オンボーディング Onboarding 「新卒社員」や「中途社員」が辞めない仕組みづくり
『オンボーディング』とは、新入社員をスムーズに社内に溶け込ませ、パフォーマンスを上げさせるための一連の仕組みづくりを言います。この冊子ではHR先進国であるアメリカ企業の事例も踏まえ、人材育成のための最新のメソッドを解説。
オンボーディングの具体的な取り組み方をご紹介しています。
エンゲージメント
公開日:2020.11.13
日本企業における従業員エンゲージメントは、世界的に見て低水準であることが知られています。従業員エンゲージエントが高い会社には、どんな特徴があるのかを参考に、国内の企業が改善していくポイントを探っていきましょう。
年功序列や終身雇用を背景にした、昭和の高度成長はすでに遠い昔のことです。当時は、働けば働いただけ儲かる時代で、企業と従業員は固い主従関係で結ばれていました。
経済成長が頭打ちとなるなかバブル経済が崩壊し、いつしか成果主義が主流となっていきました。条件がいい会社に転職するのが当たり前になり、かつてのような愛社精神は育たなくなっていったのです。その結果、仕事を真面目にこなすものの、求められる以上の働きで会社に貢献しようという従業員は減っていきました。
そんななか従業員エンゲージメトという指標に注目が集まるようになりました。従業員エンゲージメントとは、従業員と企業の相互の結びつきを示す指標で、生産性や業績と相関関係があることが知られています。ある調査によると、従業員エンゲージメントが高い企業は、生産性と収益性が20%、顧客評価も10%向上するという結果が出ています。
2017年にギャラップ社が行った調査によると、日本国内の企業でエンゲージメントが高い社員は全体の6%だったそうです。それ以外の70%の社員はやる気がなく、24%の社員は周囲に不満を漏らしているという結果も出ました。
この数値は、調査を行った全139か国中で132位という最低水準のものでした。冒頭に語ったような事情により、仕事へのモチベーションを見失い、勤務時間をやり過ごすような働き方をする社員が増えているのが理由だと考えられます。また、会社側の体制が時代にそぐわず、従業員エンゲージメントに悪影響を及ぼしているケースもあるでしょう。
従業員エンゲージメントが低下すると、おのずと離職率が高まります。少子化や人材の流動化によって、働き手の確保が困難な昨今、採用した社員に長く働いてもらうことは経営を安定させるためにも重要です。従業員エンゲージメント向上は、企業が取組むべき急務だと言えるでしょう。
企業ごとに事情が異なるため、従業員エンゲージメントを高める方法は一様ではありません。しかしながら、高い水準を保っている会社の共通点を見つめると、ヒントが浮かび上がってきます。エンゲージメントが高い企業の共通点は以下の通りです。
このようなポイントを自社の現状と照らし合わせて、うまくいっている部分と難がある部分を整理してみましょう。「それなりにうまくいっている気がする」という会社でも、よく考えてみると従業員エンゲージメントの向上を阻害する要素が社内に横たわっているケースは少なくありません。
例えば、謙虚さが美徳とされる日本ならではの「悪目立ちしたくない」という感覚が、従業員の貢献意欲を阻んでいるかもしれません。また、定時勤務が絶対的なルールとなっている会社では「仕事を効率良く終わらせても、早く帰れるわけではない」という理由で、生産性が上がらないケースもあります。こうした状況では「もっとがんばろう」「やってやろう!」という感覚は生まれません。
雇う側・雇われる側という主従関係をベースに、従業員満足度を重視している企業も従業員エンゲージメントが上がりにくい傾向にあります。待遇や労働条件を改善すれば従業員満足度が上昇し、一時的にモチベーションは高まりますが、仕事そのものへの熱意が上がるわけではないため、生産性向上や業績アップにはつながらないのです。
多くの日本企業が採用してきたメンバーシップ型雇用が、従業員エンゲージメントの向上を阻害するそもそもの原因であるという考え方もあります。欧米では、従業員の専門性やスキルによって配属先が決まるジョブ型雇用が主流です。しかし日本では、総合的な能力が高い人物を採用し、様々な部署に配属していくメンバーシップ型雇用が一般的です。ゼネラリスト育成には向いていますが、専門性を生かすような働き方ができず「自分の力を会社のために生かしたい」という感覚になりにくいのです。
組織が複雑な会社も、従業員エンゲージメントの向上に苦労するかもしれません。「誰に何を相談すればいいのか分からない」「あちらに相談すると、こちらの顔が立たない」といった事情から報連相が滞り、社内コミュニケーションに問題が生じるリスクがあるのです。
このように、従業員エンゲージメントに悪影響を及ぼす要素は意外な局面に潜んでいます。自社だけの取り組みで、向上計画を立てるのが難しい時は、専門業者への委託や、HRテックの活用も視野に入れてみてください。
年功序列や終身雇用が主流だった時代と比べて、従業員の仕事への向き合い方ややりがいの種類は多様化しています。会社側の論理だけでは、従業員エンゲージメントを高めるのは難しいでしょう。
エンゲージメントサーベイを行い、分析結果を通じて適切な施策を講じ、企業と従業員が相互に高めあえるような関係を丁寧に紡いでいくのが、基本的なやり方となります。半年~1年に一度のペースで一連の過程を繰り返すことで、問題点をつぶしていきます。
「日本国内の企業でエンゲージメントが高い社員は全体の6%」と前述しましたが、その“6%の社員”を生かし、彼らのやる気を社内に伝染させていくようなやり方もあります。しかしながら、彼らが頑張り過ぎて体調を崩したりしないように、会社側が見守らなければなりません。他の社員から浮いてしまわないような雰囲気を、上司が率先して作っていくのも大事です。
従業員エンゲージメントが上がれば業績がアップし、好結果を通じて従業員の貢献意欲がますます高まる――、そんな好循環を生み出せる企業を目指していきましょう。従業員エンゲージメントが高い会社の共通点や、基本的なセオリーを参考にしながら、自社にあった方法を模索していってください。
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