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エンゲージメント

ワークエンゲージメントとは?メリットや高める方法について解説

公開日:

    働き方改革により、個人レベルでも多様な働き方が浸透しつつあります。そこで、優秀な個人を組織に定着させながら、従業員一人ひとりの生産性を上げていくために、ワークエンゲージメントという言葉が注目されるようになりました。

    この記事では、ワークエンゲージメントの意味や概念、メリットやワークエンゲージメントを高める方法について解説します。

    ワークエンゲージメントとは

    ワークエンゲージメントとは、オランダにあるユトレヒト大学のSchaufeli教授が提唱した概念です。

    提唱した概念は大きく分けて3つです。

    • 活力:仕事で活力を得て活き活きと生活している
    • 熱意:仕事に誇りとプライドをもっている
    • 没頭:仕事に対して熱心に取り組んでいる

    これら3つの意識が高まることにより、仕事のパフォーマンス向上が見られると言われています。

    2018年、厚生労働省が発表した「平成30年度版労働経済の分析」でもワークエンゲージメントについて言及があり、国内での注目度はさらに高まっていくと考えられます。
    また、同じく厚生労働省からの発表資料である令和元年版「労働経済の分析」においても、日経テレコン上での「エンゲージメント」(※完全一致キーワードに限る)というキーワードが絡む記事の数が年を追うごとに増しているという報告があり、その注目度の高さがうかがえます。2014年と2019年で比較すれば、5年間で「エンゲージメント」に関する記事の件数は約10倍になったと言えます。

    件数
    2014年198件
    2015年365件
    2016年672件
    2017年1,022件
    2018年1,272件
    2019年1,999件

    ※いずれの年も1月末~6月末の期間で集計

    ただし、ワークエンゲージメントに関して一つ注意しなければいけないことがあります。それは国によって概念が異なることです。

    たとえばアメリカ人と日本人のワークエンゲージメントが高い人は、共通点が多いわけではありません。
    後述でも説明をしますが、アメリカ人はパーソナリティーを前面に出す人が多いのに対し、日本人は周りと協調する人が多いという特徴があるからです。
    これは一部分ですが、このような国の文化の特性によってワークエンゲージメントの理解も異なるため、国民性を理解した上で従業員を理解する必要性があります。

    ワークエンゲージメントが注目されるようになった背景

    日本でワークエンゲージメントが注目されるようになった背景として、生産年齢人口の減少と人材の流動性が高まったことが原因とされています。

    生産年齢人口とは、国内の生産活動を支えることができる15歳から64歳の人口を指します。この生産年齢人口は1995年をピークに毎年減少傾向にあります。
    ※参考:総務省「令和4年版情報通信白書」

    他にもこれまでの企業は、従業員満足度に重きをおいてきましたが、キャリアアップとしての転職が一般的になった今、給与や福利厚生といったものを与えるだけでは優秀な人材を会社に定着させることが難しくなってきました。これが人材の流動です。そこで、優秀な人材に会社に長く定着してもらうために、会社と従業員との精神的な結びつきの強さも重要視されるようになったのです。

    また、ワークエンゲージメントはもともとアメリカで生まれた考え方です。アメリカは個人主義の考え方が強く、ジョブ型の雇用形態を敷いています。終身雇用が一般的であったかつての日本よりも従業員を解雇しやすいことから、優秀な人材を残すための方法としてワークエンゲージメントが普及していました。

    現にアメリカのGoogleやAppleといった大手企業では、ワークエンゲージメントを大切にした働き方で、世界規模の大企業へと発展を遂げています。

    日本人はワークエンゲージメントが低い?

    2010年に日本を含めた16カ国のワークエンゲージメントスコアを比較した論文では、日本のスコアは相対的に低い状況にあることがわかりました。

    しかし、スコアを計測する質問項目に対しての回答は各国の文化などが多分に影響していることも考えられます。たとえば、日本の風習として、周りと協調してポジティブな感情を前面に出しすぎない考え方や、まじめで勤勉な考え方が評価される傾向があります。そのため、ワークエンゲージメントにおける重要な要素である「活力」「熱意」「没頭」を測る質問項目に対しても、控えめな回答が多くなる可能性があります。

    反対にアメリカでは、ポジティブな感情を前面に出すことが望ましく、自己肯定感も高い傾向にあると考えられます。

    つまり、日本の風習をもとに考えると、従業員の中に「活力」「熱意」「没頭」を内に潜んでいる人がいても、その思いを前面に出す人は少ないでしょう。
    一般的に日本のワークエンゲージメントスコアは低いと考えられがちですが、その背景には国ごとの文化の違いなども影響している可能性があるということです。

    しかし、ワークエンゲージメントを高めることについて、企業にとっても個人にとっても無駄なことはありません。企業ごとに従業員のワークエンゲージメントを測定することや、ワークエンゲージメントの向上施策を行っていくことは今後も重要視されていくでしょう。

    ワークエンゲージメントに関連する概念

    ワークエンゲージメントに関連する概念を紹介します。
    代表的なものには以下の3つがあります。

    • ワーカホリック
    • 職務満足感
    • バーンアウト

    それぞれの概念の特徴と関係性は以下の表の通りです。

    ワークエンゲージメント、ワーカホリック、職務満足感、バーンアウトはそれぞれ仕事への態度と活動水準を軸にして上記図の通り4象限に分けられます。たとえばワークエンゲージメントは活動水準が高く、仕事への態度も肯定的でバーンアウト(燃え尽き)と対極にある状態とされます。

    では、ワークエンゲージメントに関連する概念3つをそれぞれ解説します。

    ワーカホリック

    ワーカホリックとは、自分の趣味や健康よりも仕事を優先し常に働いていないと気が済まない人のことをいい、「脅迫的に働く傾向」と定義されています。

    ワークエンゲージメントと同じく活動水準は高めですが、「熱意」と「没頭」が欠けており、仕事に対する気持ちは低い状態。生活をするためには働かなくてはいけないという強迫観念や職を失うことに対する強い不安を内包している可能性があります。

    またワークエンゲージメントは「仕事をしたい」というポジティブな気持ちであることに対し、ワーカホリックは「仕事をしなければいけない」というネガティブな状態とも捉えられるでしょう。

    職務満足感(リラックス)

    職務満足感(リラックス)は、現状の仕事に対して満足している状態を指します。
    仕事への態度や認知は肯定的で高めですが、ワークエンゲージメントと比較すると活動水準は低いです。
    仕事に対する熱意は持っているため、いかに活動力を上げてもらえるかを考えなければいけません。

    バーンアウト

    バーンアウトは「燃え尽き症候群」としても知られる状態です。

    バーンアウトに陥ってしまう理由は、仕事に対してエネルギーを使いすぎてしまったからと考えられています。これによって心身が疲弊し、仕事に対する熱意や活力がなくなり、没頭できなくなってしまいます。つまり、ワークエンゲージメントの3つの概念いずれもかけている状態といえます。

    ワークエンゲージメントの調査指標

    ここではワークエンゲージメントを調査する指標を紹介します。主な調査指標は以下の3つです。

    • UWES
    • OLBI
    • MBI-GS

    UWES(Utrecht Work Engagement Scales)

    UWESは、ワークエンゲージメントを測定するための心理測定評価尺度として、世界中で広く使われています。

    「活力」「熱意」「没頭」という3つの要素を、17項目、9項目、3項目のいずれかで測定し、日本では17項目が採用されています。

    回答方法は次の7段階から選択します。

    ●決してない:0点
    ●ほとんど感じない:1点
    ●めったに感じない:2点
    ●時々感じる:3点
    ●よく感じる:4点
    ●とてもよく感じる:5点
    ●いつも感じる:6点

    3つの要素の平均値はワークエンゲージメントスコアとして、年代や業種ごとに測定して、社員の労働に対する意識の傾向を分析できます。
    なお、UWESは非営利目的のみ自由に使用可能です。

    OLBI(Oldenburg Burnout Inventory)

    OLBIは、ワークエンゲージメントと対局するバーンアウトを測定する方法です。

    質問内容は従業員の「疲労感」「離脱」という2つで構成されていて、「ポジティブ」「ネガティブ」それぞれの側面から作成された質問に答えます。

    測定結果の数値が低ければ低いほど、ワークエンゲージメントが高いということになり、数値が高ければ高いほどバーンアウトの傾向にあるといえます。

    MBI-GS(Maslach Burnout Inventory-General Survey)

    MBI-GSは、OLBIと同様ワークエンゲージメントと対局するバーンアウトを測定する方法です。
    測定内容は従業員の「疲労感」「シニシズム(冷笑的態度)」「職務効力感」の3構成で、16項目の質問に回答をすることで測定できます。

    16項目の回答に対しての数値が低ければ低いほど、ワークエンゲージメントが高いということになります。反対に数値が高いとバーンアウトの状態に近く、ワークエンゲージメントは低いといえます。

    ワークエンゲージメントを向上させるメリット

    ワークエンゲージメントを高めることで得られるメリットは以下の3つです。

    • 従業員の健康維持とパフォーマンス向上
    • 離職率の低下
    • 周りの社員への好影響

    従業員の健康維持パフォーマンス向上

    ワークエンゲージメントが高いと、活動水準が高く仕事への態度も肯定的なため、仕事に対してのパフォーマンス向上が期待できます。
    自身の仕事に対してプライドと熱意があることで仕事の効率化が進み、生産性も上がるでしょう
    またワークエンゲージメントが高いと、仕事に対してのストレスが低いため、メンタルヘルスも安定すると考えられます。心に余裕を持てるため、健康維持にもつながるでしょう。

    離職率の低下

    ワークエンゲージメントが上がることで個人の幸福感や仕事への自己効力感が上がり、仕事、会社に対する愛着がわくため、離職率の低下を見込めます。
    現代では人材不足で倒産する企業もあります。そのため、離職率の低下につながるワークエンゲージメントの向上は、人材不足に悩む企業にとってメリットといえるでしょう。
    また、定着率が高い企業と世間に認知されると、新たな人材を獲得しやすくなるため、企業の更なる成長を見込めます。

    新卒者の約3割が入社3年以内で離職している

    ワークエンゲージメントの向上は新卒者の職場への定着にも期待できます。
    厚生労働省の発表によると、離職者のうち、大卒新卒者の約3割が入社から3年以内に離職しています。また、以下のとおり高校、短大などの3年以内離職率は約3割以上となっています。

    ●高校: 36.9%
    ●短大など:41.4%

    令和3年の労働者全体の離職率は13.9%となっていることから、新卒者の離職率は高いことが分かります。今後労働人口が低下することを考えると新卒者は企業の将来を担う重要な人材です。そのため、ワークエンゲージメントを高めて、新卒者の離職率低下につなげましょう。
    参照:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況を公表します」
    参照:厚生労働省「-令和3年雇用動向調査結果の概況-」

    周りの社員への好影響

    ワークエンゲージメントが高い社員がいることで、周りの社員へも好影響を及ぼす可能性があります。ワークエンゲージメントが高い社員は仕事をポジティブに捉え主体的に動くため、その姿を通じて周囲の社員の仕事に対する姿勢にも変化が現れやすくなります。

    また、社員同士の好影響は顧客の信頼獲得にもつながるかもしれません。顧客からの信頼を得ることで顧客満足度、さらには売上が向上することで、社員はさらに自分の仕事に自信を持てるようになります。その結果、組織全体がさらに活性化していくでしょう。

    ワークエンゲージメントを高めるためには

    ワークエンゲージメントを高めるためには、「個人」「仕事」を見つめなおす必要があります。ワークエンゲージメント向上のためにはどちらか一方ではなく、両方とも充実させることが大切です。

    個人の資源と仕事の資源を充実させる

    個人の資源とは、従業員それぞれが内側に秘めている心理な部分です。
    個人の資源はストレスやモチベーション、自己効力感などによって低下していってしまいます。
    そのため、ストレスを軽減できるようなコミュニケーションや、モチベーションが上げられる環境作り、自己効力感が得られる評価やフィードバックを行うなどして、個人の資源の充実を図りましょう。

    一方、仕事の資源とは、仕事量や仕事の負担に関わる要因です。
    仕事量が多すぎる、仕事の負担が大きいといった場合は、自己効力感の喪失、熱意の低下を引き起こしてしまいます。
    仕事の資源を充実させるためには、個々に合わせた仕事量の分配、仕事の負担の調整を行うことで効果が出ます。

    どちらか片方だけを充実させてもアンバランスが生じ、「ワーカホリック」「職務満足感」「バーンアウト」のいずれかに傾くでしょう。
    どれか一部分に偏らないようにするためにも、個人の資源と仕事の資源を充実させなければいけません。

    まとめ

    人手不足による倒産を防ぎ、会社の業績を上げるためには、ワークエンゲージメント向上への取り組みが欠かせません。
    ワークエンゲージメントを高めることで社員の生産性が向上し、離職率の低下につながります。
    離職率の低さは求職者にとって、企業を判断するポイントのひとつ。自社の魅力として打ち出すことで新たな人材を確保しやすくなります。
    社員の心理面や業務量のバランスを取り、ワークエンゲージメントを高めて、個人はもちろん会社全体の成長につなげましょう。

    FAQ

    ワークエンゲージメントについてのよくある質問です。

    ワークエンゲージメントの3つの構成要素とは?
    ワークエンゲージメントとは、オランダにあるユトレヒト大学のSchaufeli教授が提唱した概念で、「活力(仕事で活力を得て活き活きと生活している)」
    「熱意(仕事に誇りとプライドをもっている)」「没頭(仕事に対して熱心に取り組んでいる)」の3つの要素が揃った状態を指します。
    ワークエンゲージメントの対義語は?
    ワークエンゲージメントの対極にある概念が「バーンアウト(燃え尽き)」です。仕事に対してエネルギーを使いすぎて心身共に疲弊し、仕事に対する情熱や意欲、関心が無くなっている状態です。
    ワークエンゲージメントのメリットは?
    ワークエンゲージメントが高い企業は従業員のパフォーマンスが高い、離職率が低いなどの共通点があり、人材の流動性が高まっている昨今では優秀な従業員を定着させるための施策としてエンゲージメント向上が重要視されています。

    この記事を書いた人

    M.F

    株式会社アックスコンサルティング マーケティング本部 WEB制作課所属。
    『HR BLOG』にて一般企業の経営者・人事担当者向けの記事を執筆するほか、主にメールマガジンで士業事務所の経営課題を解決するための情報配信を行っています。

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