうまく周りに相談できていない場合が多いからです。特に新卒の新入社員は、社会人一年目をテレワークで開始するわけですから、なおさら不安は募るでしょう。

そうならないために、上司や先輩の方から積極的にコミュニケーションを取ってください。話の内容も「テレワークで困っていること、大変なことはない?」などの一般的な質問でも構いません。短い時間でも声をかけてあげることが重要なのです。

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また、Web会議や電話、チャットなどを使って1対1のコミュニケーションも取るようにしましょう。グループチャットやグループWeb会議など、大勢の中では言い出しにくいこともあると思います。悩みや本音なども聞きだせるように、心掛けるようにしましょう。チーム内に話を聞くのがうまい人がいれば、その人と連携してサポートするのも良いでしょう。

会話の中で出てきた悩みや相談内容、解決方法などは会話の最後に確認し直して、お互いが正しく理解していることを、確認しあってください。議事録に残し、特定の人しか見れないようにしましょう。

重要なのは、会話の軸を部下の抱えている感情に置くということです。
どう思っているか、どうしたいのかを聞き出せるようにしましょう。

1.2. 小さな変化に気がつけるようにする

上司は部下の微妙な変化に気を配りましょう。態度や表情、声のトーンや発言内容から、部下の心の変化を察知する必要があります。人の感情を理解する能力を、感情的知性(Emotional Intelligence)と言います。さらにそれらを理解したうえで、感情を良い方向へ導く能力を感情的伝染(Emotional Contagion)と言います。

優秀な上司はこれらの能力に長け、部下のモチベーションをプラスの方向に変えることができます。部下のモチベーションの上げ方の1つに、部下と同じ視点に立って話をする方法があります。

まず、上司は部下が抱えている問題や感じている不安やストレスを理解し、自分のこととして受け入れることで、目線を部下と同じ方向に合わせます。そして、部下の目線から共に現状を解決するための提案をするのです。例えば、「今はこういう状況で大変だよね。だけど、こんな状況だからこそ、乗り越えたときには、今よりももっともっと成長できているはずだから、それを目指して頑張ろうよ!」など。

チームが逆境に立たされた時、部下と同じ目線に立ってリードしてあげることができれば、チームの意識を達成すべき目的に集中させ、ポジティブで活力のある姿へと導くことができるはずです。

2. テレワークルールの確立

上司はテレワークのルールを明確にし、チームに守らせる責任があります。具体的には、チームのコミュニケーション手段、頻度、タイミングなどを決めてルール化し、全員が守れるようにサポートするということです。これにより、テレワークはより効率的なものになります。例えば、下記のルールを策定すると良いでしょう

【チェックポイント】
  • 毎日の朝礼は朝9時に、GoogleハングアウトにてWeb会議を行う
  • 就業時間中に連絡するのに最適な方法と時間をチームメンバー全員で共有する
     ※可能なら、定期連絡の時間と手法もルール化する
  • 緊急の場合はSlackやインスタントメッセージ、電話などを使用する
  • 会議などで連絡を受けられない時間帯があればチェックインのときに伝える
  • 連絡を受けられない時の伝言方法も決めておく
     ※例えばメールに残す、タスク管理ツール(Backlogなど)を活用するなど。

上司はチームメンバー間のコミュニケーションを(適切な範囲で)監視、監督しましょう。どのような情報を共有し、どのようにコミュニケーションを取っているか、的確に把握し、必要に応じてサポートしましょう

例えば、伝え方に誤りがある場合や、誰かを攻撃している場合などは、捕捉したり、仲裁に入ったりしましょう。チームメンバー全員がテレワークのコミュニケーションに慣れるまでは、積極的にサポートに時間を割きましょう

3. 毎日チェックインしよう!

ホテルや旅館に泊まる時、最初にやることは何かと聞かれれば、ほぼ全ての人が「チェックイン」だと答えるでしょう。ではそもそもチェックインとはなんでしょうか。簡単に言えば、『その場にいることを宣言している状態』と言いえます。

テレワークで成功しているチームの上司は、業務フローや、チームのテレワークルールの一部として「毎日のチェックイン」を行っています。チェックインとは「私は今、業務をしている状態です」と上司やチームメンバーに宣言をするというものです。これにより、上司と部下、チームメンバー全員がコミュニケーションを取りやすい状態を作ることができます。

具体的には、業務を開始するときに、電話やWeb会議、チャットや専用ソフトなどを使ってコミュニケーションを取ります。その中で、業務の進捗状況を把握するだけでなく、体調管理や、困っていることがないかなどの確認も行いましょう。

1つのチームにおいて、メンバーそれぞれ独立した業務を遂行している場合、基本的には1対1のチェックインを行うべきです。一方、チームメンバー間の業務内容が連携している場合はチーム全体でのチェックインを実施するとより効果的でしょう。

重要なのは、チェックインを毎営業日の決められた時間に行うということです。内容も、上司からの指示や確認だけでなく、部下からの質問や相談ができる機会も用意しましょう。「チェックイン」を部下にとってもメリットがあるものにしましょう

4. 状況に合わせてコミュニケーション方法を変えよう

テレワークでは、対面でのコミュニケーションが取りづらくなります。するとコミュニケーションの手段はどうしても、メールに頼りがちになってしまいますが、メールだけでは不十分です。テレワークにおいて、部下がより成果を発揮するためには、対面に近い感覚のコミュニケーションツールを利用するべきです。

Web会議システムなどは、特に少人数での利用において、多くのメリットがあります。例えば、コミュニケーションを取っている相手の表情や仕草などの視覚的な情報を得ることで、お互いへの理解や思いやりが高まり、先述したとおり対面に近い状態でコミュニケーションを取ることができます

また、定期的にチーム全体でのWeb会議を行えば、孤立感も減少できます。「Web会議システム」は、「書面」や「音声」のみのコミュニケーションに比べて、対面でのコミュニケーションに近い感覚をあたえるため、複雑な会話やデリケートな内容の相談にも有効に活用できるでしょう。

一方、急な業務指示や情報の伝達速度が重要な状況では、もっと簡単でシンプルなツールが適しています。例えば、緊急のクレーム対応や提供サービスのシステムエラーに対する緊急作業での連絡などです。このような状況では、スマートフォンのアプリ化に対応しているチャットサービス(Slack、Chatwork、Facebook Messengerなど)の活用が好ましいでしょう。

テレワークの業務効率化に最適なツールが会社に導入されていない場合は、まずは無料版から試してみるのも良いでしょう。全社での導入にはどうしても時間がかかるものです。部署単位、チーム単位からの導入でも十分に効果は出ます。
もちろん、それらのツールが会社のセキュリティー・ポリシーを満たしているかどうかは情報システム部門に確認する必要があると思います。まずは、社内でどのようなコミュニケーションツールが不足しているのか、整理してみると良いでしょう。

5. 最大限にツールを活用する!

上司はできるだけ早く、テレワークでのコミュニケーションや業務管理に利用するツールを明確にする必要があります。理想的にはテレワークが始まる数週間前ですが、すでに始まってしまっているのであれば、明日にでも明確にするべきです。

ここで重要なのは、すべてのチームメンバーが同じレベルでそのツールを扱うことができるということです。全員が使いやすいと感じるツールを用意できればそれに越したことはありませんが、一人でも明らかに使いこなせない人がいる場合は、より簡単なツールへの変更を検討するべきでしょう。

仕事環境や能力の差によって、一部の人が使いづらく感じるのであれば、いっそうのこと、そのツールを使うのはやめたほうがいいかもしれません。こういったツールは業務の効率化と同時にコミュニケーションをスムーズにするためのものです。この差によって、コミュニケーショントラブルに発展してしまっては、意味がありません

また、チームがテレワークに慣れていない場合、状況に合わせてルールやツールの変更を行っていく必要があるでしょう。毎日決められた時間にチェックインをしていれば、情報の吸い上げや、共有の場としても有効に活用できます。

6. 業務にとらわれないコミュニケーション

理想的なチームとはどのようなチームでしょうか?「チームが掲げるOKRやKGIを達成するために、皆が一丸となって目標を達成していく」そんなチームを想像されるのではないでしょうか。

優秀な上司であれば、チームメンバーの力のベクトルを1つの目的に向かわせ、成果を出させるためには、業務上のやりとりをするだけではだめだということを知っています。また同時に1つのチームにおいて上司と部下だけが円滑なコミュニケーションを取っていてもだめなのです。優秀な上司は、上司と部下だけでなく、部下同士も円滑なコミュニケーションを取って初めて組織はまとまりを持つことを知っていて、それをサポートしています。

上司は、すべての部下に「このチームと会社の一員であることを嬉しく思っている」という心理的状況を作り出してあげる必要があります。人がそのチームや団体に所属しているという気持ちを作る上で重要になってくるのが「相互作用」です。

誰もが「指示を受けるだけ」の状況や、反対に「発信するだけ」の状態では、チームとしての一体感を創り上げることはできません。つまり、チームメンバーが互いに意見を述べ、それに対する回答をもらい、お互いの意見を組み合わせて新たな答えを創り上げる。この一連の流れを作ることが、上司に求められます。しかし、このような相互関係を業務の中で創り上げることは非常に難しいでしょう。なぜなら、普段の指示命令の方向から抜け出せなかったり、スキルの差、経験値の差があるため、均等な「相互作用」を創り出すこときわめて難しいからです。

では、どうすればよいのでしょうか?
ここで重要になってくるのはそのトピックを「業務に関係ないことに限定する」ということです。目的やルールから説明したので難しく思えるかもしれませんが、やること自体はそれほど難しくありません。

例えば、会社に出社している状況を思い浮かべてください。お昼になってチームでランチに行くとします。「今日どこに行く?」とあなたがみんなに問いかけ、いろいろな意見が出る中で、目的地が決まります。こんな感じでテレワークにおいても同じ状況を作るだけでいいのです。

やることは自体はさほど難しくないのですが、上司の役割のなかで最も重要なことの1つです。

例えば、チームでのチェックインのときに、オンライン飲み会や、オンライン映画鑑賞会、オンラインゲーム大会などを提案するのもいいでしょう。また、こういうイベントは、提案後すぐに実行に移さないと、逆にモチベーションが下がってしまう可能性があります。できるかぎり、提案した週の中でみんなが空いているタイミングで実施してみましょう。

【業務にとらわれないチーム作り】
  • みんなで、簡単に行えるもの
  • なるべくお金がかからないもの
  • すぐに実行できるもの(※1)
  • みんなが楽しめるもの
  • なるべく全員で話し合って決める
  • 日程、開始時間、終了時間を明確にする(※2)

※1 提案から実行までにあまり時間を空けない。できれば提案した週に実施

※2 ダラダラと長くなってしまうと、2回目移行の参加者が減ってしまう可能性がある。ちょっと物足りないなと感じる程度、1~2時間程度が好ましい

これらのイベントは、少し大げさだったり、半ば強引に行うことも重要です。参加してみたら案外楽しかったという感想も多く聞きます。テレワークの経験豊富な上司やチームは、こうしたオンラインでのイベントが孤立感を減らし、チームや会社に対するエンゲージメントの向上に役立っていると語ります。

特に突然オフィスワークからテレワークに変わったばかりの従業員には、こういったイベントがそのまま「安心感」になる繋がる場合が多いでしょう。テレワークでの働き方が長期化することも視野に入れて考えると、こういったイベントを定期的に行っていける関係を構築していく必要もあるでしょう。

最後に

すべての企業、従業員が、慣れない「テレワーク」に苦戦しています。しかしこの状況に順応し、より良い働き方を創造することができれば、私たちの働き方や仕事に対する価値観、生産性や業務効率は劇的に変化するでしょう。

このコンテンツが、皆さまの「テレワーク」改善のお役に立てれば幸いです。

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