オンボーディング Onboarding 「新卒社員」や「中途社員」が辞めない仕組みづくり
『オンボーディング』とは、新入社員をスムーズに社内に溶け込ませ、パフォーマンスを上げさせるための一連の仕組みづくりを言います。この冊子ではHR先進国であるアメリカ企業の事例も踏まえ、人材育成のための最新のメソッドを解説。
オンボーディングの具体的な取り組み方をご紹介しています。
人材育成・開発・研修
公開日:2018.10.30
人材育成の重要性が説かれ、新卒者や中途採用者の育成に力を入れる会社が増えています。その一方で、経営を継ぐ後継者候補や育成は重要なものの、緊急性が高くないため後回しにされがちです。会社を持続的に成長させ、優れた後継者を育成するためには、どんな戦略が必要となるのでしょうか?
今、日本では、経営者の高齢化が課題となっています。
2012年には、日本の高度成長を支えてきた団塊世代が65歳となり、働き手不足が懸念される『2012年問題』がありました。そして、帝国データバンクの『2016年 後継者問題に関する企業の実態調査』によると、経営者の平均年齢は過去最高の59.2歳で、ますます高齢化が進んでいます。
経営者の高齢化が著しく進むと、求心力の低下、成長率の低下、収益の減少などが起こりやすくなります。会社を取り巻く環境が変化し、従業員の年齢が若返る中で、経営者だけが昔のままでは、会社がパワーダウンしていっても仕方がないと言えるでしょう。そんな事態を避けるためにも、後継者の育成という課題には、日頃から、継続的に取り組んでおくのが肝要です。経営者の手腕が会社経営の要となっている中小企業ほど、その重要性が高くなるでしょう。
かつて経営者の座は、親族内で継承されるのが主流でしたが、近年では親族以外の適任者が選ばれるケースも一般的になっています。会社が置かれた状況、将来のビジョン、業界や国内外の動向などを見通して、総合的な判断で候補者を選び、早めの育成に取り組んでいかなければなりません。
アメリカでは、経営者や経営幹部が後継者候補を見極めて、計画的に後継者育成を行う「サクセッションプラン」と呼ばれる考え方が一般的です。かつては後継者の育成計画のみを指す言葉でしたが、近年では“ビジネスチャンスや突然のリスクに対応できる人材をプールしておく施策全般”を指す言葉として、使用されるようになりました。
このサクセッションプランこそが、会社の後継者育成には欠かせません。経営陣、各部署の責任者、人事部などが連携しながら運用していくことで、後継者育成が円滑に進むことになります。
一般的に下記の手順で進められいます。
後継者は、実務における業績や、身につけているスキルや知識といった面だけでなく、会社全体を見通す力や、各部署を取りまとめる統率力が求められます。「親族への継承が伝統だったから」「社内のナンバー2がエスカレーター式に」などの既定路線が社内に根付いている場合でも、あらためて広い範囲から人材選びをした方が良い結果を得られるでしょう。税理士やコンサルタントなど、外部からのアドバイスに耳を傾ける手もあります。
実際に経営者が交代することになれば、社内外で波風が立つことも考えられます。育成期間中から周囲に理解を促し、交代が円滑に進むように準備しておくことも、後継者育成を司るサクセッションプランの一部だと考えておきまましょう。
後継者の育成プランにおいて実例として考えられるのは、ジョブローテーション、経営部門への登用、研修やセミナーへの参加、外部での勤務などです。
ジョブローテーションは、異動によって社内の主要部署で仕事を一通り経験し、社内の全体像を理解してもらうのが狙いです。様々な部署で身につけたスキルや知識は、経営を引き継いだ後でも、自社の特性を理解するために役立つでしょう。
会社の理念や経営の現状を伝えるには、経営部門への登用が有効です。会社経営への使命感や責任感が磨かれ、リーダーシップの向上にもつながります。
経営に関する知識を身に付けるため、学びの機会を多く提供することも重要です。社内で研修を行うだけでなく、外部で開催されるセミナー、講演会、意見交換会などへの出席を促すのもいいでしょう。メンタリングも効果的です。
知見を深めるためには、外部の会社に勤務することも有効です。自社内だけで学べないスキルや知識を吸収できる上、さらに業界内での人脈作りができるというメリットがあります。
また、後継者育成の一環として、管理職、総合職を対象とした、意思決定のトレーニングを重視している会社もあります。業績を上げるべく、現場では行動力が武器になりますが、経営者となると状況を見極めて決断を下し会社を回していくことが仕事となります。
正しく意思決定をするには、感情に流されず、「今までこうだったから」といった伝統や慣習に縛られることなく、経営理念との合致度や経済面での合理性などを考慮するといった視点が必要となるでしょう。
会社の後継者育成は事業の存続に直結するため、単なるリーダーやエース社員の育成とは違った側面が多々あります。その成否が、会社の命運を分けると言っても過言ではありません。今後も日本企業が活躍し続けるためには、時代に沿った柔軟かつ客観的な企業判断と適切で円滑な事業承継が不可欠だと言えるでしょう。「後継者育成」はそのための最重要課題なのです。
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