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ゼネラリストとは?スペシャリストとの違い、それぞれのメリットと特徴
公開日:2022.6.20
企業を動かす存在として重宝されるのがゼネラリスト、スペシャリストです。
似た言葉ではありますがそれぞれの役割はまったく違います。
ゼネラリストとはスぺシャリストとどう違うのか、ゼネラリストのメリットとデメリットについて、さらにゼネラリストは時代遅れと言われ始めている理由について解説します。
企業の経営を続ける上で欠かせないゼネラリストとスペシャリストの双方についてきちんと理解しておくことが大切です。
目次
ゼネラリストとは?
ゼネラルには「全体的な」という意味があります。
そのため、ゼネラリストとは企業内において全体的な知識を持つ人材、広範囲をカバーできるスキルを持つ人材を指します。
ゼネラリストは一つの業務に専念するのではなく、総合的に物事を判断し、全体を引っ張っていくような仕事が多いです。
特徴
ゼネラリストは広い視野で物事を判断します。そのため、一つの業務に集中しているだけでは見えてこなかった問題点に気づくことができたり、その問題を解決するための方法を考えたりすることができます。
一つの部署と連携を取るのではなく複数の部署と連携しながら働くので横のつながりも強固になり、協力を得やすいという特徴もあります。
問題が起きた際に臨機応変に対応できるのもゼネラリストの特徴の一つです。
日本は少子高齢化やデジタル化、グローバル化が進み、これまで通りの経営では成り立たないシーンも増えてきました。昨今の新型コロナウイルスの影響により経営状況が著しく変化した企業も多いです。
そんな中でも物事を多角的に捉えられるゼネラリストがいれば、早急に対応することが可能で、厳しい業界の中を生き残る糸口を見つけられます。
強み
ゼネラリストは幅広い業務をカバーできるという強みがあります。
人員が欠けてしまった部署に異動してもすぐ業務内容に適応できるというメリットがあるため、新たに求人をかける必要がありません。
求人にはコストも手間もかかるため、その必要がないゼネラリストの存在は企業にとって強みになります。
また、多くの業務をカバーできることは企業にとって役立つだけでなく転職の際にも選択肢が増えます。同じようにゼネラリストを求める企業に転職したり、一つの分野に特化した業務にチャレンジすることも可能です。
適した仕事
ゼネラリストは管理職やマネージャーといった上層部の仕事に適しています。
さまざまな業務を経験した上でチームの上司になれば、偏った考え方をせずに現状を冷静に判断できます。物事を判断する場面が多い管理職、マネージャー職はゼネラリスト向きの仕事です。
他にも少数で業務を回さなければならないベンチャー企業、さまざまな業務をこなしていかなければならない総務、採用スケジュールや採用後のフォローなどをおこなう人事もゼネラリスト向きの仕事です。
向いている人材
ゼネラリストは企業で育成することが可能ですが、その中でも向いている人材と向いていない人材があります。
ゼネラリストに向いているのは、視野が広く一つの業務に固執しない考え方を持つ人材です。
意見に偏りがなく、周囲より一歩引いたところから全体を見ているような人物もゼネラリスト向きです。
また、ゼネラリストは将来的に人の上に立つ業務を任されることが多いです。そのため、ある程度出世の意欲がある人材である必要もあります。
出世欲があれば一つの企業に留まって着々と準備を進め、知識を蓄えていくことが可能です。また、ゼネラリストの育成をするためにも本人の出世欲がそれを学ぶためのモチベーションにつながります。
育て方
ゼネラリストを育成するためにはさまざまな業務に触れさせる必要があります。
そのため、ジョブローテーションを導入するのが最善です。それぞれの仕事を経験でき、それぞれの仕事ならではの大変さややりがいを実感できます。
複数の部署でのつながりも築けるため、上層部になったときにも信頼されやすいです。
ジョブローテーションは複数の業務を経験する中で自分の得意なことを見つけ出すきっかけにもなり、ゼネラリストだけでなくスペシャリストを育成するのにも役立ちます。
おすすめの研修
ゼネラリストを育成する研修として有名なのがOJTです。
オン・ザ・ジョブ・トレーニングの略称であるOJTは、実際に業務をおこなう場面を見せながら業務を覚えさせる方法です。
実際に説明しながら作業をさせることでより取り組みやすくなり、問題があった際も即座に指摘できるため、効率的な教育が可能です。
ゼネラリストを育成するためには各部門でOJTを実施し、素早く業務を覚えていくことが大切です。
他にも社外でゼネラリストを育成する研修を受けさせる方法もあります。さまざまな業務に対応できるものの管理職や上層部のポジションに就かせるには不安がある人材には、このような研修を受けさせることもおすすめです。
ゼネラリストのメリット
ゼネラリストを育成することのメリットを3つ紹介します。
チームリーダーになりやすい
ゼネラリストは広い知識やスキルを持っているので、チームのリーダーに適しています。
さまざまな角度から物事を判断できる、従業員とコミュニケーションを円滑に取れる、業務の管理や進捗状況の把握、スケジュールの作成が得意なので、ゼネラリストがチームのリーダーや上司になれば円滑に業務を進めやすくなるでしょう。
柔軟性のある異動、転職ができる
ゼネラリストはさまざまな分野に対応できるため、柔軟性のある異動ができます。
人事から総務へ、営業から企画へなど、欠けた人員をゼネラリストで補充できるのが大きな魅力です。
また、転職を考える際にもさまざまな経験があることは選択肢を広げるのに役立ちます。
広い視野で問題点を見つけられる
ゼネラリストは多くの業務を経験しているため広い視野で問題点を見つけやすいです。
その部署から、スペシャリストからは見えなかった問題を見つけ、解決するのに役立ちます。
問題を解決する際も他部署と連携したり、的確なアドバイスをしたりしやすく、社内の業務効率化、生産性向上に役立ちます。
ゼネラリストのデメリット
ゼネラリストにはメリットがある一方でデメリットもあります。
とくに近年はゼネラリストの需要は低下していますので、育成する際はデメリットにも注意しておきましょう。
専門的なスキルが身につかない
ゼネラリストは多くの知識や経験を得られる一方で専門的な知識やスキルは育ちにくいです。
ゼネラリストが対応できるのは広く浅い部分で、スペシャリストは狭く深い部分に対応します。
専門的な知識、スキルが必要な業界、部署においては、ゼネラリストは役に立たないケースもあります。
転職が難しい場合も
ゼネラリストは多くの経験ができますが、その知識やスキルはスペシャリストには劣ります。
そのため、転職の際に不利になる可能性もあります。
同じ部門にゼネラリストとスペシャリストが応募してきた場合、ジョブ型雇用では専門的なスキル、経験を持つスペシャリストの方が有利です。
また、ゼネラリストは人員の配置替えが比較的簡単という理由から雇用が安定しにくいという問題もあります。
スペシャリストよりも収入は低い
ゼネラリストはスペシャリストと比較すると収入が低くなりやすいです。
ゼネラリストは年功序列の社風が強い企業で育成しやすく、勤続年数が長ければそれだけ年収が上がります。ですが若手の内はいくら成果を出しても評価されにくいです。
現状の待遇に不満を抱いていても転職すればまたキャリアをやり直さなければならず、非常に非効率です。
一方でジョブ型雇用で採用されたスペシャリストは成果に見合う評価を受けられるので、実力があれば若い内からより多くの収入を確保できるという魅力があります。
ゼネラリストが時代遅れと言われはじめた理由
ゼネラリストは近年、時代遅れとする考え方もあります。
近年はゼネラリストではなくスペシャリストを求める傾向が強く、ゼネラリストを育成しても無駄になってしまう可能性があります。
スペシャリストは一つの分野に特化した存在ですが、これは業務内容や成果が明確です。
一方でゼネラリストは臨機応変に対応できる、周囲を客観的に見られるなど、成果が見えにくく仕事を依頼しにくいです。
ゼネラリストを育成しやすいメンバーシップ型雇用は日本では一般的ですが、スペシャリストが育ちにくいため専門性を求められる分野においては時代遅れとされています。反対にスペシャリストを育成しやすいジョブ型雇用が注目されており、ゼネラリストの需要は徐々に下がりつつあります。
一方でゼネラリストが完全に不要になるわけではありません。
企業全体の問題を見極め、まとめ上げ、多くの部下を引っ張っていく存在は企業の成長には必要不可欠です。
各部門のスペシャリストの専門的な意見を抽出し、ゼネラリストがまとめるという連携が企業を成長させるために大切です。どちらかが完全に不要というわけではありませんので、極端にどちらかを排除するようなことのないようにしましょう。
ゼネラリストの対義語はスペシャリスト
ゼネラリストの対義語にスペシャリストがあります。
ゼネラリストがオールラウンドに対応できる人材であるのに対して、スペシャリストは特定の分野において特化した人材を指します。
専門的な知識やスキルを持ち、一つの内容に集中した業務をおこないます。自身の得意なこと、好きなことを仕事にしているケースが多いです。
視野が狭く、一つの視点からしか物事を判断しにくいという問題点もあるため、スペシャリスト気質の人材をゼネラリストに育成しようとしても得意でない業務、興味のない業務にはモチベーションが上がらす生産性が低下してしまうのが問題です。
ゼネラリストかスペシャリストどっちを雇用すべき?
日本の従来のメンバーシップ型雇用ではなく欧米で一般的なジョブ型雇用が注目され始めている昨今では、スペシャリストではなくゼネラリストの育成が重要とする考え方もあります。
人材を採用する場合ゼネラリストとスペシャリストのどちらを雇用すればいいのかを考えてみましょう。
メンバーシップ型雇用を続けるならゼネラリスト
一括で人材を大量に雇用し、その上でさまざまな業務を与えて人材を育成していくのがメンバーシップ型雇用です。
このメンバーシップ雇用は終身雇用、年功序列といったシステムが基本で、離職率が低く雇用保障が手厚いというメリットがあります。
現状このメンバーシップ型雇用を続ける予定の企業であれば、ゼネラリストを採用するのがおすすめです。
さまざまな業務を与えて人事異動、業務変更に対応できる人材を育てられます。
ジョブ型雇用を導入するならスペシャリスト
近年日本でも注目を集め始めたのがジョブ型雇用です。
従来のメンバーシップ型雇用とは違い、与える業務を事前に限定して募集をかける採用方法です。
定められた内容の業務にしか対応しないためスペシャリストが育ちやすく、かつスペシャリストが必要な際に力になってくれます。
ジョブ型雇用は成果を重視した評価をするもので、メンバーシップ型雇用のような終身雇用や年功序列のシステムはありません。
若くても経験が浅くてもスキルさえあれば高い評価を得られるので、スペシャリストがより活躍しやすいです。
ゼネラリストの必要性を今一度理解しよう
企業の成長に必要なゼネラリストについて、その特徴やメリット、デメリットを紹介しました。
さまざまな分野に対応し、広い視野で物事を判断できるゼネラリストはこれまでの日本企業には欠かせない存在でした。
ですがジョブ型雇用が注目され始め、ゼネラリストの重要性は下がり、その代わりにスペシャリストの需要が高まりました。
だからといってさまざまな意見をまとめて判断するゼネラリストが完全に不要になるというわけではありません。
今一度ゼネラリストの必要性を正しく理解し企業にとってどんな人材が必要なのかを見極めましょう。
この記事を書いた人