オンボーディング Onboarding 「新卒社員」や「中途社員」が辞めない仕組みづくり
『オンボーディング』とは、新入社員をスムーズに社内に溶け込ませ、パフォーマンスを上げさせるための一連の仕組みづくりを言います。この冊子ではHR先進国であるアメリカ企業の事例も踏まえ、人材育成のための最新のメソッドを解説。
オンボーディングの具体的な取り組み方をご紹介しています。
テレワーク
公開日:2020.7.28
新型コロナウイルスの影響で、従業員は完全リモートへ移行、さらには都心に構えていたオフィスの契約を解除し、オフィスレスを実行するという大きな決断した白潟総合研究所株式会社(以下、白潟総合研究所)。前編ではコンサルティング会社はある程度信頼度を意識した立地のよいオフィスで、などという既成概念をくつがえすような考え方や一般企業では通常使われていないアプリケーションの活用事例をご紹介しました。
後編では、実際にテレワークで実践している取り組みやコミュニケーション方法について、引き続き代表の白潟氏にお話しいただきました。
この記事は2020年6月に取材した内容をもとにしております。
目次
私たち白潟総合研究所で行っている1on1ミーティングには、いくつかの種類があります。一つは「ウイークリー1on1」。これは週(Week)に1回、30分程度行うものです。「5分1on1」は、軽い会話のような感じで1日1~3回、睡眠や食生活、体調を確認しています。特に一人暮らしの若手社員などはそういった部分を少し聞くだけでも精神的な安定につながりますし、その際にもう少し聞き出す必要があると感じたら、「スポット1on1」という1on1ミーティングを行います。そこで不安や悩みなどをより深くじっくりと聞き出し、メンタル的な課題が見つかれば適切な処置をしていくのです。
テレワークでは特に従業員同士のコミュニケーションが重要となるので、以前よりも1on1ミーティングの種類や頻度を増やしています。物理的な距離がコミュニケーションの障害にならないよう、自社に合わせた仕組みをつくっていかなくてはなりません。
テレワークを成功させるには、弊社で使っているDiscordのようなアプリケーションの活用だけでなく、効率よく働けるリズムをつくりだすことが重要になります。基本的に人は1日のリズムをつくらないとどうしてもだらけてしまうもの。これは年齢に関係なく、私も含めて同じでしょう。
そこで、時間のマネジメント方法として1日3回の朝礼・昼礼・夕礼を行います。各礼によって時間を区切り目標を立てることで、集中することができるのです。そして各礼には以下のように異なるテーマを設けています。
朝礼:社内研修というテーマを持たせている。加えて昨日の感謝の言葉を伝える機会にもなっている
昼礼:ナレッジマネジメント(※)のため成功のコツと失敗情報の共有を行う
夕礼:行動指針を1日1個全員で語り合い、全員へ浸透させる
※ナレッジマネジメント
従業員個人が業務で得た知識などを互いに共有することで、会社全体の生産性向上に役立てる管理方法
朝礼後の1on1にて、その日の午前中に目指す3つのゴールを上司と部下で設定し、達成した人は昼礼で全員から賞賛され、モチベーションがさらに上がりますし、できなかった人には適度な口惜しさと競争心が生まれます。さらに成功のコツや失敗なども共有しています。そして夕礼では午後のゴールを達成した人の称賛と弊社の55個ある行動指針を1日1個読み上げ、浸透させる場としています。これにはDiscordのテキスト管理の機能が大変便利です。
さらに弊社では、昼礼や夕礼後の雑談を推奨していて、そのための部屋もDiscordに準備しています。テレワークで最も減ってしまうのが雑談といわれていますが、実は雑談はコミュニケーションにとって大切な要素。テレワークでコミュニケーションが減り、従業員が孤立しがちという問題を防ぐにも大変有効です。具体的に弊社では10分間の雑談タイムを設けて、いろいろな人と話せるような仕組みをつくっています。
こういった各礼や雑談の場が、業務に適度な緊張とリラックスをもたらし、全体の生産性を向上させていきます。特にテレワークでは、上司や先輩に忖度することなく質問や相談を行えるため、若手の成長がリアルオフィスよりも早く、生産性向上に成功しやすいと考えています。
リアルオフィスを解約したことで、今後は年間1,800万円ほどの固定費を削減していける予定です。そこで今後はその一部を従業員へ還元していきます。テレワーク一時金とテレワーク手当の支給や、全員へのプリンター支給、さらに冷暖房費の追加支給を行っていきます。自宅で仕事をするとどうしてもエアコンなどの使用時間が長くなり、お金がかかってしまいますからね。
また、オフィスは解約しましたが、みんなが集まれる場を設けたいので、シェアオフィスやレンタル会議室などの使用を考えています。チーム単位の週次、会社全体の月次、四半期に行う合宿などを定期的に行っていくことになります。完全テレワークでは補いきれない部分は、イベントなどで実際に会う機会を設けてフォローなどして、リアルとバーチャルのハイブリットで展開していくつもりです。
テレワークを成功させるには、従業員同士のコミュニケーションの改善から始めることが第一です。そして、相手の表情を伺わない仕事の仕方を当たり前とする風土をつくっていくことです。相手の顔色に左右されないことで、業務だけに集中し、深く考え成長できること。忖度が必要だったり、場の空気を読まなくてはならなかったりする環境ではうまくいきません。
これから本格的にテレワークを始める企業の方々には、ぜひ、そういったことも含めた仕組みづくりを考えていただきたいと思います。気を遣わずに何でも聞ける環境をバーチャルオフィスでつくることは、必ずテレワークの成功につながり、そして企業の業績アップをもたらしてくれると思います。
リアルオフィスを前提とした仕事から、コロナを機に一気にバーチャルオフィスでの完全リモートへと移行、さらにはオフィス契約の解除まで決断した白潟総合研究所。そのチャレンジと実行力、行動力には驚かされます。そして、実際の施策にはテレワークを成功へと導くさまざまな仕掛けがなされていました。
特に「見えないから余計な忖度せず、業務に集中できる」という考え方は目からウロコそのもの。自社に必要な環境は何か、従業員を伸ばすために必要なものは何か、見極める目を持っているからこその取り組みといえるのではないでしょうか。
プロフィール
白潟 敏朗(しらがた としろう)氏
1964年神奈川県生まれ。経営コンサルタント。白潟総合研究所株式会社代表。埼玉大学経済学部を卒業後、1990年よりデロイトトーマツにて経営コンサルタントを経験。IPOコンサルティングなどでキャリアを積み、1998年にISOコンサルティング・審査会社を立ち上げる。3000社以上を支援。2006年にトーマツ・イノベーション株式会社代表取締役就任。7800社のお客様に定額制研修イノベーションクラブで中小ベンチャー企業の人財育成にイノベーションをおこした。2014年10月に独立し白潟総合研究所を設立、2017年にリファラルリクルーティング、2018年に1on1株式会社、2019年にソーシャルリクルーティング株式会社を設立。現在、バーチャルオフィス視察会も開催している。
https://peraichi.com/landing_pages/view/ssvirtualoffice
この記事を書いた人