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新入社員でも「会社批判」! 持続的な成長を実現する組織風土とは!?

公開日:2019.11.13

    はじめに

    誰もが知るような大手企業のスマートフォンアプリやWebサイトの開発・制作を、数多く手がけている株式会社ゆめみ。創業以来、さまざまな社内制度を打ち出し、「勉強し放題制度」などの「多様なワークライフスタイルへの対応」「副業し放題制度」など、社員育成に力を注がれています。2018年には「アジャイル組織宣言」を行い、自律・分散・協調を特徴とした先進的な組織開発に取り組みながら、2019年4月には異例ともいえる「メンバー全員CEO制度」を導入。現在の200名規模の企業から「1,000人企業」への飛躍を目指して成長を続けられています。

    同社にあるユニークな社内制度や文化のなかで、一際ユニークなものが「会社批判」。この「会社批判」は、新入社員や中途社員のオンボーディングの中に「会社批判ができるようになる」ことが目標として設定されているといいます。今回はそんな株式会社ゆめみの成長の一旦を担う「会社批判」という独自の文化がどのような背景で生まれ、どのような効果を生み出しているのか、そして、1,000人企業を目指すうえでのこれからの組織づくりやオンボーディングのポイントについて代表取締役を務める片岡俊行氏にお話を伺いました。

    「会社批判」とは社員全員で会社をつくり上げるための文化

    一般的に『会社=経営者』と捉えられがちですが、経営者はあくまでも組織の役割の一つでしかなく、私たちは、『経営者と社員が作り出す人格=会社』として捉えています。その上で会社というひとりの人格がどうあるべきかということについて皆で議論していくことを大事にしています。

    実は「会社批判」という取り組みは、創業時から創業メンバー同士の間では当たり前に行われてきたことなのです。というのも、創業メンバーはみな大学院の同級生で、当時から社長を務めていた私の意見に対しても率直に「それってどうなの」と“ツッコミ”をしてくれていました。創業当初からどのような立場であっても意見を交換し合える「批判的思考」、これはクリティカルシンキングと呼ばれているものです。社長と社員の関係性はあくまでも役割でしかなく、会社という人格をより良いものにするための風土づくりを大切にしてきました。この考え方が創業当初から強く根付いていたと思います。

    また、弊社のお客様はそれぞれの業界の中で先進的な企業が多く、新しいインターネットサービスを先駆けて展開されている企業ばかりです。弊社はそのようなお客様からの依頼内容をただこなすだけではなく、ともに議論し合いながらより良いサービスづくりを行っており、そこがお客様から評価されているポイントであると自負しています。今後も新たな価値を生み出し続け、サービス向上を図るためには常に批判的思考の姿勢を忘れず、現状に満足することなく高みを目指し続けられる組織であることが必要だと感じています。

    「会社批判」がもたらす2つの効果

    「会社批判」で最も重要なポイントは、人格を非難するような個人批判は厳禁であることです。もし個人を批判したり他人に愚痴を言っている人がいれば、それは「会社批判」ではないと指摘し、会社批判のあり方を伝えています。そして社員の誤った認識の歪みを矯正することで、社員の変容を支援していくことができます。このように「会社批判」には社員全員でより良い組織の実現を目指すだけでなく、誤った考えをあぶり出す効果もあるのではないかと考えています。

    新入社員のオンボーディングにも「会社批判」を取り入れる

    新入社員向けにもオンボーディング施策の一環として「会社批判」を取り入れています。これからのさらなる組織成長を視野に入れると、どうしても早期戦力化が重要になってきます。それには、早い段階から「会社批判」をできる環境を整えていく必要があると考えています。弊社の事業内容は大規模なサービスが多く、細かなミスがプロジェクト全体に大きな影響を与えてしまいかねないので、プロジェクト毎にルールが細かく決まっている一方で、会社全体として社員の主体性や挑戦を促す文化もあり、新入社員はルールに従うべきなのか、自発的なアクションを起こしていくべきなのかで、戸惑ってしまうことが多くありました。その結果、数年前までは、入社後、まずは会社のルールに従うことを優先しており、自分なりの意見を言うことは、慣れてきた半年後などとなっていました。しかし、それでは戦力化までに時間がかかると感じて、新入社員に対して、積極的に「会社批判」を推奨し始めました。
    その他にも具体的なオンボーディングプロセスとして、前述の「会社批判」の他に、4つの行動目標を定めています。それは、「学びのアウトプット」、「アファーメーション(自身の決意や目標を宣言する)」、「喜怒哀楽などの感情を表す」、「分からないことをきちんと質問する」で、オンボーディング期間は2~3ヵ月程度に設定しています。5つの行動目標の中で最もハードルの高い「会社批判」を達成した新入社員から順番に、入社前から用意しているオンボーディング用のコミュニケーションツール(Slack)から抜けていくルールになっていますが、これをオンボーディング完了の基準にしています。適切な「会社批判」ができているかどうかの判断は私が直接行っているんです。

    入社前から付与しているコミュニケーションツールを使って、事務的な連絡だけでなく、さまざまな社内状況を共有して入社時からすぐに仕事のスタートが切れるような工夫もしています。分からないことがあった場合はコミュニケーションツールを通して現場の社員に質問することができるようにしているので、あらかじめ新入社員が抱える不安要素を取り除くということはできていると思います。

    また、「ウェルカムランチ制度」も社員からの評判が高い制度の一つです。これは新しく入社したメンバーが早く職場に馴染めるようにチームでランチに行ってもらい、その食事代を1ヵ月間補助する制度です。既存社員も新入社員と出かければランチ代がタダになるので利用している社員は多いです。結果として、新入社員との交流が活発になるので会社としては非常に喜ばしいことだと実感しています。

    オンボーディング施策以外にも、社内制度の多くは現場のメンバーの声から生まれてきました。例えば「有給取り放題制度」は、育児や介護を抱える社員が仕事を続けられなくなるという状況が起きたことから生まれた制度です。これからの介護社会を考えたときに、必ず必要になってくる制度であると感じたので海外企業の事例をみながら社内導入をすすめました。「有給取り放題制度」は、社員が将来に対しての不安を少しでも解消して、安心して働ける環境づくりを作ることをコンセプトに用意している制度です。その名の通り、無制限に有給休暇を取得することができます。

    社内制度をいかに組織に浸透させるか

    経営的な観点から即座に利用を促進させたい制度がある場合、弊社の場合で例えると、技術情報の投稿サービスの『Qiita』やブログサービスの『note』での社員の自発的なアウトプットを促進したいというケースがありました。こういった場合に考慮したいのがキャズム理論の考え方です。社内のイノベーターにあたる人たちは自ら行動しますが、社内に制度を浸透させるためにはアーリーアダプターやアーリーマジョリティーを巻き込む必要があります。そのような場合、まずアーリーアダプターを巻き込むために社内キャンペーンを実施します。この場合は金銭的インセンティブを用意して社内の注目を集めるようにします。ただこのようなキャンペーンは短期間で行うことによって効果を発揮するので、その後は別のキャンペーンをサプライズ的に実施してアーリーマジョリティーを引き込みます。キャンペーンでインセンティブや当選条件、当選者などは公開せずに行うキャンペーンを弊社ではサプライズキャンペーンと呼んでいて、新規制度導入の時には実施しています。

    また、非常に人気が高い制度としては「勉強し放題制度」があります。これは個人のスキルアップにつながる社外研修費用について一人当たりの上限なく会社が負担する制度です。社内では取得を推奨する資格も設けており、その資格取得のために日々勉強している社員も多くいます。資格に合格した場合は別途報奨金も付与しています。また、海外のカンファレンスなどに参加する場合も渡航費や宿泊費を含め全額負担していますし、語学勉強のための外部スクールに通っている社員に対しては授業料を負担しています。

    社内制度を拡充させたい人事担当者へ一言

    人事担当者などが集まるコミュニティや勉強会などに積極的に参加して、同じ課題を抱えている人を見つけて情報交換してみるのがいいと思います。そうしたインフォーマルなコミュニケーションを通じて、他の企業の生の声を聞くことができますし、そこから解決の糸口を見いだせることも多々あるのではないでしょうか。但し、一番大事なのは、現場のメンバーの声に耳を傾けることだと思います。

    1,000人企業を目指し成長し続ける株式会社ゆめみの将来像

    目標に掲げている1,000名規模の会社になっても、これまでお客様から評価されてきたアジリティ(迅速性)とクオリティ(品質)の両立を続けていきたいですし、そうでなくてはならないと考えています。1,000名規模の会社を目指すといっても、意図して目指すというよりはむしろ必然的にそうなっていくと感じています。技術の細分化・専門化が進み、一つのプロダクトを生み出すために何種類もの技術が必要になってきました。一つずつの技術ごとも陳腐化は早く、より多くの社員の知識やノウハウをシェアするなど組織的な学習が必要な局面に差し掛かっているため、一つの職種あたりにそれなりの人数が必要になってくるでしょう。確かに技術の細分化・専門化が進めばそれぞれに特化した会社に分社したほうがいいという発想もあるかと思います。しかし、強みであるアジリティを発揮できなくなってしまいます。やはりこの2つを両立していくためにはワンストップで価値を提供できる会社を目指していく必要があります。今後も、1,000人企業でもアジリティとクオリティを両立するという独自性を維持していきたいと思っています。

    まとめ

    株式会社ゆめみ様は「会社批判」を通じ、批判的思考を常に忘れないことでお客様の多様なニーズに応えていました。また、個人の成長を支援するさまざまな制度や即戦力化につながるようなオンボーディング施策も他社とは一線を画す画期的な制度が多いことも同社が成長を続ける要因なのでしょう。この機会にぜひ社内でオンボーディング施策に取り組んでみてはいかがでしょうか。

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    この記事を書いた人

    HR BLOG編集部

    このブログでは、「経営者と役員とともに社会を『HAPPY』にする」 をテーマに、HR領域の情報を発信しています。

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