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人材育成・開発・研修

ティール組織とは?失敗しないためにデメリットを知っておこう!

公開日:2022.9.12

    より強い組織を作り上げるためにはさまざまな方法があります。
    常に新しい考え方が提唱されていますが、近年注目されているのがティール組織です。
    実際にティール組織の考え方を導入して成功している組織もあり、今後組織の形成、強化を考える上で見逃せません。
    ティール組織の基本的な知識、導入するメリットやデメリット、さらにティール組織までの道のりなどを解説します。

    ティール組織とは

    ティール組織は組織開発プロジェクトに数多く携わり現在もエグゼクティブアドバイザーとして活躍を続けるフレデリック・ラルー氏が2014年に自身の著作の中で提唱した組織の形成方法です。
    まだ新しい考え方ですが、海外だけでなく日本でも徐々に話題になっています。
    ティール組織とは組織のリーダーがマネジメント、関与をすることなく組織のメンバー全員が目的を実現するために行動できる組織のことです。
    一般的に、組織はリーダーの指示、マネジメントによって統制を取るのが最善と考えられていましたが、ティール組織の考え方はそれを覆します。

    組織を一つの生命体として捉え、組織の可能性を最大限まで伸ばすためにはトップが指示を出すヒエラルキー型ではなく個々が意思決定をおこなうティール組織の考え方が必要だとしています。
    ティール組織では組織を5段階に分割し、それぞれの特徴から色で説明しています。
    琥珀オレンジ青緑の順でより優れた組織になっていくと解説しており、ティール組織のティールとは最終段階の青緑を意味します。
    5段階のそれぞれの概念については下記で詳しく解説します。

    ティール組織への誤解

    ティール組織に対するよくある誤解として、「ティール組織という型がある」と思い込んでしまうケースがあります。
    組織の形を説明するときに決まった型で解説することは多いですが、ティール組織には決められた型はありません。
    組織のスタイルを色で分類した際に緑より以前のどのスタイルにも当てはまらない組織をティール組織と呼びます。
    分類できないユニークな方式を取る組織に、一人ひとりに決定権があるという共通点があるとラルー氏は提唱しています。

    ティール組織に必要な3つの特徴


    ティール組織には3つの特徴があります。
    セルフマネジメント、ホールネス、存在目的の3つの特徴を理解すれば、よりティール組織について理解が深まり、導入しやすくなります。
    チームを形成するすべてのメンバーがいきいきと活躍できる組織を作り上げるためにも、この3つの特徴を意識しましょう。

    セルフマネジメント

    セルフマネジメントとは自分で自分を管理することです。
    ティール組織の考え方ではメンバーの意思が尊重され、リーダーからの指示やマネジメントはありません。
    そのためセルフマネジメントが非常に重要になります。
    セルフマネジメントができていなければ業務をスムーズに進められなくなるだけでなくチームワークにも影響を及ぼします。
    意思決定の権限をメンバーに譲渡し、組織から指示ではなくフィードバックを受け取れるような仕組みが必要です。
    通常の組織であれば何かをおこなうときに上司から指示を聞いたり上司から許可を得たりする必要がありますが、ティール組織にリーダーはいないため指示や許可を得るというステップはありません。
    一方ですべての行動を各々が自由に行うことで思わぬミス、トラブルを招く可能性もあります。
    それを防ぐために、助言プロセスを挟みます。
    メンバーには意思決定の自由がある代わりに、最終的な決定をする前にチームの関係者や専門家に助言を求めるようにするものです。

    ホールネス

    ホールネスは直訳すると全体性という意味です。
    ティール組織においては組織の中で自分らしくいられるかどうかを意味します。
    組織の中で上下関係や自分の立場を気にすることなく、自分らしく振る舞うことでより良い組織を作れます。
    例えば、オフィスにはふさわしくないとされる服装や髪型であっても、それが本人にとって自分らしい姿なのであればそちらを尊重すべきです。
    ティール組織を取り入れ、このホールネスを実現するために、人間関係形成のトレーニング、一人ひとりのコーチング、価値観や感情の違いを理解する研修などをおこなっている組織もあります。

    存在目的

    ティール組織では人生において行うべきことは何か、人生でやりがいのあることは何か、ということを大切にしています。この考えを存在目的とします。
    ティール組織では一般の組織のように競争の概念がなく、自分自身の本当の目的を見失いにくいです。
    それぞれが自分の目的を達成するために協力しあえば、より良好な人間関係を築くことも可能です。
    同僚をライバル視したり仕事ができないメンバーを非難したりといったことは一般の組織では起こりがちですが、自分自身の目的と向き合うのみであればこのような行動は必要ありません。
    組織において自分の目標を達成し、自分のすべきことを見据えて行動すれば結果的にそれが組織の成長につながります。

    ティール組織に移行する3つのメリット

    ティール組織に移行するメリットを3つ紹介します。
    メンバーの自主性を尊重し動きやすい環境を作れるだけでなく、変化やトラブルに柔軟に対応できる、組織全体の生産性が向上するなどのメリットがあります。

    メンバーの自主性を尊重できる

    従来のヒエラルキー型の組織は、上司やリーダーが組織を管理するためにどうしても従わなければならない、自分よりもリーダーや組織全体のために動かなければならないという意識が強くなります。
    ですがティール組織に移行するとメンバー一人ひとりが業務に対して決定権を持てるため、個人の働き、行動が直接組織の業績や結果につながります。
    人に言われたからやったことではなく自分で決めて行動したことが組織全体の結果に目に見えて出るため、今よりさらにがんばろう、いい結果を出そうとモチベーションを上げるためにも有効です。
    さらに、自主性を尊重することでメンバー全員がのびのびと業務に集中できます。不要なストレスを抱えたまま組織の中で過ごす心配もないため、現在組織の環境に悩んでいるメンバーの問題も解消できます。

    変化に柔軟に対応できる

    従来の組織では、変化があった場合にまずリーダーや上司に相談したり、リーダーや上司が決定したことを下に伝えていくステップがありました。
    トラブルが起きた際にもまずはトップに報告する、ミスをしたメンバーではなくトップが責任を取るなども一般的です。
    一方でティール組織ではトラブルやミスが発生しても報告したり許可を得たり肩代わりする必要がありません。
    それぞれが迅速に判断して動けるため、スピーディーに問題解決の糸口を見つけられます。
    近年はIT技術やAI技術が進み、迅速に問題を解決しなければ競合他社に仕事を奪われてしまう、信頼を取り戻せなくなるなど、問題が深刻になりやすいです。
    常にクライアントに求め続けられる企業に成長するためにも、迅速に問題を解決できるティール組織は有効です。

    組織の生産性が向上する

    ティール組織ではメンバー一人ひとりが自分で決定、行動します。
    指示を待つだけの人がいなくなり、すべての人の生産性が向上します。
    指示を出すために考える人の負担が軽減し、その分別の業務に集中できます。
    すべてのメンバーが自主的に動き生産性を向上させることで、結果的に組織の生産性の向上につながります。
    企業であれば業績アップ、スポーツチームであればより戦力を強化できるでしょう。

    ティール組織に移行するデメリット

    ティール組織にはさまざまなメリットがある一方でデメリットにも着目しなければなりません。
    メンバー全員に決定権を与えるという部分だけを重視してやみくもにティール組織を取り入れると失敗する可能性もあります。
    事前にデメリットを確認しておきましょう。

    組織が成り立たなくなる可能性がある

    ティール組織ではメンバーに決定権を付与しますが、セルフマネジメント力のないメンバーがいる、組織を形成するメンバーのほとんどにセルフマネジメント力がない状態では組織が成り立たなくなってしまいます。
    ティール組織に移行する前の段階でセルフマネジメント力を上げる研修やトレーニングをおこないましょう。
    ティール組織に移行してからメンバーのセルフマネジメント力が低下したと感じた場合は早急に対応してください。
    なぜセルフマネジメント力が低下したのかを確認し、自分がすべき目標は何か、組織がどうして存在しているのかなどを正しく理解してもらう必要があります。

    メンバーのマネジメントができない

    ティール組織ではそもそもリーダーや上司、組織を管理する人はいません。
    そのため、業務が現在どのように進行しているのか、どのメンバーが何をしているのかという管理がしにくくなります。
    困っている人はいないか、問題なくプロジェクトは進んでいるか、サポートした後に問題は解決したかなどがわからないまま各々が作業を進めなければなりません。
    このデメリットを解消するためにはプロジェクトを開始する前にメンバー全員で話し合い、目標や期限などの情報を共有する必要があります。トラブルが起きた際の対処法なども確認しておきましょう。
    また、進捗状況は全員がすぐに確認できるように情報を共有することも大切です。

    リスク管理が難しくなる

    ティール組織ではリスク管理が難しくなります。
    一般の組織では何か新しいことを始める場合でも、上司やリーダーに指示を仰がなければなりません。リスクが高い場合は方法を変更したり、時期を変えたり、そもそもプロジェクト自体がなくなることもあります。
    一方でティール組織の場合は魅力的な内容、メンバーのモチベーションが上がる内容、自主性を最大限に発揮できる内容であれば、リスクが高くても決行されてしまいます。
    リスクを管理して組織を安定させるためには、リスクについてメンバー全員が共通の認識を持つことが大切です。
    何を目指す組織なのか、どんな行動がリスクを招くのか、その行動が組織にとってどんな不利益をもたらすのかをきちんと話し合って意識を共有しましょう。
    さらにメンバーとの信頼関係も大切です。メンバー全員が組織のためになることをしてくれていると信頼した上で、協力したり協力を仰いだり、情報を共有しあう関係がベストです。

    ティール組織までの5段階と組織体の図解


    組織にはティール組織以外にもさまざまなスタイルがあります。
    ラルー氏はそれぞれの組織を色で分類し、下記のように解説しています。

    衝動型組織、Red(赤色)

    レッド組織はオオカミの群れにたとえられます。
    絶対的なリーダーがおり、その下で他のメンバーが動くスタイルです。
    短期的で、どのように今の問題を切り抜けるかが最大の焦点になっているケースが多いです。
    一人のリーダーの力に頼るため、リーダーが間違ったり失脚したりすると組織としての形を失ってしまいます。

    順応型組織、Amber(琥珀色)

    琥珀組織は軍隊に例えられます。
    上層部が決めたことを下層部が実行していくスタイルで、ヒエラルキー型組織にも近いです。
    情報伝達のルートが確立されており指示を出したり管理したりするメンバーが複数人いるため、レッド組織よりも長期的に組織を維持できます。
    リーダー個人の負担や依存を軽減し、レッド組織よりもさらに多くのメンバーを統率できるメリットもあります。

    達成型組織、Orange(橙色)

    オレンジ組織は機械に例えられます。
    琥珀組織のようにヒエラルキーはあるものの、結果を出せば上層部に出世できます。
    上下関係に流動性があり、その時々で求められる才能や実力がある人をトップに置けます。
    上層部のメンバーが常に変わる可能性があるため競争や変化が起きやすく組織の維持につながるものの、個人個人の自主性は失われてしまいます。

    多元型組織、Green(緑色)

    グリーン組織は家族に例えられます。
    ヒエラルキーはあるものの個人個人の自主性を尊重し、多種多様な価値観を認め合っている組織です。
    組織としての目標を達成するだけでなく、個人にとって何が幸せかに焦点を当てています。
    一方でリーダーが組織をどれくらい支配するのかは明確に決まっていません。そのため、業務によっては進めにくいと感じるケースも出てきます。

    進化型組織、Teal(青緑)

    ティール組織は生命体に例えられます。
    組織は一部の人だけが独占するものではなくすべてのメンバーが共有し、一つの生命体として行動を続けています。
    リーダーも上司もおらず、メンバー同士が信頼しあった上で目標を達成していきます。
    それぞれの行動によって思わぬ進化につながり、生産性の向上にも貢献します。

    日本はOrage組織が多い。その理由は?

    現代の日本にはオレンジ組織が多いです。
    年功序列、終身雇用、新卒一括採用のシステムが日本ではベースになっており、高度経済成長期の企業に尽くし貢献することで評価を得られる、長く働き続けることで昇格できる風潮が強く残っています。
    ですが時代の変化に伴って自主性のない、個人のやりがいを奪う働き方に違和感を持つ若い人材は増えています。
    企業以外の組織でも、根性論で無理やり継続できている組織や組織のためではなくリーダーに気に入られる行動が評価につながる組織もあります。
    現代の考え方の変化により、オレンジ組織のままでは成り立たない組織も増えてくるでしょう。

    ティール組織の事例

    ティール組織を導入している企業はたくさんあります。
    すべての企業が成功しているわけではなく、中には失敗例もあります。
    成功事例と失敗事例を比較して、組織に何がどのように影響を及ぼしたのかをきちんと確認しておきましょう。

    サイボウズ

    日本のソフトウェア企業であるサイボウズは、チームワーク溢れる社会、チームワーク溢れる会社作りを企業理念としていました。
    もとから高く評価されている企業でしたが、どうすればよりチームワークのある企業を作れるかに悩んでいるときにティール組織を導入しました。
    ボーナスの金額を一律にする、自分の役割でなくても何らかの責任を担うようにするなどの方法を取り入れ、よりチームワークを重視しつつメンバーが快適に働ける企業を目指しています。

    ビュートゾルフ

    ビュートゾルフはオランダの企業です。
    かつてはオレンジ型でしたが、ティール型へと進化した成功事例として有名です。
    かつては効率重視の在宅サービスをおこなっていましたが、クライアントと信頼関係を築けなくなった、所属している看護師がクライアントの力になりたいという目的を果たせないなどの不満が増え、ティール組織の導入に踏み切りました。
    複数のチームを形成し、それぞれが自主的に経営するよう指導しました。
    以前はごく小規模な企業でしたが、現在はオランダで働く看護師の3分の2が所属している大企業へと成長しました。

    FAVI

    フランスの金属メーカーであるFAVIは一般的なヒエラルキー型の組織でした。
    CEOが変わるタイミングでティール組織を導入し、全体を21のチームにわけて経営をおこないました。
    売り上げの達成ノルマや予算などがなく、それぞれのチームが作ったルール、スタイルで経営を続けています。
    現在はFAVIの製品が50%のシェアを誇っており、フランス国内で唯一残った金属メーカーです。

    オズビジョン

    オズビジョンは日本のIT企業です。
    さまざまな独自の文化がありますが、その中でも着目したいのがサンクスデーです。
    サンクスデーは従業員すべてが取得できる休暇で、その日のために一定の金額が支給されます。
    そのお金でお世話になっている人に対して感謝の気持ちを伝える行動をし、後日どんなことをしたのか社内で発表するというルールが設けられています。

    ホラクラシーとの関係

    ティール組織と似た言葉にホラクラシー組織があります。
    ティール組織はすべての決定権がメンバーそれぞれにあるのに対して、ホラクラシー組織にはその組織内だけで通用するホラクラシー憲法があり、この憲法に則ってメンバーは物事を決定していきます。
    明確なルールがあることで組織が無法地帯にならず、ティール組織よりも導入しやすい、早くメンバーに馴染みやすいといったメリットがあります。
    ティール組織とホラクラシー組織は別のものと思われがちですが、ティール組織の中でもホラクラシー憲法のもとに組織を動かしているのがホラクラシー組織であり、ホラクラシー組織はティール組織の中の一種です。

    ティール組織に移行していきいきと働こう

    組織の新しいあり方として注目されているティール組織について解説しました。
    メンバーそれぞれの自主性を尊重することで、より動きやすく、モチベーションを維持し、組織の生産性の向上につなげられます。
    組織にはさまざまな形がありますが、組織に貢献することだけを目的としたりメンバー同士を競わせたりする組織は徐々に時代に合わなくなってきています。
    日本の多くの企業はオレンジ組織ですが、現段階の問題点をきちんと判断した上でティール組織へスムーズに移行する方法を考えましょう。

    この記事を書いた人

    HR BLOG編集部

    このブログでは、「経営者と役員とともに社会を『HAPPY』にする」 をテーマに、HR領域の情報を発信しています。

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