オンボーディング Onboarding 「新卒社員」や「中途社員」が辞めない仕組みづくり
『オンボーディング』とは、新入社員をスムーズに社内に溶け込ませ、パフォーマンスを上げさせるための一連の仕組みづくりを言います。この冊子ではHR先進国であるアメリカ企業の事例も踏まえ、人材育成のための最新のメソッドを解説。
オンボーディングの具体的な取り組み方をご紹介しています。
HR駆け込み寺
公開日:2020.9.30
目次
社長から、新規事業の舵を取るために、既存事業を任せられる右腕となる存在を見つけて欲しいとの依頼を受け、人事担当役員として今の会社に参画しました。猶予は3年、人事に関することは決済権を与えられているので、必要な体制、予算はある程度融通が利きます。社長が描いている経営計画とのすり合わせは、今実施している最中です。適性のある優秀な人材を外部から招聘するのがよいのか、今の中堅リーダーから次世代のリーダーになり得る人材を選定し育成していくのがよいのか、検討中です。(販売業:150名規模)
このようなご相談もよくいただきます。社長が「自分の仕事を任せられる誰か、次のリーダーを社内かどこかから連れてきたい…」。そのような話をする前に、まず先にやるべきことがあります。
もし、私がこの会社の人事のヘッドだとしたら、まず初めに社長とお話しして「既存のビジネスを取り巻く環境や要因を明確に」します。それがないと正しい人選ができないからです。
社長が新規事業に取り組むことになり、今行っている既存事業を誰かに任せたい…。そういうケースはよくありますが、目まぐるしくさまざまなことが変化していくこのご時世に、そもそも既存のビジネスが「既存」のままでいられるでしょうか。同じことをずっと続けているままでは、そもそも「既存」のビジネスすら存続できない可能性があります。まず、その事実を認識すべきです。
人の課題の前にやるべきこととして、まず社長と一緒に既存のビジネスをとりまく変化要因を全部洗い出してみましょう。環境、人口の変化、対外的な部分では顧客、株主、ステークホルダー、社内に目を向ければ社員、組合など、事業の変化があった場合に影響が出そうな項目をすべて洗い出します。
こうして既存事業の実状と変化要因を明確にするのです。
たとえば、次のようなステップで、分解して考えてみてると整理できます。
など…
ここまで社長と話を詰めて、やっと初めて「求める人材像」がはっきりしてくるのです。絶対に、社長との既存事業のディスカッションをスキップして、人選を進めてはいけません。この対話、求める人材像がないと、外部から招聘するにも社内から抜擢するにも、本当の意味で正しい人選ができないからです。
既存事業の内容によって求められる人材の要件は変わってきます。社内にはいない斬新なアイデアの持ち主がいいのか、同じことをコツコツとやり続けられる人がよいのか、新卒社員で入社して何十年もずっとたたき上げてやってきたからこそ、その人しか知らない・できない特別な何かがある人がよいのか…。もしかしたら、目まぐるしく変化する市場のニーズに対応できるような、幅広いネットワークを持つ人や柔軟な考え方ができる人が適材かもしれません。
人選に失敗する場合のほとんどは、求める人物像を明確にできておらず「既存のビジネスなら、これまでずっと同じことを長年やってきた人に任せるのがよいだろう」「この人は人望がある」「これまでの経歴がすごい」など、一部分だけで見てホワッとした曖昧な理由で選定するからです。
会社にもいろいろな背景や事情があり、次世代リーダーの人選を急ぐ理由もあるでしょう。そして人事は社長から「早くいい人を見つけろ!」と急かされることもあるでしょう。しかし、どんなに急いでいたとしても適切な人選を行うには、任せるビジネスに関する社長とのディスカッションを抜きにしては語れません。必ず話し合いのうえ、求める人物像を明確にしてから人選を進めましょう。
HRコンサルタント協会 理事。
外資系金融機関の人事部長を歴任。2013年にコカ・コーライーストジャパンの常務執行役員人事本部長に就任し、約30社の人事制度統合、企業文化改革、多大なるシナジー創出などを短期間で実現。電撃人事エグゼクティブとして名を馳せた。2017年10月にAsian Caesarsを立ち上げ、人事改革とグローバル人材育成のエキスパートとして、人事顧問サービス、エグゼクティブコーチング、講演など幅広く活躍。大手企業のリーダー達への変革指南で多忙な日々を送る。
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