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日本における「働きがいのある会社」女性ランキング発表!早稲田大学教授・大湾秀雄氏による専門家講演も
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3月8日は国際女性デー。それに先駆けて、3月2日に株式会社働きがいのある会社研究所(Great Place to Work® Institute Japan、以下GPTWジャパン)から「2023年版 日本における『働きがいのある会社』女性ランキング」が発表されました。
本ランキングは、2021年7月~2022年9月の調査結果から同社が認定した「働きがい認定企業」のなかから、特に女性の働きがいに優れた企業を選出したもの。企業規模別にTOP5が発表されました。
目次
2023年版 日本における「働きがいのある会社」 女性ランキング
⼤規模部⾨ (1,000⼈以上)
- 1位:レバレジーズグループ (東京都・サービス業(他に分類されないもの))
- 2位:アメリカン・エキスプレス (東京都・⾦融業,保険業)
- 3位:ディスコ (東京都・製造業)
- 4位:FPT ジャパングループ (東京都・情報通信業)
- 5位:マネーフォワードグループ (東京都・学術研究,専⾨・技術サービス業)
中規模部⾨(100-999⼈)
- 1位:フロンティアホールディングス (大阪府・不動産業,物品賃貸業)
- 2位:アチーブメント (東京都・学術研究,専⾨・技術サービス業)
- 3位:コンカー (東京都・情報通信業)
- 4位:ナイル (東京都・情報通信業)
- 5位:SThree (東京都・サービス業(他に分類されないもの))
⼩規模部⾨(25-99⼈)
- 1位: Aphros Queen (東京都・サービス業(他に分類されないもの))
- 2位:あつまる (東京都・情報通信業)
- 3位:現場サポート (鹿児島県・情報通信業)
- 4位:Cornerstone Recruitment Japan (東京都・サービス業(他に分類されないもの))
- 5位:コラボスタイル (愛知県・情報通信業)
「働きがいのある会社」女性ランキングの傾向
GPTWジャパンでは、これまで世界約100カ国の企業に対して「働きがいのある会社」の調査・分析を行っています。
そのなかで、調査において一定基準を満たした企業を「働きがいのある会社」として月に1回認定。さらに、その認定企業の中から特に働きがいに優れた企業ベスト100社を、年に1回ランキング形式で発表しています。
※詳細:2023年版 日本における「働きがいのある会社」ランキング ベスト100
今回発表された「女性ランキング」は、先述の通りその認定企業の中から、女性の働きがいの観点において高いスコアを出している企業がランクインしています。
さて、最新の調査結果において気になるのが男女の働きがいスコアの差。GPTWジャパン代表・荒川氏によると、全60問の「従業員意識調査」のなかで、女性の方が高いスコアを記録した設問は8問のみだったといいます。
そのなかでも特に男女差が開いたのは仕事に対する「誇り」の設問でした。「私の仕事には特別な意味がある」と感じている女性は54.2%だったことに対し、男性は63.0%という結果になっています。
さらに、女性管理職比率が高い職場は働きがいスコア(※)も高いという相関がみられました。
(※働きがいスコア:GPTWの調査において「総合的に見て働きがいがある」という設問に対して「しばしば当てはまる」「ほとんど常に当てはまる」と回答した人の割合)
早稲田大学政治経済学術院 教授 大湾秀雄氏による専門家講演も
今回のランキング発表会では、早稲田大学政治経済学術院教授 大湾秀雄氏による専門家講演も行われました。
講演内では、男女賃金格差の主たる要因や、その格差の縮小方法についての提言がありました。男女賃金格差の要因については大きく2つあるとされます。
1つは、日本には長時間労働をすればするほど賃金が増える仕事が多いということ。さらに職が標準化されていないため、従業員・仕事の代替性が低いという問題があります。それによって仕事が属人化し、長時間労働が加速してしまうのです。
そして、「仕事」は大きく分けるとルーチンワークなどの「柔軟性が高い仕事」と、経営者・コンサルタントに代表される「柔軟性が低い仕事」の2種類があるとされます。
そういった状況において、家庭のなかで家事・育児の大部分を担っている女性は時間の制約が強いため、時間の柔軟性が高い職業につくことになります。結果、長時間労働ができる柔軟性が低い仕事についている他の女性や男性と比較して賃金が低くなる傾向があります。
このように子供を産んだ女性の所得が減ってしまう「チャイルドペナルティ」や「マザーフッドペナルティ」と呼ばれる現象は、依然としてジェンダー平等における大きな課題です。
男女賃金格差の2つ目の要因としては「ジェンダーバイアス」が挙げられます。
たとえば、能力や評価が同じ男性社員と女性社員がいたとして、性別が違うだけで異なる評価や職を与えられるようなケースを指します。
この原因の1つは「ジェンダーステレオタイプ」にあると大湾氏は指摘します。ジェンダーステレオタイプとは、特定の性別に対しての固定概念や偏見のことです。このステレオタイプに合致しない人が現れた場合、その人自身が否定され評価が下がってしまうというケースがあります。
また、ジェンダーバイアスには「統計的差別」も含まれます。
たとえば、ある企業において「女性は離職率が高い」というデータがあったとします。そのうえで、能力や評価が同じ男性社員と女性社員がいたとしても、過去のデータから投資リターンの高い男性社員の方に成長の機会を与えていくというケースがあります。これは一見合理的な判断のように思えますが、そもそもその企業が男女を平等に扱っていたら離職率は変わっていたかもしれません。このように、統計データのなかには自己成就的な側面があることを大湾氏は指摘しました。
これらの男女賃金格差の解決について、大湾氏からは「男女格差を解決するにあたり組織的責任を明確にすること」「性別職域分離やチャイルドペナルティを解決するための人事制度改革を実行すること」「ジェンダーバイアスに関する研修や管理職へのフィードバックを行うこと」「人的ネットワーク・情報ネットワークの男女格差を縮小する施策を行うこと」などの解決策が挙げられました。
大湾秀雄氏×GPTWジャパン荒川代表によるトークセッション
大湾氏の講演の後には、荒川氏とのトークセッションが行われました。以下、一部やり取りをご紹介します。
従業員のやりがいを引き出すには?
「従業員のやりがいを引き出すには?」というテーマについて、荒川氏から大湾氏へ以下のような質問があがりました。
荒川氏「我々GPTWジャパンは、『働きやすさ』と『やりがい』の2つをセットにして『働きがい』と定義しています。これまで日本企業は、女性の活躍を広げていく際に『働きやすい』労働環境の整備に注力してきたと思います。しかし、これからは『やりがい』にも目を向けないといけないと思っています。このあたりはどうでしょうか」
大湾氏「『やりがい』に影響を与える要因はたくさんあると思っています。
私は、日本企業において一番大きな問題は『自律的なキャリア形成ができない』ことだと思っています。自律的なキャリア形成ができることで、仕事に興味を持って、自分からスキルを身に着けていこうというモチベーションにつながるんですね。
それができる職場はどういうものかというと、社内のキャリアが標準化・体系化されている、可視化されているということが特徴だと思います。『あの人のようなキャリアを歩みたい』と考えたときに、それをイメージできるかどうかということです。
人事権が現場に落とされていることも重要です。採用・育成・異動いずれにしても現場社員に選ぶ権利があるという仕組みにすることで、社内に内部労働市場が出来上がります。この内部労働市場を通じたプレッシャーによって、職場をよくしていこうというモチベーションが生まれる。このプレッシャーを多くの管理職が持つことが大事ですね。
それから、社員が自分の行きたい職場を選べる仕組みを導入することですね。『自分が何をしたいのか』ということを、入社した時から長期的に考え続けることができる環境です。人事部が本人の希望を考慮することはありますが、多くの場合は人事部の都合で人が動かされています。そうなると『自分が将来何をするのか』がわからない、なかなかキャリア展望が描けない、ということになります。だからこそ、キャリア展望があれば、そのキャリアのためにどういったスキルや経験が必要かを考えて行動できるので、『働きがい』のある働き方が実現できるのではないでしょうか」
トークセッション内では「仕事の面白さ」の国際比較などのデータ解説もあり、日本企業が抱える課題が浮き彫りになりました。
HR BLOG編集部より
『働きがいのある会社』ランキングベスト100のサブランキングとして発表された今回のランキング。日本企業が抱えるジェンダーの問題や、「働きがい」の課題を改めて見つめ直すきっかけとなりました。
金融庁から発表された改正により、有価証券報告書への女性管理職比率や男女の賃金格差の記載が求められるようになりました。投資家が企業価値を見極める要素として盛り込まれたものですが、まずは従業員のキャリアを第一に考えることが重要です。さらに、管理職が率先してダイバーシティ&インクルージョンへの理解を持ち、施策の実行やKPIの可視化に責任を持つことが今まで以上に重要視されるでしょう。
この記事を書いた人