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【第5回】 これって「パタハラ」?新設営業所の所長候補は育休明けの男性社員

Q3.その配置転換、本当に会社、社員のためになっていますか?

「将来、会社のリーダーとして組織を引っ張っていく存在になってほしい」という期待から、企業によっては有望な新入社員を「ゼネラリスト」として育成しようと、あえてさまざまな部門に配属して業務を知ってもらうケースがあります。このように社員のキャリアパスを考えながら計画的に行う人材配置であれば、会社にも社員にもメリットはあります。しかし、世の中には「育休復帰後に遠方の支社へ転勤させられた」「転勤OKという条件で入社してもらったのに、いざ入社したら転勤を断られた」など、配置転換にネガティブな印象を与える事例がまだ少なくありません。会社は社員の配置転換をどのように進めたらスムーズに行えるのでしょうか。そして社員はどうしても納得できない人材配置について、どう対応したらよいのでしょうか。人事・労務トラブル解決のプロフェッショナルである社会保険労務士の五味田匡功(ごみたまさよし)先生にアドバイスしていただきます。

ケース01:これって「パタハラ」?新設営業所の所長候補は育休明けの男性社員

社員の平均年齢が20代後半の営業会社で人事担当役員をしています。ほとんどが男性社員で、成績優秀な営業社員は追加報酬により他業種の同世代と比べても給料がいいです。さらに、経済的に安定しているためか結婚が早く、子供を持ち、マンションなどの購入ローンを組んでいる社員も少なくありません。

今までは東京の一拠点でのみ営業してきましたが、社員たちの頑張りもあり、大阪にも営業所を出せるまでに成長しました。そこで悩んでいるのが、大阪営業所の所長候補です。新しい営業所を任せるなら「ぜひこの人に!」と候補は決まっているのですが、ちょうどその男性社員が育休中で、営業所の開設と彼が育休から戻るタイミングが同じ時期になりそうです。ちょうど「パタハラ※」が世間を騒がせている時期でもあり、本人含め男性の育休取得に対する嫌がらせと思われないか懸念しています。

今の社員が入社するときは、大阪に拠点を持つ予定がなかったので、就業規則に転勤の可能性を記載していません。男性の育休は、所長候補に限らずこれまでに何名か取得しています。転勤を受け入れられそうな独身男性は入社間もない若手社員が多く、まだ所長を任せられるほどではありません。彼以外の所長候補になりえそうな社員も持ち家だったり、幼いお子さんがいたりと似たような状況です。とはいえ経営判断上、営業所の新設を先延ばしにしたくありません。

本人や社内に不信感を持たれないように、転勤を打診するにはどのように進めたらよいでしょうか。また、この機会に就業規則に転勤に関する記載も盛り込みたいと考えています。

※パタハラ:パタニティ(父性)ハラスメントの略で、会社から父親としての働き方について嫌がらせされること

A.まずは「就業規則の改定」を。「新しい営業所を出す」のは手段であって目的ではないから、先に人材の課題を解決すること。転勤にあたり本人の同意が必要なので「合意事項」を決めて、転勤を受け入れる社員に対するサポートを検討してみてはいかかでしょうか。

質問内容から見ると今回のケースの場合、状況を読みきれないのですが、今回はまだ新設営業所の所長候補に内容を伝えていない前提で回答します。

まず「就業規則の改定」が必要ですね。就業規則に転勤の可能性を記載していない以上、入社してくる社員たちも転勤がない想定で入社していますから、大阪に新しい営業所ができて転勤の可能性もできることを周知しなければなりません。そして「就業規則の改定」を行ったうえで、転勤の対象となる本人との同意が必要となります。本人の同意がないまま一方的に転勤を命じるのはNGです。

今回の質問で気になったのが、「新しい営業所を出す」という経営戦略上の手段が目的になってしまっているところです。所長候補に断られたら他に適切な人材が社内におらず、大阪に行く人がいなければ当然営業所を出すことはできません。これを無理に誰か大阪に行かせたところでパフォーマンスは下がるし、最悪の場合、会社を辞められたら元も子もありません。

とはいえ、「会社をより成長させるために新しい拠点を出したい…」という会社側の気持ちもくみ取る必要があります。だからこそ、このような場合に備えて、会社と社員の「合意事項」を初めにきちんと決めておくことが必要になります。

合意事項として転勤する代わりに補填できるもの、たとえば購入した家のローンを加味した手当てや、家族と一緒に転勤できるような支援などを検討するというのも一つの手段です。それでも、どうしても今の社内から転勤させられる人材がいない、ということであれば、必要なスキルがあり、転勤が可能な人材を採用することも視野に入れてみてはいかがでしょうか。

あとは、その内示を伝えるにあたり、どのように候補者にそのことを伝えるかにもよります。新しい営業所の所長を任せるくらいですので、その方に会社としても将来のリーダーとして期待をしていることだと思います。企業によっては、エース社員を各営業所の所長として経験を積ませてから、本部の主要な役職につかせるという、いわゆる「出世コース」にしているケースもあります。「会社としてもあなたに期待しているからこそ、あえて支社長を任せたいんだ」という会社の気持ちをストレートに候補者へ伝えるかどうかで、本人の受け止め方も変わってくるのではないでしょうか。

男性社員も育休が取れる会社であれば、会社の働き方に関して社内の改善意識は高いとお見受けします。「会社の成長のために新しい営業所を出したい」、「ぜひとも成功させたい」、「そのためには期待している候補者にぜひ任せたい」、という熱い思いを正直に伝えてみてはいかがでしょうか。そのうえで、「これから就業規則なども整えていくから転勤にあたり不安なことなど一緒に解決していこう」とお互いに「合意事項」を決めていくのがよいのではないかと思います。

ホワイト企業認定の代表理事からの金言

一方的に転勤を通知するのでなく、「期待しているからこそ候補者に任せたい」という強い思いを伝えてみてはいかがでしょうか。そのうえで、就業規則を改定し、社員と一緒にお互いの「合意事項」を決めて、転勤する社員向けのサポートも合わせて整備をしていきましょう。


今回の回答者
五味田 匡功(ごみた まさよし)氏

ソビア社会保険労務士事務所 所長 社会保険労務士/中小企業診断士
一般財団法人日本次世代企業普及機構(通称:ホワイト財団)代表理事

ホワイト財団が提供する「ホワイト企業認定」とは?

ホワイト企業認定

次世代に残すべき素晴らしい企業を発掘し、 「ホワイト企業」として認定します。

ホワイト財団は、“次世代に残すべき素晴らしい企業”を発見し、ホワイト企業認定によって取り組みを評価・表彰する組織です。

私たちが考える「ホワイト企業」とは、いわゆる世間で言われている「ブラック企業ではない企業」ではなく、労働法遵守は大前提とした下記のような企業が、ホワイト企業と呼ぶにふさわしいと考えています。

  1. 健全なビジネスを続けられる優れたビジネスを行う企業
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この記事を書いた人

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