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人事異動・配置

人材育成に効果的な配置転換とトラブルを回避するためのリスクマネジメント

公開日:2019.3.25

    会社内での配置転換と聞いたとき、どのようなことを思い浮かべますか?部署異動、転居を伴う異動、関連会社への出向などさまざまなケースがありますが、この配置転換は会社や働く個人を成長させるために必要不可欠な取り組みです。
    しかし、会社都合で人を動かしてしまうと、労使間の争いや、場合によっては裁判にまで発展するケースもあります。今回は、適切な配置転換の方法とトラブル回避のために注意すべき点をお話していきます。

    配置転換を適切に行えば人材を育成できる

    先に述べたように、適切な人材の配置転換は、従業員の育成効果が期待できます。従業員は複数の部署や職場を経験することで、視野が広がり、新たなスキルや人脈を築くことができます。このように、従業員の能力形成を図るために配置転換を行うのであれば、その従業員に適切な異動先を選定し、これから挑戦する内容の擦り合わせや、適切なタイミングでの内省の機会を提供するなどのサポートもあわせて準備する必要があるでしょう。

    加えて、配置転換を行ったあとは効果検証を実施することも重要です。異動先が本当に適切であったのか、異動するタイミングはベストだったのか、配置転換そのものの計画性・人材育成につなげるための仕組みが十分なのか、確認すべき項目は非常に多くあります。異動後にも従業員と定期接触を図り、相互にキャリアプランを確認しながら進めていく必要があります。

    配置転換を行うために覚えておきたい4つの違い

    そもそも配置転換の正しい意味は、人事異動において従業員の勤務先や従事する業務内容の変更を行うことで、略して「配転」と呼ばれたり、会社によっては「ジョブローテーション」と呼ばれたりします。広い意味では、元の会社と異なる関連会社などに出向く出向や転籍といった異動、さらに、採用や退職、昇進、昇格なども含まれますが、一般的には同じ会社の中での部署異動や勤務地の異動のことを指します。このなかで、勤務地が変わることを転勤とも呼びます。順を追って意味を確認していきましょう。

    1. 会社内の異動

    まずは、会社内の異動として配置転換と転勤の2つを理解しましょう。

    【配置転換】
    会社内において、同じ事業所内で職種や勤務先を変更することの総称です。

    【転勤】
    会社内での異動を指しますが、別事業所への異動のことです。もともとは従業員が転勤を断ることは少なかったのですが、終身雇用制が崩れた今、希望勤務地で働けない場合は退職してしまうなどのデメリットが出てきました。そのため最近では、地域限定職種で転勤を伴わないポジションとして採用されることも増えています。

    2. 会社外への異動

    次に、会社の外へ異動する2つのパターンをご紹介します。

    【出向】
    元の会社(出向元)に従業員としての籍を残したまま、別の会社に移動することです。子会社やグループ会社に異動することが多く、給与支払いなどは出向元企業から行われます。将来的には出向元企業に戻ることが前提となっていることが多いです。

    【転籍】
    出向元企業から完全に籍を移して、出向先企業と雇用契約を結ぶことになります。そのため籍を移さない出向を「在籍出向」、転籍を「移籍出向」または「転籍出向」と呼ぶことがあります。

    配置転換がトラブルになった実例

    多くの企業が就業規則の中に、業務上必要がある場合には配置転換を命じることがあると言った規定を置いています。しかし、配置転換(配転命令)が有効になるのは就業規則などに根拠が記載されていることと配転命令が規定の範囲内にあることが必要です。この配置転換が無効となったケースはあるのでしょうか?何が原因でトラブルになったのか事例をもとに理解しましょう。

    配置転換が無効となる3つのケース

    まず、配置転換が無効となるケースは、次の3つが考えられます。

    (1)就業規則に会社が配置転換命令を出せることがそもそも記載されていない
    →記載されていないことは従業員には課せられません。

    (2)専門職として雇われたにも関わらず、他の職種に就かされる
    →採用のときに、職種限定で契約を取り交わしているのであれば、一方的な職種変更は無効となります。

    (3)配置転換が権利濫用にあたる
    →詳しくは下記の通り。

    権利濫用に該当する要件としては以下の3つが挙げられます。

    ・業務上の必要性が認められない
    ・不当な動機や目的に基づいて行われている
    ・労働者に通常、受容すべき程度を越えた著しい不利益を与える

    すなわち、これらに該当する場合の不必要な配置転換は拒否されるということを理解しましょう。

    介護により配転命令が無効となった事例

    ここで、配転命令が無効となった実例として「ネスレ日本事件」をご紹介します。

    会社は、経営の都合上、Sさんが働いていた工場を撤廃することにしました。Sさんはじめ、そこにいた従業員全員に別エリアの工場への配置転換か希望退職の2つの選択肢を与えました。
    しかし、Sさんには病気の奥さんがいて転居を伴う転勤は困難であり、新たな就職先を見つけることも困難であったため配置転換を拒否しました。
    残念ながら会社側はSさんの希望を受け入れることができませんでした。このトラブルは結局、裁判となりSさんの家族環境を考慮すると「労働者が通常、甘受すべき不利益を著しく超えるもの」であるため無効となったのです。

    無効となって分かること

    結局、その後の第1審でも判決は変わらず、大阪高裁も【育児介護休業法26条】を適用しました。働き手の生活に著しく悪影響が出る場合は、配置転換が無効となる可能性があるということが分かります。会社都合で一方的な配置転換を行うことは法で抑制されていることを、経営者や人事担当者はしっかり理解する必要があるでしょう。

    まとめ

    職務が変わることで、給与が下がったり、引っ越しを伴ったりする場合、従業員のワークライフバランスに大きな不利益を及ぼす可能性がないか、確認する必要があります。どうしても配置転換が必要な場合は、従業員と事前に話し合うこと、手当など他の代替え措置にて納得してもらえるのかなど、協議しながら進めることでトラブルを防ぐことができるでしょう。

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    この記事を書いた人

    HR BLOG編集部

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