労務110番
これってあり?制服代を給料から天引き…
公開日:2019.3.11
当社は飲食店を経営しており、制服代として毎月300円を給料から天引きしています。しかし、従業員から「仕事で使うものを個人が負担するのは違法ではないか?」という意見が出ました。給料から天引きするのは違法なのでしょうか?
労使協定の締結が必須!
『賃金支払の原則』の一つとして、労働基準法第24条第1項にて『賃金は、全額を支払わなければならない』と定められています。つまり、制服代などを“勝手に”賃金から天引きすることは禁じられているのです。ただし、以下のケースについては天引きが認められています。
(1)社会保険料や税金など、法令に定めがある場合
(2)労働組合(※1)と労使協定を締結した場合
したがって、“制服代を給料から天引きすること”をあらかじめ労使協定で締結している場合、労働基準法第24条に関しては“違反ではない”といえます。
雇用契約書などへの明記が不可欠
労働基準法第15条第1項にて『使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない』と定められています。なお、この“その他の労働条件”には、『労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項』も含まれると労働基準法施行規則第5条に規定されているのです。
そのため、雇用契約書や労働条件通知書などに“制服代を給料から天引きする旨”を明示し、雇用契約の際に従業員から同意を得ていれば、労働基準法第15条にも“違反していない”といえるでしょう。
就業規則への明示義務あり
常時10人以上の労働者を使用する場合には、就業規則を作成し、行政官庁(労働基準監督庁)に届け出る義務があります。そして、就業規則の相対的必要記載事項(※2)として、『労働者に食事、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、これに関する事項』を必ず明記しなければなりません(労働基準法第89条)。
つまり、就業規則に“制服代を給料から天引きする旨”を規定していれば、労働基準法第89条についても“違法ではない”といえます。
高額な自己負担額はNG!?
以上のことから、労働組合(※1)と労使協定を締結し、雇用契約書や就業規則に“給与から天引きする旨”を明記していれば、違法とはならないでしょう。
ただし、常識的な金額から逸脱する“高額な自己負担額”は認められない可能性もあるので注意が必要です。
制服代などを給料から天引きする場合は、必ず雇用契約書などに明示した上で、雇用契約をする前に従業員に口頭でも説明するとよいでしょう。
※1労働者の過半数で組織される労働組合。なお、労働組合がない場合は、労働者の過半数を代表する者。
※2定めをする場合、必ず記載しなければならない事項。
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