オンボーディング Onboarding 「新卒社員」や「中途社員」が辞めない仕組みづくり
『オンボーディング』とは、新入社員をスムーズに社内に溶け込ませ、パフォーマンスを上げさせるための一連の仕組みづくりを言います。この冊子ではHR先進国であるアメリカ企業の事例も踏まえ、人材育成のための最新のメソッドを解説。
オンボーディングの具体的な取り組み方をご紹介しています。
オンボーディング
公開日:2020.2.12
お客様の笑顔を応援するために「日本一明るい会社」を目指している株式会社協和(以下、協和)。前編では、社内外問わず意見を出し合う独自の文化『ワイガヤ』についてご紹介しました。同社は、健康や美しさを願う人々のために化粧品や健康食品を豊富なラインナップで提供。その優れた品々は、モンドセレクションでも数々の受賞歴を誇っています。
それらの功績の礎となっているのが、『ワイガヤ』をはじめとした『知恵の協業』という考え方です。社内はもちろん、パートナー企業や取引先、お客様といった社外の方々とも協力・協調・調和を図り、相互発展を目指しているからこそ、多彩な意見に耳を傾ける社内体制が整い、豊富な商品開発、柔軟な事業展開へとつながっているのでしょう。
後編では前編に引き続き、協和の社内制度や取り組みについて、人事・総務・経理 チーム長 小泉宏徳氏とカスタマーコミュニケーションチーム PR担当リーダー 上間秀美氏にお話しいただきました。
目次
私たちの仕事は、お客様に美と健康を提供することです。そして美とは、基本的に健康の上に成り立つもの。ですから弊社社長の堀内は、体の基礎のひとつである筋肉に興味があります。
そこで弊社では2011年から毎朝、全社員揃って『スロトレ(スロートレーニング)』や『フェイトレ(フェイスアップトレーニング)』というオリジナルのエクササイズを行っています。『スロトレ』とは、スクワットや腕立てなどを加えた15分ほどのメニューで、元オリンピック競歩選手兼社員の柳澤哲監修のもと行っています。また『フェイトレ』はたるみやシワ、くすみを改善する顔の体操です。『スロトレ』も『フェイトレ』も、もともとはお客様のためにイベントなどで提案しています。ストレスの軽減や集中力のアップも期待されるので、みんなとても積極的に参加してくれています。
なかには『スロトレ』で腰痛が改善されて、またゴルフができるようになった社員もいるんですよ。反対に「育児の時差通勤で『スロトレ』に参加できなくなったら太ってしまった…」という元社員もいます(笑)。肩こりなどにも効くと社員から好評です。
このオリジナルエクササイズのおかげで、社員一人当たりの医療費の平均が、同業態平均と比べると20%くらい低いという成果も出ています。日々の積み重ねが健康に結びついているのでしょう。もちろん、自分の中で健康や美に対しての意識も高まります。また、実際に身体を動かすことに加えて、社員が集まって同じことをするということにも、意義があると考えています。
協和では、「前向きなこと」「感謝すること」をとても大切にしています。そうした中で生まれた取り組みが、『感謝の木』です。これは数年前に社会的にも多くの企業で流行った取り組みで、お互いに感謝の気持ちをメッセージカードなどで贈り合うというものです。人事部の方なら、ご存知の方も多いのではないでしょうか。
ただ流行っていた当初、それをインセンティブに直結させるのが一般的でしたが、その方法ではあまりやりたいと思わなかったんですよね…。私としては、報酬目当てでやってほしくなかったのと、弊社の文化や社風にはマッチしないのではないかと思ったのです。
そこで、協和らしい方法を考え、メッセージカードをオーナメント(クリスマスツリーの飾り)のように掛けられる木を設置することにしました。そうすると、それが会社のモニュメントになりました。動線に置くことで、業務中に忘れがちな感謝の気持ちを思い出して欲しい。そういったきっかけになることを目的として設置しています。1人が1日1回は「ありがとう」と思って、カードを書くと想定しています。感謝の木がメッセージカードでいっぱいになると、木の下にたまり、2020年末には、4000の感謝の数になる予定です。数が見えるのも社内にいい影響をもたらすと考えています。一つの仕事を終えた時に渡す「ありがとう」の言葉はもちろん、「ごめんなさい」「おめでとう」など、どんなメッセージでもわざとらしくなく、自然に伝えられる仕組みだと思います。
協和の制度やルールはそれほど多くありません。できるだけ自由に、「管理しないことが管理」というスタンスです。人事部から「こうしてください!」と言ってしまうとやらされ感が出てしまいますよね。でもそういうのをなくしていきたい。社員の自発的な言動やコミュニケーションを促していきたいと考えています。そんななか、数少ない制度の一つとして取り入れているのが、『キャリア支援10%ルール』という社員のスキルアップ支援制度です。社長の想いとして、「将来のキャリアのことを考える時間を確保してほしい」。個の成長なくして会社の成長はないとの考えから、あえて時間をとっています。
就業時間の10パーセント、1週間であれば半日にあたる約4時間を、社員が今後のキャリアを考えるための時間として使えるようにしています。使い方はそれぞれですが、自分のキャリアを整理したり、セミナーへの参加や資格の勉強、読書など、各自が自分にとって今必要と思うことに時間を充てています。特にこれからは、人生100年時代といわれています。そうなると、今よりも定年が延びる可能性があり、健康ならば会社で働く年数は今よりも長くなっていくはずです。この制度には、自分がどういうスキルを持つべきか、どうしたら周囲に貢献していけるかを改めて考えてほしいという社長の強い願いが込められています。
また協和では、個としての成長やさらなるスキルアップなどが目的であれば、基本的に副業が可能です。社員が成長して身につけたスキルやノウハウを会社に還元してくれれば、互いにとってもよいことですし、メリハリになるからです。まだ事例は多くないですが、たとえば、社内で記事を執筆している社員が仕事の幅を広げたいと、他のジャンルの記事の仕事をしているケースなどがあります。
こういった社内の制度や文化は、ユニークな制度や文化をつくりたいからという理由でつくったのではありません。「知恵を出し合って常によりよいものづくりを追求する」という会社の風土から自然に生まれました。その結果、商品も会社の制度や文化も、他に真似されない独自のものを生み出してこられたのだと思います。そしてこれからも、社内はもちろん、パートナー企業含めて、協業し、想いを揃えて共に進んでいきたいと思っています。
社員だけでなく周囲も巻き込んでの『ワイガヤ』や、毎朝みんなで行う『スロトレ』『フェイトレ』など、一緒に考え行動することを大切に考えている協和。そういった風土から、互いに助け合い、知恵や知識を惜しみなく出し合う文化が生まれていました。上下の隔たりなくフラットで、社長が目指す家族的な全員経営が理想的に実現していました。
こうした明るくオープンな環境だからこそ、新しいアイデアも数多く生まれ、そして社員のエンゲージメントも高まっているのでしょう。社員のエンゲージメント向上に悩む企業はぜひご参考いただければと思います。
この記事を書いた人