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労務110番

改正入管法施行! 外国人労働者を迎える際の注意点

公開日:2019.7.12

    2019年4月1日から、一部が改正された出入国管理及び難民認定法、通称『改正入管法』が施行されました。
    これにより、外国人の労働者や技能実習生を受け入れる企業の増加が予想されます。
    その一方で、外国人労働者を取り巻く過酷な実態も、しばしば報道されるようになってきています。
    人手不足がいっそう深刻化するなか、もし自社で外国人労働者に働いてもらうことになった場合、企業として気を付けておくべきポイントをご紹介します。

    浮き彫りになった過酷な労働実態

    改正入管法は、介護や建築などの政府が指定した14の業種において、一定の能力が認められる外国人労働者に対し、新たな在留資格の『特定技能』を付与することが大きな柱となっています。
    具体的な業種は、介護、ビルクリーニング、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業、素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業、建設業、造船舶用工業、自動車整備業、航空業、宿泊業です。
    今回の改正の背景には、今後5年間で最大34万5,000人の外国人労働者の受け入れを見込むという、政府の思惑があります。
    さらに文部科学省では、オリンピックの年までに30万人の留学生の受け入れを目指す、『留学生30万人計画』を立ち上げました。

    これで今後は外国人労働者が増え、人手不足の問題も解決――というわけにはいきません。
    近年、外国人労働者を取り巻く労働実態が報道されるようになり、その劣悪で過酷な労働環境が明るみになってきています。

    2018年12月に発表された法務省の調査結果によれば、2010年から2017年の8年間に、174人もの外国人技能実習生の死亡が確認されました。
    実習中の事故や病気のほか、自殺や原因不明のものも含まれます。
    また、残業代が支払われず長時間労働を強いられたり、最低賃金以下で違法に働かせたりなど、賃金に関するトラブルも相次いでいるといいます。

    改正入管法の新たな在留資格には、現在すでに就労している外国人技能実習生が移行すると想定されています。
    しかし、これらのことを踏まえ、国会では「改正よりもまずは外国人技能実習生の労働環境の改善を図るべきだ」という声も、多くあがっています。

    本来は国際貢献を基盤とした制度

    文そもそも『外国人技能実習制度』の目的とは、日本の国際貢献の一つです。
    開発途上国の人々に日本の技術や技能を実習生として学んでもらい、将来はその技術や技能を持ち帰って、母国の経済発展に寄与できるようにする制度です。
    従来より入管法を根拠法令として実施されてきましたが、2017年、新たに『技能実習法』が施行されました。

    外国人技能実習の期間は最長5年で、通常は日本の企業と雇用契約を結ぶのが原則です。
    したがって、実習生とはいえ、雇用関係が発生します。
    技能実習法には『技能実習は、労働力の需給の調整の手段として行われてはならない』(第3条第2項)と記されており、実習生だからといって、不当に賃金を低くしたり、長時間労働を課したりすることは許されていません。

    実習生の受け入れは企業単独でも行われていますが、一般的なのは、事業協同組合や商工会など、営利を目的としない団体、いわゆる『監理団体』が相手国の『送出(おくりだし)機関』と連携しながら外国人を受け入れ、そこから受け入れ先の各企業にバトンタッチするという方式です。
    日本での労働を希望する外国人は、『送出機関』を経由して入国し、日本語などの必要な知識についての講習を受けた後、各企業で技能実習生として働くことになります。

    求められる、受け入れ前後の配慮

    そんな国際貢献のための制度であるはずの『外国人技能実習制度』ですが、前述の通り、昨今、実習生を違法に働かせる案件が後を絶ちません。
    一方で、労働法を遵守し、実習生と円満な関係を築いている企業や、万が一問題が発覚しても、迅速に適切な対応に努める企業もあります。

    アルミニウム部品などを製造する『ミズノマシナリー』では、20年ほど前から『外国人技能実習制度』を利用しています。
    この会社では長年の経験を活かし、作業者全員の勉強会を定期的に行っています。

    また、建設資材・内装施工の『野原産業』では、2013年からベトナム人実習生の教育をスタート。
    実習生が自国にいるときから、日本語や建設現場での施工技術を教え、来日後にスムーズに実習に取り組めるシステム作りに成功しました。

    2018年12月には、大手衣料品チェーン『しまむら』の下請け企業でミャンマー人技能実習生に対し、最低賃金以下の給与や長時間労働などの違法行為があったことがわかりました。
    『しまむら』は、すぐに、すべての取引先企業に対して、技能実習生への人権侵害がないように通知。
    この迅速な行動は好意的に受け止められました。

    これらの事例からも、外国人技能実習生の受け入れ前、そして受け入れた後にも、企業として可能な限りの十分な配慮と、そのための具体的な施策が大切ということがわかるかと思います。

    法令遵守を徹底した受け入れを

    では、これから外国人技能実習生を受け入れようとしている企業にとって、注意しておきたいポイントはどんなところでしょうか?

    まず、実習生を紹介してもらう『監理団体』『送出機関』が、優良な運営をしているかどうかの確認は必須です。
    次に、実習生の出身国のリサーチ
    労働に対する価値観や、文化的なタブーなどの違いは、できるだけ理解しておきたいものです。

    そして受け入れ後は、労働時間や賃金の遵守労働環境の健全性維持への配慮などはもちろんですが、一人ひとりとのコミュニケーションに努め、悩んでいるようであれば相談に乗り、適切な問題解決に踏み出せるような仕組みも設けておきましょう。
    これは、実習生を受け入れた企業側の責任でもあります

    まとめ

    外国人技能実習生といっても、企業と雇用契約を結んでいる労働者。当たり前の話ですが、労働基準法を遵守し、円滑で良好な関係を築いていきましょう。

    この記事を書いた人

    HR BLOG編集部

    このブログでは、「経営者と役員とともに社会を『HAPPY』にする」 をテーマに、HR領域の情報を発信しています。

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