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給与制度・設計

会社の運命を左右する従業員の給与の決め方

公開日:2018.10.30

    会社の資金繰りで悩ましいのが、毎月支払いが発生する「固定費」。そのうちの大部分を占めるのが「給与」です。
    従業員への給与支払いがかさんで、経営難の原因に…、といった状況に陥ることのないように、日頃から適切な給与設定をしておきたいものです。会社に安定をもたらす“無理のない給与の決め方”のコツや、その重要性について考えていきましょう。

    「給与=固定費」と考えて経営の舵取りを

    会社経営において、もっとも大きな経費となるのが仕入れ費用、その次に大きいのが人件費、すなわち従業員に支払う給与だという会社は多いでしょう。従業員の給与は、利益の多い少ないに関わらず、毎月一定の金額が必要となりますので固定費として考えます。

    「従業員への給与が高過ぎる」というのは、つぶれてしまう会社、つぶれかけている会社に共通するポイントです。高い給料を得られたとしても、会社の業績を度外視した給与設定が原因で会社がつぶれてしまうのであれば、結果的に従業員たちが不幸になります。

    意外に思われるかもしれませんが、給与の高さや昇給は、会社の利益や従業員のモチベーションアップにはつながらないことが知られています。転職を考えたくなるほど水準が低過ぎるようでは考えものですが、固定費でもある給与は抑え目に設定し、利益分は賞与として従業員に還元するほうが、経営の舵取りがしやすいでしょう。

    給与の支払いは、いうまでもなく会社が積み上げた利益がベースとなっています。総支払額が、利益を上回るようなことがあってはいけません。会社設立直後などは、従業員の給与を安定支給するために、経営者、役員の報酬を最低限度に抑えることも必要です。

    経営者、役員の報酬を抑えても、従業員に給与が支払えない状況であれば、いよいよ給与の引き下げに着手しなければなりません。従業員の解雇を検討せざるを得なくなる可能性もあるでしょう。しかし、給与の引き下げや従業員の解雇は、容易に決断できるものではありません。そのような状態にならないためにも、最初の段階から「多すぎず少なすぎず」を見極めた適正な給与設定を行わなければなりません。

    なぜ給与ルールの制定が必要なのか?

    なぜ給与ルールの制定が必要なのか?

    給与設定に失敗している会社には、昇給・減給に関するルールがない、業界平均や世間の相場に合わせてなんとなく給与額を決めている、転職希望者を引きとめるために給与アップを提示しがち、従業員から要請がなければ昇給はしない、といった共通点があります。

    ルールや明確な基準がないなかで給与を決めていると、不公平感が浮上してきます。昇給のルールや、報酬の目安などを事前に定め、明文化しておくことによって従業員から不満が出ないようにしておきましょう。そうしたルールづくりが経営の安定化につながります。

    給与や報酬に関するルールの整備は、人材を確保し、退職による流出を抑える上でも重要です。不公平感が蔓延したり、「頑張っても何も変わらない」といった感覚が広まると、能力のある従業員は会社を離れ、あとに残るのは向上心のない従業員ばかりになりかねません。

    従業員を長期的に会社につなぎとめるためには、定年まで勤め上げた場合の退職金を高く設定し、自己都合で退職する場合の退職金を低めに設定するといったルール作りも考えられます。

    従来は、目標達成度や会社への貢献度をチェックして昇給額を決めるのが普通でしたが、逆転の発想でルール作りをしている会社もあります。それは“まず給与額を引き上げ、その上で目標に取り組ませる”というやり方です。本来なら目標達成後に支払うはずの給与額を、先払いしていくようなイメージです。

    このやり方を採用すると、責任感のある従業員であれば「給与に見合った結果を出そう」と、高いモチベーションで仕事に挑むようになります。また、経営者側も「先行投資しているからには結果を出してほしい」という意識が芽生え、従業員をサポートする体制に力が入ることになるのです。こうした展開が、業績アップにつながるでしょう。

    給与ルールづくりにおける3つの注意点とヒント

    なぜ給与給与ルールづくりにおける3つの注意点とヒント

    ルール作りの初期段階では、1.社会保障の会社負担分、2.残業代、3.有給休暇分の支払い、の3つの注意が必要です。

    ご存じの通り、社会保険費は会社側と従業員が折半で収めます。この点を見落として給与設定してしまうと、経営者は後で負担に苦しむことになってしまいます。

    昇給時期を7月にしておくことも、社会保険費を抑えるために有効です。社会保険費は、4~6月の平均給与をベースに算出され、その後も算出基準から2等級以上あがらなければ改訂届を出さずに済みます。それゆえに、7月昇給にしておくことで、会社と従業員が折半で支払う社会保険費を低く抑えることができるのです。

    従業員が「残業をしない」「有給休暇を使わない」という前提での給与設定も危険です。繁忙期には残業が必要となるかもしれませんし、有給休暇についても当然ながら給与が発生します。その分の支払いが生じることを想定し、余裕を持った給与設定をしておくことが大切です。

    また、給与の支払いをコントロールすることで生じた余剰利益は、賞与として従業員に分配するほかに、退職金として積み立てていくのも有効です。退職金を対象にした、退職所得控除という税制により節税効果が生まれ、受け取り手となる従業員にメリットがもたらされます。

    ほかにも、役員報酬を毎月定額で計上することも、経営上の節約となります。毎月の支払額が違うと、最低月の金額を超えて支払われた差額分を経費に計上できないことが法人税法で定められているためです。役員への賞与も、経費として認められませんので、利益調整として使うには不向きです。毎月の定額分に割り込んで支払うほうがメリットがあるでしょう。
    文章

    まとめ

    給与について考える上では、会社が得た利益をすべて支給してしまわないように、経営者側のコントロールが不可欠です。ルールの範囲内で支払いや昇給を行い、余剰金を会社や従業員の未来に投資できるような会社経営をしていくのが最も望ましいといえます。

    この記事を書いた人

    HR BLOG編集部

    このブログでは、「経営者と役員とともに社会を『HAPPY』にする」 をテーマに、HR領域の情報を発信しています。

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