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労務110番

休職中でも産休取得の申請が出来る場合があります  ~傷病手当金と出産手当金~

公開日:2019.3.12

    私傷病休職中の女性従業員が「妊娠したため、産前産後休業(以下、産休)を取得したい」と申し出てきました。私傷病休職中でも、産休に切り替える必要があるのでしょうか? また、現在、当該従業員は傷病手当金を受給中です。傷病手当金と出産手当金はどちらが優先されますか?

    【結論】産休の申出があった場合は、産休に切り替える必要があります。

    また、傷病手当金と出産手当金の併給はできません。傷病手当金よりも出産手当金が優先して支給されるため、産前6週間に達した時点で出産手当金の申請に切り替えましょう。

    休職中でも産休の取得は可能

    産休は、出産予定日の6週間前(双子以上を妊娠している場合は14週間前)から請求できる『産前休業』と、出産の翌日から8週間までの就業を禁止する『産後休業』があります。労働基準法65条と労働基準法コンメンタールにおいて、『産前休業を申し出てきた場合』と『請求の有無を問わず、産後8週間経過しない場合(※1)』は就業させてはならないと定められています。

    なお、産前休業の請求に関しては『就労していることが前提要件とはならない法意である』と解されています(昭25・6・16基収1526号)。つまり、休職期間中でも産休の取得(休職から産休への切り替え)は可能なのです。

    なお、産前休業については、請求がなければ私傷病休業扱いのままで問題ありませんが、請求があった場合は産前休業に切り替える必要があります。また、仮に産前休業の請求がなかったとしても、出産の翌日からは“請求の有無に関係なく”産後休業に移行しなければなりません。

    参考:有期契約労働者の育児休業は可能か?



    出産手当金を受給中は傷病手当金の支給はナシ

    出産手当金は、産前6週間(双子以上を妊娠している場合は14週間)~出産後8週間までの労務に服さなかった期間』について権利が生じます(健康保険法102条)。

    出産手当金と傷病手当金の“1日当たりの支給額”はどちらも『支給開始日(※2)の直近12ヵ月間の標準報酬月額を平均した額÷30日×3分の2』で算出されます。

    なお、出産手当金を支給する場合、その期間の傷病手当金は支給されません(健康保険法103条)。ただし、傷病手当金と出産手当金の支給開始月が異なれば、同額とならないこともあるでしょう。そのため、出産手当金の額が傷病手当金の額より少ないときは、その差額が支給されます(健康保険法103条)。

    なお、傷病手当金の支給期間の上限は『支給開始日から起算して1年6ヵ月』です(健康保険法99条)。傷病手当金受給中に出産手当金の受給期間があったとしても、期間は延長されません。

    また、産休中は被保険者・事業主ともに健康保険・厚生年金保険の保険料が免除されます。従業員から産休取得の申出を受けたら、産休期間中に日本年金機構へ必要書類を提出するようにしましょう。


    ※1 『ただし、産後6週間を経過した女性が請求した場合において、その者について医師が支障がないと認めた業務に就かせることは、差し支えない』と定められています(労働基準法第65条の2)。
    ※2 最初に出産手当金または傷病手当金が支給された日。

    この記事を書いた人

    HR BLOG編集部

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