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みなし陽性とは?診断書は必要?社員と人事の対応フローを解説
公開日:2022.2.3
以下は(2022年2月3日時点)の情報です。
目次
みなし陽性とは?
みなし陽性とは、「感染者の濃厚接触者となった同居家族に発熱などの症状がある場合、検査なしでも医師の判断で感染者とみなすことができる仕組み」のことです。
2022年2月3日時点では、下記の17都道府県がみなし陽性に取り組んでいます。
青森・秋田・茨城・栃木・群馬・千葉・東京・神奈川・新潟・静岡・京都・大阪・和歌山・岡山・福岡・佐賀・長崎
若年層など、重症化リスクが低い人のみなし陽性には、医療機関を受診せずに自宅療養することも認めています。
みなし陽性の目的
みなし陽性の目的は、発熱外来に患者が殺到する事を避けることです。
仮に今後、重症化リスクの少ない全ての若年層が発熱による症状で、発熱外来に殺到した場合には、重症化リスクの高い高齢者の検査が間に合わず、治療や感染予防ができなくなることが予想されます。
すでに大阪の一部クリニックでは、検査キットの不足や唾液PCR検査用の保管具なども不足している現状です。
これらを回避する為に、「みなし陽性」という枠を設けて、検査なしで医師が感染と診断できる仕組みがつくられました。
みなし陽性で欠勤するには、診断書が必要になることがあります
傷病手当や休暇申請の都合上、会社の方針に従うことになります。
そのため、会社から診断書の提出を求められることもあるでしょう。
会社の方針によっては、診断書を必要としない場合もあります。会社の規約や直属の上長に事前に聞いておくことが望ましいです。
みなし陽性の診断書とは、どのようなものなのか。これについては、病院のフォーマットによって異なります。
多くの場合、コロナウイルス感染症の診断書と類似のフォーマットになるでしょう。
以下はコロナウイルス感染症 PCR検査の診断書サンプルです。
診断書のサンプル(pdf)
診断書のサンプル(word)
※こちらのサンプルはご使用にはなれません。必ず医師の診断の元、正規の診断書を発行してから申告してください。
みなし陽性の発覚から申告までのフロー
大阪府の吉村洋文知事の話によると、以下のように定義付けされています。
「陽性と判断するのは、濃厚接触者の中でも同居の家族などに限る」
みなし陽性の判断基準は、都府県によって異なる可能性があります。
詳しくは地方自治体のホームページをご確認ください。
・感染者との濃厚接触が発覚
・濃厚接触者であり、発熱症状を確認。
・感染者が陽性と判断された病院へ連絡
・感染者との続柄や関係を説明。
・現在の症状を説明。
または、保健所へ連絡し上記の旨を説明する。
自身で抗原検査キットを使用
検査の結果が、仮に陰性であっても感染者との濃厚接触者と判断される場合には、自宅療養の選択を取りましょう。
また、会社に勤めている人は、下記のフローに沿ってみなし陽性であることを勤務先に連絡してください。
1.勤務先へ連絡する
2.感染者との濃厚接触者であることを報告する
3.医師の判断でみなし陽性者に該当したことを説明する
4.抗原検査キットの結果が陽性または陰性であることを説明する
5.今後の対応について相談する
※濃厚接触者に該当するかどうかは、保健所が、患者、または家族や会社などから聞き取り調査をし、「新型コロナウイルス感染症患者に対する積極的疫学調査実施要領」に記載されている定義を踏まえて、マスク着用の有無、接触時間の長さ、距離の近さ、空間の密閉度や患者の症状などから状況に応じて総合的に判断します。そのため、同じクラス・職場で患者が発生したとしても、一概に濃厚接触者になるとは言えません。
一般的な濃厚接触者の定義につていはこちら。
社員からみなし陽性の申告を受けたら?
人事や上長が、社員からみなし陽性の申告を受けた場合には、以下のような対応が必要です。
・みなし陽性を証明できるものの発行依頼
社員からみなし陽性の申告を受けたら、まず証明できる書類の有無を確認してください。
医師の判断があっても、証明できる書類がなければ、みなし陽性として扱うことができません。
みなし陽性は、医師や保健所の判断の元で決定するもので、診断書の発行依頼が可能です。
証明する書類がない場合は、社員に、みなし陽性の判断を行った病院や保健所に連絡してもらい、証明できる書類を発行してもらうようにしましょう。
・健康観察期間と出社禁止を指示
みなし陽性と認められた社員に対しては、社内での感染拡大を防ぐため、出社停止などの対応を取るようにしましょう。担当業務のうち緊急性の高いものがあれば、他の社員に引き継ぎを行います。
・外出自粛要請
みなし陽性に該当する社員には、通院や生活必需品の購買など出社以外で外出する際、公共交通機関の利用は避けるように通達しましょう。
・今後の流れの説明
みなし陽性に該当する社員と職場復帰までの日数など今後の流れについて説明します。みなし陽性の対応は、通常の陽性と変わりません。みなし陽性の欠勤日数の目安についてはこちらを参考にしてください。
・居住地を管轄する保健所の入院措置等の指示に従わせる
会社の所在地ではなく、みなし陽性の居住地を管轄する保健所や医療機関の指示に従わせる必要があります。
都道府県によって対応が異なることがあるため、社員が辛そうな状態であれば、人事や上長が調べてから案内しましょう。
・職場の消毒
みなし陽性となった社員が居たフロアはもちろん、通路やトイレなどの消毒を徹底しましょう。
みなし陽性とはいえ、コロナウイルス感染症と同等の扱いです。実際にコロナウイルスで陽性反応が出たと考えれば、消毒の徹底はすべきでしょう。
ビルやマンションであれば、衛星管理者に通達して消毒の依頼をする事も必要です。勝手に共有部分の消毒を行わないようにしましょう。
・みなし感染者と、社内の接触者のリストアップ
みなし陽性の社員と接触した人をリストアップしておきましょう。
社員のプライバシーを尊重した調査が必要です。個人名を出すことは望ましくない場合もあります。
もし社員の名前を出して調査を進めるのであれば、社員の同意が必要です。その際、後にトラブルが起きたときのために、録音でもサインでもよいので、何かしらのエビデンスを残しておくようにしましょう。
<濃厚接触者の定義>
「濃厚接触者」とは、感染者の感染の可能性がある期間(発症の2日前から入院または自宅等での療養の開始までの期間)に接触した者のうち、次の範囲に該当する者を言います。
・感染者と同居あるいは長時間の接触(車内、航空機内等を含む)があった者
・感染者の気道分泌液もしくは体液等のウイルスに直接触れた可能性が高い者
・マスクなど適切な感染防護無しに感染者を看護若しくは介護していた者
・その他:手で触れる距離(目安1メートル)で、必要な感染予防策なしで、感染者と15分以上の接触があった者(周辺の環境や接触の状況等個々の状況から患者の感染性を総合的に判断する)
詳細については、下記をご確認ください。
国立感染症研究所感染症疫学センター「新型コロナウイルス感染症患者に対する積極的疫学調査実施要領」
みなし陽性時の対応フローが会社の規定にない場合には?
コロナウイルス感染症はここ数年で急速に広まった事象ですので、会社の規定にそもそも、コロナ感染症を想定したものがない可能性もあります。
そのため、コロナ感染症関連で、以下のような混乱が予想されます。
・休みの規定や有休、傷病手当の扱い
・他の社員への通達方法
・業務の進行状況や、プロジェクト全体を通しての代理
・クライアントへの通達の方法
一般的な会社であれば、上長判断・人事判断で決定が下されますが、今後もこのような事態が続いたり、別の緊急事態が発生する可能性もあるため、これらを想定して、会社の規定を早急に準備すべきでしょう。
人事や上司が、絶対にやってはいけない事
みなし陽性者となった社員に対して絶対にやってはいけないのが、出社を強要する事です。
発熱などの症状がある状態では、普段通りの業務をこなすことは難しいだけでなく、症状が悪化するおそれもあります。また、みなし陽性であるのにも関わらず出社を強要した場合、他の社員からの信用を失うことにもつながりかねません。
最悪の結果、会社でクラスターが発生して営業停止措置が取られます。その結果、業務はすべて停止して売上も信用も大きく損なうことになります。
上長や人事の判断のミスで、会社の存続が危うくなることも考えられます。
みなし陽性の社員に出社を強制することは絶対に避けましょう!
みなし陽性は欠勤扱いになる?有給休暇と傷病手当
・新型コロナウイルス感染症に感染又はその疑いがあり、有給休暇を取得した場合は、対象になるか。
有給休暇を取得しての療養は対象になりません。
ただし、待期期間の場合は、待期日数にカウントできます。
・濃厚接触者であることが疑われるので、職場から自粛の依頼があり休業した場合は、対象外になるか。
事業主からの要請により休業した場合は、傷病手当金の対象にはなりません。
ただし、被保険者本人が新型コロナ感染症に感染又はその疑いの症状があり、療養のために労務に服すことができない場合には傷病手当金の対象になります。
なお、傷病手当金の対象外であっても、休業手当の対象になる可能性があります。
・同一世帯の家族が新型コロナウイルス感染症に感染したことで、感染拡大防止のために労務に服することができない被用者は対象となるか。
傷病手当金は、被保険者本人の疾病に対して給付するものですので、同一世帯の家族が感染したというだけでは対象になりません。
ただし、被保険者本人が新型コロナ感染症に感染又はその疑いがあり、療養のために労務に服すことができない場合には傷病手当金の対象になります。
熱が37.5℃未満であっても、強いだるさや息苦しさがあり、労務に服さなかった日は、規程第1条の「発熱等の症状があり感染が疑われる場合」に該当するか。
医師や事業主の証明があれば、含まれます。(申請書にその旨の記載があれば、対象になります。)
東京都薬剤師国民健康保険組合「傷病手当金(よくある質問)」参考
・傷病手当金
傷病手当金は、健康保険等の被保険者が、業務災害以外の理由による病気やケガの療養のため仕事を休んだ場合に所得保障を行う制度です。新型コロナウイルス感染症に感染し、その療養のために働くことができない方も利用できます。
• 自覚症状は無いが、検査の結果「新型コロナウイルス陽性」と判定を受け入院している
• 発熱などの自覚症状があり、療養のために仕事を休んでいる
等の場合についても、傷病手当金の支給対象となりえます。
・支給要件
次の条件をいずれも満たしたときに支給されます。
1.業務災害以外の病気やケガの療養のために働くことができないこと
※業務又は通勤に起因する病気やケガは労災保険給付の対象となります。
2.4日以上仕事を休んでいること
※療養のために連続して3日間仕事を休んだ後(待期期間)、4日目以降の仕事を休んだ日について支給されます。
※待期期間には有給休暇、土日祝等の公休日を含みます。
・支給期間
傷病手当金の支給期間は、支給を始めた日から最長1年6か月間です。
※1年6か月の間で傷病手当金の支給要件を満たす日について支給されます。
1日あたりの支給額
傷病手当金の支給開始日の属する月以前の直近12月間の標準報酬月額を平均した額の30分の1に相当する額の3分の2に相当する額です。
※支払われた給与の額が、傷病手当金の支給額を下回っている場合には、傷病手当金と支払われた給与の額の差額分が支給されます。
詳しくは下記の厚生省「新型コロナウイルス感染症の影響を受ける働く皆さまへ 」をご確認ください。
みなし陽性と判断されるのはいつから?
感染者の濃厚接触者として発熱症状が現れ、医師または保健所に相談してみなし陽性と判断された時点です。
自宅で検査キットを使用するかどうかについては、個人や会社の判断になります。
重要なのは、医師または保健所の判断の元で「みなし陽性」となったかどうかです。
上長や人事に、「みなし陽性の疑いがありますので、病院か保健所に相談します。結果が出るまでは出社は自粛させてください。結果が分かり次第、改めてご連絡いたします。」のように医師や保健所の判断が出るまでは、出社を自粛する旨を伝えましょう。
みなし陽性と判断されるには何が必要ですか?
みなし陽性は、医師の診断書があれば十分です。
みなし陽性であっても、コロナ陽性を証明するための診断書を病院に取り付けることができます。
社員には、みなし陽性と判断された病院に問い合わせて、診断書の発行を依頼してもらいましょう。
みなし陽性での欠勤時の扱いは、体調不良?
当人が陽性と確定していない時点での欠勤は、通常の体調不良扱いとなるでしょう。
医師の診断の結果、みなし陽性と判断された場合には、会社都合の休業となるでしょう。
会社によっては感染症対策の一環として、特別休暇を設けていたりします。
もしもの時の為に会社規定の確認や、人事や上長に問い合わせて確認しておきましょう。
欠勤日数の目安はどれくらいですか?
新型コロナウイルス感染症の患者(感染症状あり)
① 発症日から 10 日間経過し、かつ、症状軽快後 72 時間経過した場合
② 発症日から 10 日間経過以前に症状軽快した場合に、症状軽快後 24 時間経過した後に核酸増幅法又は抗原定量検査(以下「核酸増幅法等」という。)の検査を行い、陰性が確認され、その検査の検体を採取した 24 時間以後に再度検体採取を行い、陰性が確認された場合
新型コロナウイルス感染症の無症状病原体保有者
③ 発症日から 10 日間経過した場合
④ 発症日から6日間経過した後に核酸増幅法等の検査を行い、陰性が確認され、その検査の検体を採取した 24 時間以後に再度検体採取を行い、陰性が確認された場合
厚生労働省の「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律における新型コロナウイルス感染症患者の退院及び就業制限の取扱いについて(一部改正)」を参考にするとよいでしょう。
最終的には会社の判断となりますが、一般的な会社であれば、厚生省の公開している内容に準ずるでしょう。
みなし陽性者の人事評価、どうしますか?
人事部や上長は、みなし陽性によって社員の評価を変えるべきでしょうか?
一般的にはみなし陽性で人事評価を下げるようなことはしない方が良いです。
ただし、感染理由や感染経路が不純であったり、当人の管理不足によるものであれば、自己管理不足と判断されて人事評価に影響を与えるべきです。
会社に安全配慮義務があるように、労働者には自己保険義務というものがあります。
私生活における健康管理義務があり、病気やケガをしないよう注意することが義務づけられています。
みなし陽性の社員に対する人事評価のポイントとしては、健康管理義務を怠ったかどうかが重要になります。
プライベートを侵害しない範囲で、みなし陽性前後の社員の動向を確認しておきましょう。
この記事を書いた人