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リスキリングとは?職務記述書の活用が成長のカギ

公開日:2022.10.7

    リスキリングとは

    ReSkilling=再教育とも言われ、業務と並行して、業務上で必要とされる新しい知識やスキルを学ぶことです。

    近年では、スキルギャップを感じる管理職や役職者が多くいると言われています。多くの企業では、それらのスキルギャップを埋めるために、業務と並行してスキルを習得する「リスキリング」が必要とされている状況です。

    リスキリングの定義

    経済産業省が定義するリスキリング(Re-skilling)は以下です。
    「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」

    リスキリングとは―DX時代の人材戦略と世界の潮流―

    リスキリングが注目されている理由

    世界では、McKinsey & Company(世界で最も権威あるコンサルティングファーム 第1位)によると、2020年では管理者や役職者の 87% が「企業が求めるスキルと自身のスキルのギャップを経験した」と報告しています。

    同様にWEF(世界経済フォーラム) は、2025 年までに世界中の労働者の 40% 以上がリスキリングを必要とするだろうと報告しています。

    日本では、2022年10月3日に岸田文雄総理大臣がリスキリングの必要性について臨時国会で所信表明演説を行いました。
    その際、「リスキリングに対する公的支援は5年間で1兆円」と公言されました。この1兆円という予算に加え今後5年という数字もマッキンゼーやWEFの見解もあって、リスキリングが急速に注目されるようになりました。

    岸田文雄総理大臣は、2022年10月3日召集された臨時国会でリスキリングに関する所信表明演説を行った。リスキリングや成長分野に移動するための学び直しへの支援、年功制の職能給から日本に合った職務給への移行など、企業間・産業間での労働移動円滑化に向けた指針を、来年6月までに取りまとめることを発表した。

    特に、個人のリスキリングに対する公的支援については、人への投資策を「5年間で1兆円」のパッケージに拡充。あわせて、同一労働同一賃金の遵守を一層徹底していく。新しい働き方に対応するため、個人がフリーランスとして安定的に働ける環境を整備するべく、法整備にも取り組む。

    リスキリングと混同されがちな用語、類語

    リカレント教育=繰り返し教育は、業務と並行して学ぶリスキリングとは異なり、一度仕事を離れて学び直す事。
    リスキリングは仕事を離れずに、業務と並行して学ぶ。

    アンラーニング=学習棄却は、既存の学習ルーティンを棄却して、新しいスタイルで学びなおす事。
    リスキリングは学習棄却ではなく、まったく新しいスキルを学ぶ。

    OJT(On the Job Training)=職場内訓練は、既存の職務を遂行する為にスキルを身に着ける事。
    リスキリングは、社内にできる人がいないが必要とされるスキルを業務と並行して学ぶ事。

    リスキリングと職務記述書(ジョブ・ディスクリプション)の関係

    リスキリングの目的は、会社にとって必要なスキルを身に着けること。ここで重要な部分は、「会社にとって必要なスキル」とはなんなのかということ。

    職務記述書は、職務の内容を詳しく網羅的に記述した文書のこと。職務記述書を利用する事で必要なスキルが分かる。そして、会社の人材に不足しているスキルを把握する事ができる。

    ともすれば、
    ①職務記述書を元に会社や職務に必要なスキルをピックアップ
    ②人材の持つスキルと照らし合わせて不足しているスキルを把握
    ③不足しているスキルをリスキリング

    といった流れになる。

    つまり、一概にリスキリングを行うといっても、目標となるスキルが明確でないと話が進まない。
    そこで、職務記述書があるとリスキリングの対象となるスキルを把握しやすくなる。

    リスキリングを行う上では、職務記述書が必要不可欠となってくるでしょう。

    職務記述書については下記

    職務記述書のダウンロードは下記

    リスキリングの行い方

    目指す人材像やスキルを定める

    リスキリングは目的を達成するための手段であり、人材戦略のひとつ。企業が必要とするスキルをもった人材を習得する為のもの。
    まずは目標となるスキルを定めることが最初のステップとなります。

    スキル習得のための学習方法を決める

    目標スキルが決まったら、習得までの道のりを決めます。
    大事なのは、リスキリングは業務と並行して進めるものです。通常業務に支障を来さないようにしましょう。
    書籍やWEB上にも多くの情報が出回っていることから独学でも十分にスキルを習得できる環境と言えます。

    現代では多種多様なスキルや資格においてオンライン講座やeラーニングなどが豊富ですので、独学に不安な場合にはパッケージ化された講座や質疑応答のサポートが付属しているものを選択すると安心でしょう。

    社員によって学習方法は様々です。聞くだけで十分に習得できる場合もあれば、実際に手を動かしてみる必要があるなど、人それぞれでスキル習得の方法や時間が変動します。
    幅広い学習方法を事前に用意しておくことで、社員が自分に合ったリスキリングの方法を選ぶことができ、効率よくリスキリングが行えます。

    リスキリングの実施

    学習方法を用意する事ができたら、実際にリスキリングを実施してもらいます。

    リスキリングを進めていく上で、業務に不都合が出てしまったり、思うように学習が進まないなどの悩みが出てくることが多いです。
    その際には、随時フィードバックを行い、環境を整えていくことが必要です。

    リスキリングの途中で社員の不満が募る事を避けなければなりません。リスキリングの実施によって、思うように業務が進まなかったり、残業が増えてしまったりしてエンゲージメントが下がることがあります。人材戦略であるリスキリングを実施して退職を招いていては元も子もありません。

    絶対にやってはいけないのは、業務時間外での学習を強制する事です。他にも、強制的に学ばせるような環境ではなく、自主的に学べる環境が望ましいです。
    また、他の社員と比較することを避けたほうが、自分のペースで勉学に集中できるでしょう。

    リスキリングしたことを実践で活かす

    リスキリングで習得したスキルを活かすときです。
    この日の為に学習したといっても過言ではありませんが、リスキリングは手段であって目的ではありません。実践したときに成果がでなければ、リスキリングは成功していたとしても人材戦略において失敗したと言えるでしょう。

    本来であれば、スキルの選定段階で悩むことですが、職務記述書を使用しなかったり、必要とされるスキルが曖昧なままリスキリングを始めてしまったりすると、実践では成果が出せない場合があります。実践した時に成果が出なかったからと言って社員を責めるのではなく、なぜリスキリングは成功していたのに成果が出なかったのかを明確にしましょう。そして新たに熟考してスキルを選定し、リスキリングを行いましょう。

    リスキリングのメリット

    企業がリスキリングを推奨する理由としての多くは、生産性の向上や業務効率化育成や採用のコスト削減エンゲージメントの向上が主です。
    従業員がスキルを習得することによって人的資本の価値が向上します。これは企業の財産が増えたということでもあります。

    業務効率化
    企業がリスキリングを推奨する最も大きな理由が業務効率化でしょう。現在社内にないスキルを身に着けることで、業務の範囲を広げることも、既存業務を効率的に遂行する事も可能になるでしょう。

    採用・育成のコスト削減
    リスキリングを行うことで、不足している技術を補うことができるようになります。これによって人材採用や育成のコストを削減できます。

    エンゲージメント向上につながる
    リスキリングは人材のスキルアップによって、自身の成長を実感できます。それらは生産性の向上からの昇給やキャリアアップ、モチベーション向上へとつながります。十分に成熟の機会を得られた社員は会社への信頼を持ち、深いつながりを持った関係性と認識するでしょう。

    リスキリングのデメリット、注意点

    優秀な人材に依存してしまいがち

    人材不足に対応できる反面、スキルを有した人材に依存しがちになってしまいます。スキルを有した人材のエンゲージメントを高めて離職の防止に努める必要があります。
    既存の人材が不足している部分をリスキリングによってカバーできる範囲は限られています。多くの業務を一人に集約する事になると、せっかくの優秀な人材も不満を募らせて退職してしまう可能性もあります。

    リスキリングを行う上で、リソース管理やモチベーション管理は徹底しなければなりません。

    リスキリングは手段であって目的ではない

    リスキリングは目的を達成するための手段です。社員にスキルを習得してもらって、業務効率を上げてもらったり、業務の幅を広げてもらうなどのメリットを期待して行うものです。
    そのため、リスキリングを行って社員がスキルを習得したから完了ではありません。社員がリスキリングによってスキルを習得した結果、企業にとってなんらかの利益につながって初めて完了となります。

    例えば、社内のプログラマーにリスキリングを行ってもらい、新しい言語のスキルを習得しました。しかしながら、新たに習得した言語での開発を受注する事が出来ず、今までと変わらない言語でしか業務を行っていない。

    この場合、リスキリングによってスキルは習得できたものの、企業にとっては利益に繋がっていません。リスキリングは成功したものの、事業戦略としては失敗したと言えるでしょう。
    事前にしっかりと職務記述書を用いて職務に必要なスキルをピックアップしたり、将来的に必要となるであろうスキルを熟考して予測するなど、スキル選定の段階から十分に注意が必要です。

    リスキリングが不満の原因になってはならない

    リスキリングには多くの時間が必要です。業務と並行して行い、現在の業務を疎かにすることなくスキルを習得せねばなりません。ここで重要なのは、リスキリングの学習が社員の負担になってはいけないということです。リスキリングの時間によって通常業務が回らなくなり、残業時間が増えるなどが考えられます。そうなってしまうとリスキリングそのものが不満の原因となってしまいます。学習意欲が削がれ、スキル習得の効率も悪化し、通常業務にも影響が出るでしょう。最悪の場合にはリスキリングによる不満が原因で退職してしまうかもしれません。

    社員にスキルを習得してもらって業務効率を上げたり生産性を向上させることが本懐であるにもかかわらず、その過程で人材を損失していては元も子もありません。

    それぞれの社員に合った学習方法を選択できるようにプログラムを複数用意したり、通常業務の負担を一時的に軽くしたり、スキル習得後の昇給やキャリアアップなど、リスキリングが社員にとって不満の原因にならないように注意する事が必要です。

    リスキリング導入の国内事例4選

    日立製作所

    日立製作所は人工知能(AI)を駆使して社員のリスキリング(学び直し)を促すシステムをグループ全体で導入する。AIが社員一人ひとりのスキルを把握し、将来的に必要になるデジタル知識や外国語の習得を促す仕組みだ。日立はあらゆるモノがネットにつながる「IoT」の技術基盤「ルマーダ」を軸に、従来のものづくりからデジタル主導の経営への転換を進めている。人材への投資を通じて「デジタル企業」としての競争力の底上げにつなげる。
    https://career.nikkei.com/nikkei-pickup/002111/

    三井住友フィナンシャルグループ

    SMBCグループでは、2016年に社内デジタル教育機関である「デジタルユニバーシティ」を立ち上げ、2021年からグループ全従業員を対象に「デジタル変革プログラム」をスタートさせました。これは、デジタルに対する従業員の意識変革を起こし、知識を身につけ、実践に導くというコンセプトの教育プログラムです。同プログラムと連動させる方式で、グループ全体でUdemy Businessを導入し、自律的な学習者を育成しています。
    https://ufb.benesse.co.jp/case/smbc-group.html

    富士通

    富士通は2022年3月8日、顧客および同社のDX化を強力に推進するDX企業への変革を加速するための人材施策を発表した。同社は、従業員の自律的なキャリア形成を促進するとともに、グループ全体での人材の流動性を高め、キャリア・スキルチェンジや適所適材の考え方のもとでスピーディーに人材の最適配置を行うという。また、従業員にはグループワイドでのポスティング制度など継続的な成長機会の提供やリスキリング支援を行うほか、新卒採用やキャリア採用により、積極的に必要な人材の獲得を進めていくとしている。

    あおぞら銀行

    あおぞら銀行は2021年4月から全社員2000人を対象にDX(デジタルトランスフォーメーション)人材になるための研修を始めたほか、6月からはビジネスストラテジストやデータサイエンティストと位置づける、より高度な人材育成も始めた。
    https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00138/111500918/

    リスキリングでおすすめの研修

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    この記事を書いた人

    TOYO

    株式会社アックスコンサルティング マーケティング本部 WEB制作課所属。
    メンタル心理ヘルスカウンセラー、メンタル心理インストラクターの資格を活かして人事向けの記事を中心に執筆。仕事に纏わる悩みに対し、カウンセリング倫理、心理アセスメント、地域精神医療などの観点から明るい毎日を送れるように記事を執筆しています。

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