MENU

人材育成・開発・研修

茹でガエル理論とは?事例から学ぶ、茹でガエルにならないための対処方法

公開日:2022.6.6

    経営理論やビジネスシーンで語られることのある「茹でガエル理論」をご存知でしょうか。この理論は、環境の変化に対応することの難しさと大切さを説いたものです。茹でガエルにならないことが、ビジネスでの成功において欠かせません。

    この記事では茹でガエル理論についての詳しい解説や、茹でガエルと言われてしまう事例、茹でガエルになってしまう原因や対策方法について解説します。どんな理論なのかしっかり理解して、環境の変化に対応できる柔軟性を身につけましょう。

    茹でガエル理論とは


    茹でガエル理論は、環境の変化に気づいてリスクを察知し、適切な対応をすることの難しさと大切さを表している理論です。これは「急に熱湯にカエルを入れると驚いて飛び出すものの、カエルが入っている水を少しずつ熱していくと、熱湯になるまでカエルが気付かず、茹で上がって死んでしまう」という現象を例えとしたもの。時代とともに環境や状況は刻々と変化しますが、その環境や状況に気付かずリスクを察知できなければ、大きな危機に晒されてしまうという教訓です。この茹でガエル理論は1950〜1970年代にアメリカの思想家であり、精神医学者で文化人類学者のグレゴリー・ベイトソンにより、提唱された理論です。日本では1998年に刊行された「組織論」という本の中で初めて紹介されました。

    環境に慣れて順応することは大切ですが、環境に慣れすぎると変化に気付くことや、変化から生まれるリスクに気づくことは難しくなります。どんなにいいとされるものでも、時代によって変化が求められます。これは企業としても言えることですが、個人でも当てはまるものです。

    企業でも個人でも常にアンテナを張って環境の変化に敏感になり、リスク回避や成長のために最適な対応をしていくこと、常に時代に合わせてアップデートしていくことが大切だということを茹でガエル理論は伝えています。

    実は「茹でガエル」は寓話

    茹でガエル理論のもととなったのは、「カエルが入っている水を少しずつ熱しても、熱湯になるまでカエルが気付かず、茹で上がって死んでしまう」という現象です。ただ、この茹でガエルの話は寓話で、科学的な根拠はありません。

    実際にカエルが入っている水を少しずつ熱すると、温度の上昇に比例してカエルは活発になり、茹で上がるほどの熱湯になる前に飛び出してしまうと言われています。ビジネスシーンでは一般的になっている茹でガエル理論ですが、実際にはカエルが茹で上がることはありません。

    ただ理論の元となった話が寓話であっても、多くの人が茹でガエル理論を聞いて納得してしまうのは、茹でガエル理論に当てはまる経験をしたことがある人が多いからでしょう。こういった状況を「ぬるま湯に浸かっている」と表現することもありますが、寓話でありながらも説得力のある理論となって広く浸透しています。

    日本人が茹でガエルと言われる理由


    アメリカ人によって提唱された茹でガエル理論ですが、日本人は茹でガエル状態に陥ってしまっていると言われることが多いです。

    日本人には「耐える」ことを美徳とする文化があります。変化に耐えようとすること自体は完全悪ではありませんが、環境が悪化しても「我慢しよう」と考えてしまった経験がある方も多いのではないでしょうか。悪化した環境であっても耐えているうちに慣れてしまいやすい日本人は、茹でガエル状態になりやすい特性を持っていると言えます。

    日本は高度成長期からバブル崩壊を経て、25年以上も経済危機に瀕しています。経済が低迷し続けた「失われた20年」を過ごしてきた日本人。どんどん悪化する経済状況に耐え凌ぐことに慣れてしまうあまりに、茹でガエル状態となって大きな危機に瀕していると例えられてしまうのです。

    茹でガエルの事例

    茹でガエル理論がどんなものか、なんとなく理解できたのではないでしょうか。日本人が陥りやすいと言われている茹でガエルの事例を具体的に知って、さらに理解を深めましょう。

    過去の成功例にこだわって経営状態が悪化する

    企業の茹でガエル事例で非常に多いのが、過去の成功例にこだわってしまうことです。時代の流れを全く読まず、過去に業績が良かった時のやり方を推し進めると、茹でガエル状態に陥って立ち直れないくらいの危機に陥ってしまうことがあります。

    一度成功したやり方や大ヒットを記録した商品でも、そのままでいつまでも同じ結果が得られるわけではありません。時代によって変わるニーズの変化についていかなければ、企業が抱える問題は悪化していく一方でしょう。

    社員や世間の声を無視して組織が崩壊する

    現代は人事評価制度、報酬形態などが10年前、20年前と比べると大きく変化しています。変化のスピードも年々早まっていますが、社員から上がる声、世間の声を無視したまま「うちの会社は問題はない」と今まで通りの経営をしていると、茹でガエル状態に陥ってしまうでしょう。

    人事評価制度や報酬形態だけでなく、モラハラ・セクハラ、マイノリティに対する考え方、SDGsへの取り組みなども、時代の変化に対応せず無視し続けていると、組織は崩壊してしまいます。

    身につけた知識・スキルにこだわって成長が止まる

    茹でガエル状態に陥るのは企業だけではありません。かつては出世のために身につけたスキルや知識が、定年まで通用するということもありました。しかし現在は変化の流れが急速で、一度身につけた知識・スキルがあるからといって、それが一生通用するわけではありません。

    それにもかかわらず、身につけた知識やスキルに固執し、アップデートすることをやめてしまうと成長が止まってしまいます。気づいた時には周りの変化についていけず、求められることに対応できなくなってしまうことも珍しくありません。

    終身雇用制度から成果主義に変わりつつある今、「この程度やっていれば大丈夫だろう」という考えでいると、気づいた時にはリストラ対象になっていた…ということも起きてしまいます。


    茹でガエルになってしまう原因

    茹でガエル状態に陥ってしまう代表的な原因を紹介します。原因を知ることは、対策にもつながるのでしっかり理解しておきましょう。

    過去の成功にこだわる

    変化が大切だとわかっていながらも、茹でガエル状態に陥ってしまう原因として、過去の成功にこだわってしまうことが挙げられます。企業でも個人でも過去の成功体験にこだわってしまうと、「これで成功したから間違いない」と新しい発想を取り入れ、挑戦することに躊躇してしまうのです。

    安定志向すぎる

    企業にとっても個人にとっても、リスクはできるだけ回避したいもの。新しいことをすると、それなりにリスクはありますから、安定志向で現状維持を推し進めてしまうこともあるでしょう。もちろんそれも大切なことですが、あまりに安定を求めすぎて思考停止に陥り、変化のない状況に慣れてしまうと、気づいた時には茹でガエル状態になってしまいます。

    ネガティブ思考

    景気が悪い状態が長く続いているうえに、自然災害が起きたり、世界情勢も悪化したりしている今は、どうしてもネガティブ思考になってしまいやすいです。ネガティブ思考に陥ると、守りに入ってしまうため、無意識に変化を恐れてしまいます。先ほど紹介した安定志向にも繋がりますが、その結果、茹でガエル状態になってしまうのです。

    コミュニケーション不足

    企業の場合、誰かが変化に対応しなければ危機に瀕してしまうと察知しても、コミュニケーション不足の状態では、誰もがその危機を認識できず、適切な対応が取れません。よくあるのが経営者と従業員のコミュニケーション不足です。風通しが悪い会社の場合、現場にいる従業員が危機を察知しても、経営者にそれが伝わらず、茹でガエル状態になってしまうことがあります。

    茹でガエルにならないための対策方法


    茹でガエル状態になってしまうと、成長が止まって大きな問題を抱えてしまうことにもなりかねません。そうならないための対策を紹介します。

    意識的に「疑う」クセをつける

    これまでのやり方が正しいと思い込んでいると、気づいた時には茹でガエル状態になってしまいます。どんな問題に対しても、意識的に疑うクセをつけることで、正しい選択ができるようになります。どんなことでも一度立ち止まって、「本当にこれでいいのか?」と考えることは大切です。

    社員の自立を促す

    企業としては、社員に自立を促すことも茹でガエルにならないための対策です。社員が上からの指示を常に待っているような状態では、個々が危機意識を持つことができません。社員自らが考え、実践できるような仕組みを作ることも重要です。

    危機意識を共有する

    企業全体が危機意識を共有することも、茹でガエルにならないための対策です。危機意識を持たないことには、今の状態から脱却することはできません。経営者の言葉で、社員に危機意識を持つことの重要性と、変革が必要であることを伝えましょう。人事評価の改革を行う、外部の人材を迎えるなどの方法も間接的な危機意識の共有につながります。

    組織から離れて考える時間を持つ

    茹でガエルにならないために個人ができることの一つが、組織から離れて考える時間を持つことです。組織のなかにいると、自分の会社の常識を「当たり前」として考えるようになってしまいます。しかし、会社で通用する常識が必ずしも、世間一般で通用するとは限りません。今いる組織から離れて考える時間を持つことで、いつもと違う視点で今の自分を見つめ直せるでしょう。

    企業も個人も茹でガエルにならないための思考を身につけよう

    日本人は「耐える」という特性を持っていることもあり、企業も個人も茹でガエル状態に陥りやすいです。しかし成長していくためには、時代の変化に対応していかなければなりません。今回紹介した対策を参考に茹でガエルにならないため思考を身につけ、変化に合わせたアップデートができるように心がけましょう。



    FAQ

    茹でガエルについてのよくある質問です。

    茹でガエル理論とは?
    茹でガエル理論とは「急に熱湯にカエルを入れると驚いて飛び出すものの、カエルが入っている水を少しずつ熱していくと、熱湯になるまでカエルが気付かず、茹で上がって死んでしまう」という現象を例えたもので、環境の変化に気づいてリスクを察知し、適切な対応をすることの難しさと大切さを表している理論です。
    日本人が茹でガエルと言われる理由は?
    日本人には「耐える」ことを美徳とする文化があります。変化に耐えようとすること自体は完全悪ではありませんが、環境が悪化しても「我慢しよう」と考えてしまった経験がある方も多いのではないでしょうか。悪化した環境であっても耐えているうちに慣れてしまいやすい日本人は、茹でガエル状態になりやすい特性を持っていると言えます。
    「茹でガエル」は寓話?
    実際にカエルが入っている水を少しずつ熱すると、温度の上昇に比例してカエルは活発になり、茹で上がるほどの熱湯になる前に飛び出してしまうと言われていることから、ビジネスシーンでは一般的になっている茹でガエル理論ですが、実際にはカエルが茹で上がることはありません。ただ理論の元となった話が寓話であっても、多くの人が茹でガエル理論を聞いて納得してしまうのは、茹でガエル理論に当てはまる経験をしたことがある人が多いからでしょう。こういった状況を「ぬるま湯に浸かっている」と表現することもあります。

    この記事を書いた人

    TOYO

    株式会社アックスコンサルティング マーケティング本部 WEB制作課所属。
    メンタル心理ヘルスカウンセラー、メンタル心理インストラクターの資格を活かして人事向けの記事を中心に執筆。仕事に纏わる悩みに対し、カウンセリング倫理、心理アセスメント、地域精神医療などの観点から明るい毎日を送れるように記事を執筆しています。

    プロフィール詳細はこちら

    この記事もオススメ!

    一覧へ