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やらないことを決めて残業時間を削減! 広告代理店業界の常識を覆す カルテットコミュニケーションズの働き方とは?(後編)

公開日:2020.4.22

    “残業の少ない社員には賞与でプラス査定”、“チャイムで定時時間を知らせる”、“対外的に残業時間を公開する”など、残業削減に関する施策に多数取り組み、月間平均残業時間が広告代理店業界では驚異の7.6時間を実現している株式会社カルテットコミュニケーションズ。

    前編では、代表取締役の堤大輔氏より、「世界一効率的な広告代理店になる」というビジョンを掲げたことや、残業を削減するために“みなし残業をやめて残業代をきっちり支払うこと”、“経営者自身が残業時間を把握すること”が重要というお話を伺いました(前編はこちら)。

    後編の記事でも引き続き、残業を減らすためにどのように業務に取り組んでいるのか、そして顧客との関係をどう構築しているのかについて語っていただきます。

    残業を減らすために必要なのは、業務フローを見直し、
    “やらない業務”と“対応ルール”を決めること

    私たちのメイン事業はリスティング広告運用代行で、特に中小企業の小規模案件に強みを持っていることが特徴の会社です。そして、商流としては大きく分けて2パターンあります。一つは広告主から直接依頼を受けるパターン、もう一つは広告代理店やWebサイト制作会社の下請けとして依頼を受けるパターンです。後者の仕事をしていると、他の広告代理店の業務フローを見る機会が多くあります。その中で気づいた私たちと他社との大きな違いは、“やらない業務”と“顧客の対応ルール”を決めているかどうかでした。

    広告代理店では、広告主への報告のために、資料の作成、移動、訪問に時間を使い、少なく見積もっても業務の半分以上の時間を費やしています。1回の報告のために数万円、下手をすると10~20万円のコストがかかっています。多くの代理店では、“広告主を訪問すること”が仕事になってしまっているように感じます。確かに、お客様に直接お会いしての“対面”だからこそ得られる情報もあるかと思います。しかし、小規模案件に強みを持つ私たちの会社で同じように訪問、報告をしていたら時間がいくらあっても足りません。そこで私たちは、この訪問、報告にかける分の時間をリスティング広告の運用で成果を出すことに費やしています。

    このように言うと、クライアントの方とまったく連絡を取らないと思われがちですが、むしろ電話やメールであれば、「営業時間中なら、遠慮なくご連絡ください」とお伝えしています。ただし、営業担当ではなく、“リスティング広告の運用担当者あてに直接連絡”をお願いしています。なぜかと言うと、営業と違い、広告主への訪問がないことで、運用担当者は出張や外出がなくずっと社内におり、連絡が取りやすいからです。また、実際に広告を運用しているので、クライアントの要望を十分に理解でき、スムーズに対応できます。

    報告レポートのフォーマットに関しても、自社で開発したシステム(Lisket:https://lisket.jp)を使用して出力しているので労力もかかりません。その際、お客様から「このようにレポートをカスタマイズしてほしい」というリクエストをされることもあります。しかし、仕事を始める前の段階でカスタマイズ対応はしない旨を説明し、レポートのカスタマイズをしなくても普段のコミュニケーションや成果でご満足いただけるようにしています。

    こうした業務の取捨選択が上手くいっているので、私たちは残業時間が少ないだけでなく、高い生産性を発揮しています。私たちの感覚でいうと、一人当たり30社担当して普通というイメージです。これは広告代理店の業界平均値と比べて、ありえない数字です。なかには70~80社担当して、一カ月の残業時間がほぼ0時間の従業員もいました。

    始めの説明と期待値コントロールでお互い納得のいく関係を

    このように私たちは対応範囲を決めてサービスを提供しているのですが、初めて問い合わせをいただいた方から「個別に対応してほしい」、「訪問をしてほしい」という要望をいただくこともあります。ただ、そういった要望をいただいた際も、私たちは業務の基本的なルールを決めているので、それに則り業務を進めていると説明しています。そのことに納得していただいた方と一緒にお仕事をさせていただいています。

    具体的には、個人によってサービスや対応の質にばらつきがないようにするために、トラブルやクレームの対応を除き、業務内容や対応方法を決めています。たとえば、当日に対応してほしい業務は当日の16:00までにご連絡いただくこと、18:30以降は絶対に電話に出ないなどです。

    「そこまで厳密にやっていると、顧客満足度が下がりませんか?」と聞かれることがあります。しかし、考えてみてください。飲食店などでは、閉店時間やラストオーダーの時間が決まっているので、お客様はそれに合わせて来店・注文をします。閉店、ラストオーダーに間に合わなければ、お客様は次回は間に合う時間に来ようと思うはずです。しかし、広告代理店の場合、業務の終了時間を明確に伝えているところは少ないのです。なのでお客様は、閉店時間がわかりません。伝えていないがゆえに、クライアントの方は「広告会社がやるタスクを忘れないように」と善意で夜遅くに連絡をしてくださるのですが、連絡を受けた社員からすると「こんな時間に電話してくるなんて…」と悪い方に受け取ってしまい、すれ違いが起こってしまいます。あらかじめルールを決めて伝えていると、こういった状況を未然に防ぐことができ、残業時間の削減にもつながります。

    クライアントからすると、「融通の利かない会社なのかな…」と思われかねないと思うかもしれませんが、実際にそのようなことはなく、むしろ納得したうえでご依頼をしていただいているので、クレームはほとんどありません。その理由として、私たちがターゲットにしているお客様の層のニーズに合ったサービスを提供できているからだと思います。たとえば、1皿100円の回転ずしに来るお客様は1皿3,000円のウニが出てくることをお店に求めないでしょう。「この味でこの値段なら十分」と納得してお店に来ています。私たちのサービスも「この金額ですがここまでやります」というコストパフォーマンスのよさで、さらに競合のいない価格帯の市場で勝負しています。

    ターゲットに関しては、私たちは一カ月の広告予算が20万円以下のお客様をメインにしており、今ではクライアントの85%を占めています。このように20万円以下のお客様が85%というのは、業界の中でも非常に高い割合です。他の広告代理店は「月額の広告予算100万円から」というように月の最低発注金額がある一定以上のところをターゲットにしています。そのため、私たちのように少額からでも広告の運用代行を請け負っている広告代理店が私たち以外にほぼないという外部環境により、優位性を担保できています。このような背景により、お客様が最初に私たちにご相談いただいた後、他の広告代理店にも相談し、最終的に私たちに依頼していただくケースが頻繁にあります。

    また、お客様の期待値コントロールという面では、お客様への最初の説明でどのような内容を伝えるかということを何より重要視しています。「お客様が満足する」というのは、サービスを提供する前にその会社に抱いている期待に対して、会社にどこまでやってもらったかが基準になります。

    そこで簡単に安請け合いせず、必要以上に期待を大きくしてしまわないことがポイントです。たとえば、私たちがどういったサービスを提供でき、どういった業務はやらないのかを正しく説明するなど、お客様に理解していただくことが重要です。私たちの営業部門はこういった期待値コントロールが適切にできるように説明の内容を決めていますので、基本的にクレームやトラブルも少なく済んでいます。

    前編でもお伝えしましたが、残業削減は「働き方改革」の追い風もあるので、絶対に取り組んだ方がいいです。ただ、その際、労働時間だけを短くしても本当の残業削減にはつながりません。今回ご紹介した、“やらない業務”を決めたり、“顧客対応ルール”を決めたりするという施策のように、今やっている業務を見直して、取捨選択する、新たなルールを作るなどが必要だと思います。中小企業こそ残業削減に取り組むべきです。共に日本の中小企業を盛り上げていきましょう。

    まとめ

    広告代理店で一般的に行われる、“広告主に訪問する”、“報告レポートを個別に対応する”といった業務をあえて行わず、残業を減らすと同時に成果を出すための時間も確保している株式会社カルテットコミュニケーションズ。業務を取捨選択し、顧客対応ルールを定めることで、広告代理店業界の平均残業時間を大きく下回る平均残業時間を実現していることがわかりました。同時に、その取捨選択とルールが顧客との関係を上手く構築するためにも効果的に働いており、きわめて理想的な経営と言えるでしょう。

    「業務時間の調整だけで、フローそのものを見直している部分が少ないのでは?」「何かを捨てずに残業時間を削減できた訳ではない」という堤氏のお言葉のように、今のやり方の中で省略できる部分があるか見直すなど、小さな施策や取り組みから始めてみてはいかがでしょうか。


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    この記事を書いた人

    HR BLOG編集部

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