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OODAとは?PDCAとの違いとOODAが適しているシチュエーションを解説
公開日:2022.10.6
ビジネスで利用されるメソッドはたくさんありますが、その中で近年話題を集めているのが「OODAループ」です。
従来浸透していたPDCAサイクルとはどのような点が違うのか、OODAループはどのような考え方なのかを解説します。
スピーディーな意思決定を目指す企業はぜひ参考にしてください。
目次
OODA(ウーダ)ループとは?PDCAサイクルとの違い
OODAは現状を観察した上で判断し、意思決定、実行を繰り返すメソッドです。
PDCAは計画を実行し、検証した上で改善を繰り返すメソッドです。
どちらもビジネスシーンで効率的に作業を進める上では大切な考え方ですが、最も大きな違いは機動性です。
OODAはPDCAと比較すると機動性が高く、最初の観察、判断に重点を置いています。
PDCAは計画を実行してからの検証や改善に重点を置いている点で違いがあります。
機動が重要なOODAは、最初の判断力や迅速な実行力が求められるメソッドです。
OODAの発祥
OODAは米軍のパイロット、ジョン・ボイド氏によって提唱されました。
空軍の戦闘は迅速な判断力と実行力が求められ、一瞬の遅れが命取りになることもあります。
実際にジョン・ボイド氏は戦闘訓練において、OODAループの考え方を用いて非常に不利な状況から40秒で逆転しました。
その後、ジョン・ボイド氏が提唱したOODAループは米軍だけでなく、スポーツ界やビジネス界で広く浸透しています。
OODAの4ステップと具体例
実際にOODAはどのようなループを繰り返す考え方なのか、4つのステップとビジネスシーンにおける具体例を解説します。
観察、状況判断、意思決定、実行の4サイクルを正しく把握しましょう。
Observe(観察)
OODAの最初の段階は観察です。
顧客や市場の状況、競合の数や勢いなどを徹底的に観察します。
観察の中では実際の数字など、明確に比較できる対象を用意する必要があります。
具体例としては
- 14時から18時までの来店数は1時間に3人程度である
- 競合が関西に3店舗展開している
- 商品の注文数が前年と比べて5%伸びている
などです。
周囲や過去と比較すると観察しやすくなります。
また、観察の際はあくまで現状を的確に把握することが大切です。
「このケースならこうだろう」と主観的な考えはやめましょう。
Orient(状況への適応・仮説構築)
観察の結果得た情報を分析し、その状況に対してどのように適応できるか考えます。
この段階ではまだ仮説を構築するだけなので、実際に行動する必要はありません。
過去同じようなケースが起きた場合どのような成功事例があるか、導入できるものなのかを考えてみてください。
具体例としては
- 来客数が少ない時間帯を仕込み時間にすれば人件費や光熱費をカットできるのではないか
- 競合が広がっていないエリアに出店すれば売上を伸ばせるのではないか
- 注文数が製造数を超えてしまう可能性を加味し、仕入れルートを増やすべきではないか
などがあります。
Decide(意思決定)
次に意思決定を行います。
観察した結果の適応方法、仮説を基に、最適なプランを選択します。
- 来客数の少ない時間帯を一時的に閉店してみる
- 競合の少ないエリアに出店できる場所を探す
- 仕入れルートを増やすために営業活動を強化する
などの方法があります。
PDCAでは、最初に立てたPlan(計画)に基づいてサイクルを1周回す必要があります。つまり、予想外の外的要因などが発生した場合にサイクルを計画からやりなおさなければならないということもあるでしょう。
一方、OODAは「ループ」させるもので、軌道修正がしやすい仕組みです。状況によっては前の段階に戻って変化に対応することも可能です。
だからこそ、「リスクが高いから」「最初は安全策を取りたいから」といった考えで控えめな選択をせず、チャレンジングで自由な行動がしやすくなるのです。
Act(実行)
意思決定した内容を実行に移します。
実行した結果どのような変化が見られたかを再び観察し、状況を判断した上で新たに意思を決定するループを繰り返します。
例としては
- 各店舗に連絡し、従業員にも周知し、素早く開店時間を変更する
- 競合が少ないエリアへの営業を開始
- 仕入れ先を新たに2箇所まで増やす
などがあります。
OODAが注目されている理由
OODAが注目される背景には急速に進む情報化社会の影響があります。
次々に新しい情報が生まれ、浸透していく世界では、OODAループを活用した迅速な行動が重要になってくるでしょう。
そもそもPDCAサイクルは、社内における商品の品質管理や生産管理のためのフレームワークとして誕生したもので、中長期的な計画の策定に向いているものです。そのため、先の見えない新商品の計画や起業などのシーンでは十分な効果を発揮できない場合があります。
PDCAは成功するまで何度もサイクルを繰り返しますが、何度も繰り返す内にも社会情勢は変化していき、対応しきれなくなる可能性もあります。
PDCAを繰り返している間にブームが終了した、競合で事件が起きてジャンルそのものの信頼度が落ちた、より優れた新製品が登場したなどの例もあります。
一方でOODAループは、素早く動けるうえに軌道修正もしやすいため、社会にどのような変化が起きても迅速に対応しやすいです。
このように、シーンによってPDCAサイクルとOODAループを使い分けることが重要です。
VUCA(ブーカ)時代への適応
VUCAは「変動性」「不確実性」「複雑性」「曖昧性」を意味する言葉で、予測しにくい状況を指します。
こちらもOODAと同じく米軍で生まれた考え方です。
現代はデジタル化、情報化、テクノロジー化が急速に進んでいます。
ロシアとウクライナの戦争、新型コロナウイルスなど、1日前には予測もできなかった出来事が当たり前のように起こります。
変化が激しくすべてのことが不確実で、曖昧、複雑な時代に、いかに適応していくかが道を大きくわけていきます。だからこそ、OODAループが注目されているのです。
イノベーションの創出
VUCA時代へ適応するにはイノベーションの創出が必要です。
近年、経済成長を目指すために政府はスタートアップ企業を支援しています。
スタートアップ企業は従来にないやり方、方法で成功を目指す新規の企業を指します。
時代の移り変わりに応じて需要が変化する中では、とくに状況判断、迅速な適応が求められるのが特徴です。
そのため、従来のPDCAサイクルをゆっくり繰り返すよりはOODAループの考え方を取り入れる方がメリットが多いです。
スタートアップ企業は一度当たれば大成功できますが、それまでに時間がかかったり、上手く時代に適応できず失敗してしまったりする可能性もあります。
イノベーションを創出するためにもOODAの考え方を導入し、浸透させましょう。
OODAループの強みと注意点とは?
OODAループならではの強みと注意点を解説します。
素早く効率的な意思決定ができるだけでなく、突然のトラブルにも対応しやすいです。
一方で、明確なビジョンが必要であること、業務を改善していきたい場合には不向きであることなど、注意すべき点も確認してください。
強み①素早く効率的な意思決定ができる
OODAを取り入れれば素早く効率的に意思決定ができます。
日々変化していくマーケットでは、一瞬の遅れが命取りになることも珍しくありません。
OODAでは最初に現状をしっかり観察した上で仮説を立て実行に移せるため、無計画に動いて失敗する、遠回りするリスクも下げられます。
何が問題か、今すぐに解決しなければならないのはどの部分かを迅速に判断し、効率的に行動できます。
強み②緊急事態やトラブル時に強い
OODAは緊急事態やトラブルに強く、複雑な現代を生き抜くために大切な考え方です。
地震などの自然災害、急激に広がる感染症、海外で起こる戦争など、私たちの生活には予想もできなかった出来事が起こりえます。
緊急事態にいかに素早く動けるかは、企業の生き残りがかかった重要なポイントです。
大きな変化にも慌てず、瞬時に観察した結果を元に行動する習慣をつけましょう。
強み③主体的に行動できる組織になる
OODAは個人の裁量にかかる部分が大きく、組織を構成する一人ひとりが主体的に動けるようになります。
PDCAは上司や別の人からの評価や検証、指示を待つ必要がありますが、OODAではこの工程はありません。
それぞれが迅速に動けるため、少数で始まったスタートアップ企業やベンチャー企業が導入するにはぴったりです。
個人の裁量を伸ばせば組織、企業自体も大きく成長できるだけでなく、責任感と組織への愛着心も育てていけます。
注意点①ビジョンがないと個人の裁量が大きくなりすぎる
OODAは最終的にどうなりたいかのビジョンがなければ、個人の裁量が大きくなりすぎてしまいます。
個人がその場の思い付きで行動することで抱えるリスクも高くなります。
素早い機動力が求められるOODAですが、その場で思いついたまま行動するのではなく、現状把握と意思決定、実行までのサイクルを徹底させなければなりません。
また、最終的なビジョンは組織を構成するメンバー全員が共有している必要もあります。
注意点②業務改善には不向き
OODAは中長期的に見て業務を改善したい、すでにできあがっているサイクルを改善したい場合には不向きです。
迅速に決定し動き出すための考え方なので、これから新しい事業を始める、最速で結果を出したい問題があるなどの場合には有効です。
PDCAよりも優れていると言われることも多いOODAですが、状況に応じてOODAとPDCAを上手に使い分ける必要があります。
注意点③効果測定のフェーズがない
OODAがPDCAよりも素早く動ける理由の一つに、効果測定のフェーズがない点があります。
測定を省いて次々に観察と判断、実行を繰り返すためスピーディーに進められますが、効果を測定できない分明確な改善策を見つけにくい可能性もあります。
第三者が検証することで見えてくる改善点もあるため、場合によってはPDCAサイクルのようにしっかり効果を測定するフェーズを挟まなければなりません。
人材育成にOODAを活かす方法
OODAは人材育成の管理にも効果的です。
人材をしっかり観察した上で何ができるかの仮説を立て、意思決定の上実行します。
これにより人材一人ひとりがそれぞれに適した環境で自身のスキルや特性を活かした働き方をしやすくなります。
個人の成長、そして組織、企業の成長のためにも人材育成の管理にOODAループを導入する方法をチェックしてください。
①育成する人材の特徴を観察する
まずは育成対象の人材の特徴を観察します。
「この人はこのような仕事が得意だろう」
「この人は性格的にこの仕事は向かないだろう」
など、一般論で決めつけず、個人をしっかり見極めて客観的な情報を収集してください。
これまでの営業成績、業務の進捗ペースなど、数値で示せる証拠を集めることが大切です。
採用を担当した面接官に聞き込む、個人面談を行う、サーベイを行うなどの方法もあります。
②集めた情報と社内のリソースを照らし合わせて何ができるかを考える
客観的な情報、データから個人の現状や得意なこと、苦手なことを把握し、社内で何ができるかを考えましょう。
社内にはどのような業務があるか、どのような問題を抱えているかを把握している必要もあります。
業務内容や改善点と、個人の得意なことを照らし合わせ、最適な配置を考えます。
この判断がきちんとできていないと、苦手な業務に当たらせてしまう、本人の意思を無視した配置をして不満の原因になるなどの可能性があります。
あくまでも客観的な判断ができるようにしてください。
一人だけで判断せず、複数の人材と情報を交換して判断していくこともおすすめです。
③②で立てた仮説に向かってどのように実行するかを決定する
仮説を元に、どのように人材を配置するか意思決定します。
「数字を扱う業務が得意だからこの人を配置すれば作業効率が〇%アップする」など、根拠に基づいた行動を実行してください。
④③で決定した内容を実践する
行動を決定したら実行に移します。
その結果どのような変化が起きたかを定期的に観察することも忘れないようにしてください。
良い影響が出ている場合はそのまま観察を続け、悪い結果が出た、または実行する以前と変わらなかった場合は別の問題がないか観察する必要があります。
OODAはトラブルや問題にも迅速に対応できるのが最大のメリットです。
人材育成は時間をかけて行うものですが、個人の負担が大きかったりストレスが強かったりすると離職にもつながります。
できるだけ早く問題点を改善できるよう、OODAループを人材育成に取り入れましょう。
OODAループをビジネスシーンに取り入れよう
新しいビジネスメソッド、OODAを解説しました。
OODAは「観察」「状況への適応、仮説」「意思決定」「実行」を繰り返すビジネスメソッドです。
米軍で生まれた考え方で、敵を攻撃し生存することを明確な目的としているため、機動力が早く効率的な行動ができます。
現代はいつ何が起きるか、そして事業にどのような影響が出るかが非常に見えにくい時代です。
従来の考え方にPCDAがありますが、PCDAのように慎重に進める考え方では時代に適応できなくなってしまう可能性もあります。
素早い行動、迅速な判断が求められるビジネスシーンにおいては、OODAの考え方を導入することも検討してください。
FAQ
OODAループについてのよくある質問を紹介します。
- OODAループとは?
- OODA(ウーダ)ループは意思決定、実行に関するメソッドです。「観察」「状況への適応、仮説」「意思決定」「実行」の4つのステップからなり、機動力が早く効率的な行動ができる理論です。
- OODAループのメリットは?
- OODAループは、素早く動けるうえに軌道修正もしやすいため、社会にどのような変化が起きても迅速に対応しやすいです。起業や新商品の開発など、先の見通しが立てづらい状況には適している考え方です。
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