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労務110番

仕事帰りに“期日前投票を徹底”はNG?

公開日:2019.5.31

    選挙の際には必ず投票に行くよう社員に呼びかけていますが、「選挙の日は日曜日のため、遊びに出かけていて行く時間がない」と言い訳し、なかなか選挙に行かない社員もいます。そこで選挙への参加を徹底させるために、就業時間後に期日前投票に行くよう指示してはどうかと考えています。このような形で労働者を拘束することはできるのでしょうか?

    【結論】

    選挙権などの“公民権の行使”は労働時間内に行えるものであり、労働時間外にその実施を指令することはできません。

    『公民権の行使』とは?

    法律では、労働者に『公民権の行使』を保障している(労基法第7条)ため、労働者が就業している時間内に「選挙権その他公民としての権利を行使し、または公の職務を執行するために必要な時間を請求した場合」には、使用者はこれを拒否することはできません。

    『公民権の行使』とは、国家または地方公共団体の公務に参加する権利のことをいいます。具体的には、首長・議員等の選挙権及び被選挙権のほか、特別法に基づく住民投票等も含まれます。
    また、裁判の訴権については、労働者が個人的に争っている民事訴訟は公民権に含まれませんが、行政事件訴訟法上の民衆訴訟や、公職選挙法に規定されている選挙人名簿や当選に関する訴訟については『公民権の行使』に該当するとされています(昭63・3・14基発150号)。

    『公の職務』とは、国会議員や地方公共団体の議員のほか、労働委員会の委員や労働審判員の職務が該当し、選挙においては選挙立会人の職務等が該当します。民事訴訟や刑事訴訟も含めた裁判における証人や、2009年から導入された裁判員制度の裁判員も『公の職務』に当たります。
    一方、『単に労務の提供を主たる目的とする職務』は同条の公の職務ではないとされており、たとえば予備自衛官が訓練招集に応じる場合などが挙げられています(前掲通達、平17・9・30基発0930006号)。

    就業時間中の『公民権の行使』の請求拒否は違法

    『公民権の行使』のために労働者が職場を離脱する場合、有給にするか無給にするかは労使間で自由に定められるとしています(昭23・11・27基発399号)。
    ただし、労基法7条は公民権の行使を“労働時間内”に行うことを規定したものであり、『公民権の行使』または『公の職務』の執行に妨げがない限り時間の変更は可能であっても、終業後の労働時間外にその実施を指令し、就業時間中の請求を拒否することは違法とされています(昭23・10・30基発1575号)。

    もっとも選挙は休日に当たる人が多い日曜日に行われることが常であり、当日に投票することを希望している人もいることが考えられます。そのような人にまで期日前投票を強いることは無理でしょう。
    また、使用者が労働者を職場から投票に行かせた際に「誰に投票したか」を聴き取ったり、特定の候補への投票を促したりするような行為は、内心の自由を保証する憲法19条や秘密選挙を規定する公職選挙法52条等に違反する恐れがあるため注意しましょう。

    この記事を書いた人

    HR BLOG編集部

    このブログでは、「経営者と役員とともに社会を『HAPPY』にする」 をテーマに、HR領域の情報を発信しています。

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