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ジョブ型雇用制度を用いた人事評価の適切な行い方
公開日:2022.6.28
スキルや能力、経験を重視して人材を採用するジョブ型雇用は、従来日本で一般的だったメンバーシップ型雇用とは評価方法も異なります。
ジョブ型雇用の導入を検討している企業は、ジョブ型雇用に適した評価方法についても理解しておきましょう。
ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用の評価方法の違いなどについて解説します。
目次
ジョブ型雇用制度を用いた適切な人事評価とは?
ジョブ型雇用を採用した際は、評価制度も見直す必要があります。
もともとジョブ型雇用は欧米では一般的な、専門性の高いスキルや知識を持つ人材を採用し、育成するための採用方法です。
日本で馴染みのあるメンバーシップ型雇用とは評価方法も大きく違うので注意しましょう。
成果による評価
ジョブ型雇用では人材の人物像などではなく成果を見て評価をくだします。
売り上げアップに貢献した、業務効率をアップするシステムを開発したなど、明確な結果をもって評価します。
もともと業務内容を絞っての採用ですので、企業は人材に対して即戦力を求めています。
その結果を出せたかどうかで評価がなされ、結果を出せなかった場合は降格、解雇も充分ありえます。
このときの評価内容もあいまいなものにせず、実際の数値をもとにした評価をおこなうことが重要です。
上司の私情を挟まない
メンバーシップ型雇用では上司が「この人材は企業に対して忠誠心があるか」「自分の思い通りに指示を聞くか」など、感情的であいまいな評価をおこなうことが多いです。
そのため能力がなく結果を出せていなくても高い評価を得られたり、反対に結果を出しているのに上司に気に入られていないからという理由だけで評価が下がってしまったりします。
ジョブ型雇用なら成果だけを見て評価されるので、上司の私情を挟まず、個人の性格など業務とは無関係なところで評価をされることもなく、的確な評価を得られます。
勤続年数などを考慮しない
メンバーシップ型雇用は一時期に大量の人材を採用し、社内で長期間かけて教育していきます。そのため離職率も低く、年功序列の制度も強いです。
ですが年功序列ではスキルのある若い人材が適正な評価を得にくいです。
転職してきた即戦力として活躍した人材を適正に評価しなかったり、再就職してきた女性を適正に評価しなかったりといった問題が起きやすくなります。
その点ジョブ型雇用では勤続年数などは関係なく、成果だけで評価するので不利な立場になりやすい若い人材や女性も相応の待遇を得やすいです。
その他、ジョブ型雇用制度を用いた人事評価の適切な行い方について動画でも解説しています。
ジョブ型雇用制度と人事評価の関係
ジョブ型雇用を導入すると評価制度が変わります。ジョブ型雇用制度では、キャリアや雇用そのものに対して、メンバーシップ型雇用では想像もつかないような結果を下すこともあります。
ここではジョブ型雇用と人事評価の関係について詳しく解説していきます。
短期間でのキャリアアップが可能
ジョブ型雇用では成果のみを評価されるので、早々によい結果を出せば転職してきたばかりであっても長く勤務している人材よりも高いポストにつけます。
メンバーシップ型雇用の場合は人事と相談して次のポストを決めるなどの段階を踏むこともありますが、ジョブ型雇用であればこのような手間もかかりません。
ですがジョブ型雇用で採用した人材が対応するのはあくまでも事前にジョブディスクリプションに明記した業務のみですので、昇格したから別の部署に異動させる、新しい仕事を任せるということはできません。
結果によっては降格や解雇もある
メンバーシップ型雇用であれば勤続年数が長ければほぼ自動的に昇格し、企業にダメージを与える結果を出しても降格や解雇はほとんどありません。
ですがジョブ型雇用は成果を求める採用方法です。結果が出せなければ降格、解雇は当たり前です。
日本ではメンバーシップ型雇用が一般的ですので、最初はこのような評価制度に戸惑うかもしれません。ですが評価基準をあいまいにせず、どれだけの成果を出せなければ降格、など明確な基準を最初に作っておく必要があります。
企業に対する忠誠心は育ちにくい
ジョブ型雇用は成果のみを評価する採用方法ですが、一方で人材にとっても成果さえ上げればいい採用方法と言えます。
そのため、自分のスキルを活かせる場所ならどこでもいいという考えが強くなり、企業に対する忠誠心は育ちにくいです。
丁寧に教育をしたり、手間や時間をかけて求人、面接対応などをしたりしても、条件に合わないと感じたらすぐに別の企業へ転職してしまいます。
また、企業のため、チームのためにがんばろうという気持ちも育ちにくく、場合によってはメンバーシップ型雇用よりも業績が下がってしまう可能性もあります。
ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用では人事評価が異なる?
ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用では、人事評価の方法も大きく異なります。
それぞれの人事評価の項目を確認しましょう。
業務における成果を評価するジョブ型雇用と、会社への忠誠心などを評価するメンバーシップ型雇用を混同しないよう注意してください。
ジョブ型雇用の人事評価項目
ジョブ型雇用での人事評価項目は業務に対する成果によるところが大きいです。
与えられた業務をおこなうだけでなく期待以上の成果を上げられれば、その分適切な評価をしなければなりません。
年齢や性別、勤続年数などに関係なく、成果を重視して公平に評価をおこなうのがジョブ型雇用のポイントです。
メンバーシップ型雇用の人事評価項目
メンバーシップ型雇用では、企業への忠誠心や貢献度などを評価する傾向にあります。
これらは非常にあいまいであり、企業によって、そして評価する上司によって評価が大きく変わります。
価値観が合わなかったりコミュニケーション能力が低かったりすると、スキルや能力はありきちんと成果を出していても適切な評価を得られないというケースも多いです。
評価する上司に気に入られているかなど、私情が入りやすいのも問題です。
勤続年数が少ない若者や、出産、育児を経て再就職した女性への待遇が悪くなるなどの問題を抱えています。
ジョブ型雇用の人事評価で気を付けること
ジョブ型雇用で人事評価をおこなう際に気を付けるべきことを解説します。
ジョブ型雇用は業務内容が限定されている採用方法です。そのため、業務内容を記載したジョブディスクリプションをきちんと作成、管理しなければなりません。
離職率が高くなることが懸念される採用方法でもありますので、福利厚生を充実させるなど「この企業で働き続けたい」と思わせる工夫も欠かせません。
業務内容を明確にする
ジョブ型雇用を採用するのであれば求人を出す際に業務内容を明確にする必要があります。
契約後は基本的に業務内容を変更することはできず、ジョブ型雇用で採用した人材に別の部署の業務を任せたい、新しい業務を担当してほしいと思っても不可能です。
その都度人材を募集しなければならないので、場合によっては企業に大きな負担となってしまいます。
人材側からも不満が出ないように、業務内容は明確にジョブディスクリプションにまとめましょう。
期間限定の臨時の業務などがないかを確認したり、業務の効率化に悪影響な雑務が含まれていないかなどを確認することも大切です。
ジョブディスクリプションの作成方法がわからないという企業のために、テンプレートなどを配布しているサイト、ソフトもありますので利用してみてください。
離職率を下げる工夫も必要
ジョブ型雇用は企業への忠誠心が育ちにくく、その分離職率も高くなりがちです。
よりスキルを高く評価してくれる企業、よりよい待遇をしてくれる企業などに優秀な人材を取られないためには、その企業で働くことでしか得られないメリットをたくさん用意する必要があります。
評価システムや賃金なども大切ですが、福利厚生の面にも目を向けてみましょう。休日、ボーナス、退職金、住宅手当、食事補助などがあります。
他には、企業やチームへの愛着心を育成するためにコミュニケーションの場を多く設ける、チームでの仕事を増やすなどの方法もあります。ジョブ型雇用で採用した人材にも「この企業を動かす一員である」ということをきちんと理解してもらうことが大切です。
ジョブディスクリプションの管理を徹底する
ジョブ型雇用を導入する際に必須とも言えるのがジョブディスクリプションです。
ジョブディスクリプションは、与える業務の内容だけでなく勤務時間や勤務地なども詳しく記載しなければなりません。
少しでも漏れがあると後々人材と企業の意見が食い違いトラブルになってしまう可能性があります。
万が一内容を変更する場合は人材とよく相談した上、双方が納得できる形でジョブディスクリプションを変更しなければなりません。
ジョブディスクリプションは作成だけでなくその後の管理も重要です。誰が管理するのか、どのソフトで管理するのかなどを決めておきましょう。
ジョブディスクリプションの内容を共有できるソフトなどもあるので、ジョブ型雇用を導入する際は取り入れてみてもいいでしょう。
ジョブ型雇用に向けて評価制度を整えよう
ジョブ型雇用は従来のメンバーシップ型雇用とは採用基準も評価方法も大きく違います。
適切な評価をおこなうために、ジョブ型雇用を導入する前に評価制度を整えておきましょう。
ジョブ型雇用での評価は成果によるところが大きいです。従来のように人柄や年齢、性別、私情を含めた評価は不適切ですので、人事一同が評価システムをきちんと理解する必要もあります。
適切な評価システムを構築した上で、ジョブ型雇用を導入した後に起こり得るトラブルも想定してジョブディスクリプションの作成、福利厚生の充実などにも目を向けていきましょう。
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