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エンゲージメント

インクルージョンをわかりやすく解説!ダイバーシティとの違いや事例も紹介

公開日:2022.10.7

働き方や生き方の価値観が多様化する昨今、企業にも適応する能力が必要です。
多様な価値観を認め合い、従業員の満足度を高める、優秀な人材を確保するために必要な考え方が「インクルージョン」です。
インクルージョンとはどのような考え方なのか、インクルージョンを取り入れるメリットを解説します。
よく混同される「ダイバーシティ」との違いも解説します。
企業のあり方、組織の改革を考える必要がある企業はぜひチェックしてください。

インクルージョンとは

インクルージョンは言い換えれば「社会的包摂」のことで、多様な価値観、考え方、個性を互いに認め合い、一体感のある組織の状態を意味します。
ビジネスシーンにおいては企業を動かす従業員全員の能力、個性、特性を活かし、それぞれの考え方を認め合いながら働ける状態です。
従業員が働きやすい、居心地がいい、この会社でなら自分らしく働けると思ってもらえる考え方を取り入れることで、組織をより良い状態に導けます。

インクルージョンの語源

インクルージョンの語源は「包括、包含」を意味する英単語です。
ビジネスシーンにおいてはその対象は人であり、企業の組織を構成する従業員や役員、経営陣を指します。
従業員や役員、経営陣とひとまとめにしてしまうのは簡単ですが、その中にはさまざまな違いを持つ人がいます。
性別や年齢はもちろん、国籍、宗教、障害の有無、性的指向などは人によってさまざまで、一人として全く同じ価値観を持つ人はいません。
個人の経験として身近にはなかった価値観を「普通ではない、一般的ではない考え方」として排除するのではなく、お互いに違うことを認め合い、その上で一緒に組織を構成していくことがインクルージョンの目的です。

教育現場におけるインクルージョン

インクルージョンはもともと、薬物・アルコールなどに依存した過去がある人や児童養護施設の子供たち、失業者など、社会の枠組みに対してハードルを抱えている人々を支える動きから生まれた考え方です。
1980年代ごろからアメリカを中心にそういった考え方が教育現場にも広まり、統合教育の次に浸透しました。現在の日本でも「インクルーシブ教育」として取り入れられています。
学校でいじめられている子どもや家庭環境が悪い子ども、充分な教育を受けられていない子ども、障害を持つ子どもを他の子どもと区別して「機会が与えられない」、または分断されるようなことが起きないよう、他の生徒と同じような学習環境を実現するなどが具体例です。

インクルージョンが重要視される背景

インクルージョンはアメリカでは2000年代ごろからビジネスシーンに取り入れられるようになり、日本にも徐々にその考え方が浸透し始めました。
現代はデジタル化、情報化が急速に進み、消費者は国内外のありとあらゆる選択肢の中から求める商品やサービスを選べるようになりました。情報社会の拡大に伴い人々の価値観も多様化し、また人々が自分の意見を自由に発信できる場も広がりました。それにより、意見の異なる他人を排除せずに互いを認め合うことの重要性がより広く訴えられるようになりました。
また、商品やサービスの競争も激化しており、特定のターゲットだけを意識した企画、開発では時代に取り残されてしまう可能性があります。
多くの人が手に取りやすい、選びやすい商品やサービスを開発することがこれからのビジネスにおける重要なポイントとなるでしょう。

ダイバーシティとは?インクルージョンとの違い

ダイバーシティはインクルージョンとともに語られることが多い言葉です。よりも知名度が高く、ビジネスシーンだけでなく多くの場所で用いられています。
多様な価値観を持つ人が組織の中にいる状態を指します。
ダイバーシティとインクルージョンは混同されることも多いですが、双方の違いを明確に理解しておく必要があります。
ダイバーシティは多様な価値観を持つ個人が組織に属している状態です。
インクルージョンは多様な価値観を持つ個人がお互いを認め合い、尊重しあって組織に属している状態です。
ダイバーシティをより発展させた考え方がインクルージョンです。

ダイバーシティの中でインクルージョンが推進された?

ダイバーシティ、多様性といった言葉が先行する中で、それだけではいけないと推進され始めたのがインクルージョンです。
「障害者を積極的に雇用しています」「女性の採用率を高めています」「LGBTを支援します」と掲げる企業は多いですが、内容が伴っていない例も少なくありません。
障害者を雇用してもそれぞれの能力を無視した業務を与えていては企業にも被雇用者にもメリットがありません。
多様な人材を組織に含めることは確かにダイバーシティではありますが、インクルージョンを考えるのであればさらに多様な人材がそれぞれの個性を活かして輝ける場所を作る努力もしなければなりません。
ダイバーシティの考えを理解した上でインクルージョンを取り入れていく、ダイバーシティ&インクルージョンの姿勢が大切です。

インクルージョンの考え方が組織にもたらすメリット

企業がインクルージョンの考え方を取り入れることで得られるメリットはたくさんあります。
それによって従業員の満足度が高まれば、離職率の低下を防げるだけでなく生産性の向上も期待できます。
多様な価値観を持つ優秀な人材を採用しやすくなるメリットもあります。
さらに、商品やサービスの開発、業務内容や組織の人間関係の改善にも役立ちます。
具体的な効果は以下の通りです。

従業員のモチベーションやエンゲージメントの向上

インクルージョンを導入すると従業員同士がお互いの価値観、特性、個性を認め合い、尊重しあいながら業務に勤しめるようになります。
自分らしく働ける、他者と良い関係を築けることは、モチベーションやエンゲージメントの向上につながります。
部署やチームごとに適した人材を配置すればより働きやすく、満足度を高められます。
業務内容に不満はなくても人間関係に問題があって離職してしまう人材もいますが、組織内での居心地がいいと感じれば離職率も下げられます。
このチームのため、この企業のためにがんばろうと思えて、個人の生産性がアップすれば、チーム、組織、そして企業の成長にも繋げられます。

採用活動への影響

インクルージョンは採用活動にも大きな影響をもたらします。
労働人口の減少により、人材獲得の競争は激化しています。
働き方に多様性はあるか/個人の個性や能力を尊重してくれるか/などを重視して企業を選ぶ人材も多いです。
だからこそ、ただアピールするだけではなく、実際にどのような取り組みを行っているかを明確に実績として提示する必要性もあります。
競合他社がインクルージョンを推進しているのに自社で遅れを取っていると、優秀な人材は競合他社に流れてしまう可能性もあります。
また、経済産業省からは「ダイバーシティ経営」が推進されています。
ダイバーシティの考えを取り入れている企業を選出して発表する「新・ダイバーシティ経営企業100選/100選プライム」などの企画もあり、企業のイメージアップにもつながります。
経済産業省のホームページからは、企業の現状を把握するためのダイバーシティ経営診断ツールもダウンロードできます。
※参考:経済産業省HP
https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/diversity/index.html

組織内でイノベーションが起こりやすくなる

インクルージョンは組織内のイノベーションにも良い影響があります。
多様な価値観を認め合い、従業員全員が自分らしく働けるようになれば、積極的に発言したり、意見を交換しあったりもしやすくなります。
その結果、業務内容が改善したり、新しい企画が生まれたり、新事業を立ち上げるきっかけになったりします。
情報化、デジタル化が進む現代では、現状維持の思考では維持すらもできない可能性があります。
イノベーションが起きる機会が多ければ多いほど、企業の維持だけでなく成長が期待できます。

インクルージョンを社内に導入する際の注意点


インクルージョンを社内に導入する前に確認しておきたい注意点を解説します。
多様性を認め合うことは簡単ではなく、慎重に進める必要があります。
無計画にインクルージョンを導入しようとすると、かえって従業員からの反発を買うこともあるため、事前に注意点を確認しておきましょう。

目標設定は具体的に

インクルージョンを行う上で目標の設定は重要です。
目標があいまいなままでは従業員がどのように行動すればいいかわからず、経営陣も次の行動に移りにくいです。
考え方を共有するのにも余計な時間がかかってしまい、かえって組織内部の統率が取れなくなる可能性もあります。
ただ多様な価値観を認め合うというだけでは認識しにくいため、具体的に社内がどのような状態になることを目指すのかを説明できるまで具体的な目標を考えましょう。

数字だけを追いかけない

インクルージョンの導入にあたり明確な目標を設定することは大切ですが、数字の目標ばかりを追いかけないよう注意しなければなりません。
女性の雇用率を〇%高めるといった目標を設定した場合、社内で女性が働きやすい環境が整っていなければすぐに離職されてしまう可能性もあります。
大切なのは数字の達成率ではなく、その後従業員が満足して働ける環境を提供できるかどうかです。
具体的な数字を実現する前にしなければならないことも充分考慮しましょう。

内部での反発も予想する

経営年数が長い企業ほど、新しいことを受け入れられない従業員も多くなります。
女性や外国人、障害者を積極的に雇用することに抵抗を感じる従業員も出てくるかもしれません。
この場合、むやみに同意したり否定したりするのではなく、なぜこれまでと違う考えを導入する必要があるのかを丁寧に説明しなければなりません。
それぞれの個性を尊重することでより業務が改善する、企業の成長に役立つことを理解してもらいましょう。
なぜこれまでと違う考えを受け入れられないのか、理由をヒアリングすることで見えてくる改善方法もあります。

制度、ルールを明確にする

組織内の制度やルールを新しく作る場合は明確な基準も用意しましょう。
インクルージョンの導入は一時的なものではなく、今後長く続けていかなければなりません。
女性の雇用率を高める場合、産休や育休の制度が充分に整っていないと今後を懸念した女性から応募してもらえなくなります。
採用したとしても、不満を感じて離職されてしまいます。
最初から女性も活躍できる制度、ルールが整っていれば、女性も自身の個性を発揮した上で企業に貢献してくれます。
例として女性の雇用を解説しましたが、外国人や障害者など、これまでとは違う人材を雇用する場合にはいずれの場合も大切な考え方です。

即効性を期待しすぎない

インクルージョンは導入してすぐに効果が出るものではありません。
人のこれまでの考え方を変えるには長い時間が必要です。
少しずつの日々の積み重ねが数年後に大きな結果となって返ってきます。
改善を感じられないからといってすぐに取りやめてしまわないようにしましょう。
定期的に組織診断を行い、従業員の満足度やストレスチェックを繰り返すことで改善点や目標数値の変更もしやすくなります。
むやみに焦って達成が難しい数値を掲げないようにしてください。

導入時には丁寧な研修を

上記に上げたような理由から、インクルージョンの推進には中長期的な目線が重要です。
言葉の意味を知ってもらうだけでなく、誰もが気づかないうちに他人の価値観を侵害していたり、先入観による偏見を持っていたりすることなどに気づいてもらう必要があります。

そのために、複数回にわたる研修カリキュラム(座学・ロールプレイ含む)を実行することなどが1つの手段として挙げられます。

まとめると、インクルージョン導入のメリット・デメリット(注意点)は以下のようになります。

メリット デメリット(注意点)
・従業員のモチベーションやエンゲージメントの向上
・個人が尊重されることで定着率が上がる
・組織内でのイノベーションが起こりやすくなる
・具体的な目標がないと施策が曖昧になりがち
・数字で結果を追うのが難しい
・浸透には時間がかかる場合がある

インクルージョン施策を行っている企業事例

インクルージョンを導入した企業の事例を紹介します。
具体的に何を行い、その結果どのような効果が得られたのかを確認しましょう。
今後企業をどのように成長させたいのかを明確にすれば、目標も設定しやすくなります。

女性のキャリアを支援する日本IBM

日本IBMは女性のキャリア支援に力を入れています。
Japan Women’s Council(JWC)は日本IBMの独自の活動で、国内外でも高く評価されています。
女性は出産や育児でキャリアを諦めなければならないケースも少なくありません。
ですが、性別を理由に優秀な人材を離職させてしまうことは、企業にとっても大きな損失です。
日本IBMでは在宅勤務制度だけでなくコアタイムなしのフレックスタイム制度、時間短縮勤務制度、メンターの導入を行っています。
さらに社内に保育所を開設し、育児をしながらでも充分にキャリアを形成できる環境を目指しています。
女性の管理職の育成にも力を入れており、定期的に女性向けの研修、ワークショップも開催しています。

インクルージョン部署を設けた日立製作所

日立製作所はダイバーシティ&インクルージョンの専門の部署があります。
ダイバーシティ&インクルージョンの経営方針を決める、活動内容を決定するなどを行っています。
全国に支社がありますが、各事務所での課題も随時確認し、新しいルールの導入にも努めています。
ジェンダーに関するイベントを開催するなど、現在も積極的にあらゆる立場の人が活躍できる社会を目指した活動を行っています。

年齢、勤続年数を考慮しないサイバーエージェント

サイバーエージェントでは、年齢や勤続年数をキャリアに考慮しない人事を行っています。
日本では年功序列の風潮が強い企業もいまだに数多くあり、長く働けば役職につけると考える人も少なくありません。
ですが、サイバーエージェントでは個人の強み、特性、実績などだけを考慮して、若くても子会社の社長、執行役員になるチャンスがあります。
自分自身にどのような強みがあるのかを把握するための研修を行ったり、組織を成長させたりする取り組みも欠かさず行っています。
サイバーエージェントでは年齢や勤続年数に固執するのではなく、従業員一人ひとりの個性を伸ばすことで組織、企業の成長を期待しています。

組織の成長にインクルージョンを取り入れよう

組織を成長させるために大切なインクルージョンを基礎から解説しました。
性別、年齢、国籍などに囚われず、個人の特性、個性を認め合える組織を目指すことがインクルージョンです。
ビジネスシーンにおいては、自分の個性を活かして働ける、自分らしくいられる居場所で働けることは従業員にとって大きな魅力です。
それによって離職率の低下、モチベーションや生産性の向上などの効果が期待できます。
はやっているから、インクルージョンを取り入れないと人材を確保できないからと上辺の理由だけで取り入れるのではなく、インクルージョンを導入することのメリット、重要性を正しく把握した上で導入しましょう。

FAQ

インクルージョンについてのよくある質問を紹介しています。

インクルージョンとはどういう意味ですか?
インクルージョンは言い換えれば「社会的包摂」のことで、多様な価値観、考え方、個性を互いに認め合い、一体感のある組織の状態を意味します。 ビジネスシーンにおいては企業を動かす従業員全員の能力、個性、特性を活かし、それぞれの考え方を認め合いながら働ける状態です。
ダイバーシティとインクルージョンの違いは何ですか?
ダイバーシティとインクルージョンは混同されることも多いですが、双方の違いを明確に理解しておく必要があります。 ダイバーシティは多様な価値観を持つ個人が組織に属している状態です。 インクルージョンは多様な価値観を持つ個人がお互いを認め合い、尊重しあって組織に属している状態です。ダイバーシティの考えを理解した上でインクルージョンを取り入れていく、ダイバーシティ&インクルージョンの姿勢が大切です。
インクルージョンのメリットは何ですか?
インクルージョンは組織内のイノベーションにも良い影響があります。 多様な価値観を認め合い、従業員全員が自分らしく働けるようになれば、積極的に発言したり、意見を交換しあったりもしやすくなります。 その結果、業務内容が改善したり、新しい企画が生まれたり、新事業を立ち上げるきっかけになったりします。

この記事を書いた人

M.F

株式会社アックスコンサルティング マーケティング本部 WEB制作課所属。
『HR BLOG』にて一般企業の経営者・人事担当者向けの記事を執筆するほか、主にメールマガジンで士業事務所の経営課題を解決するための情報配信を行っています。

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