オンボーディング Onboarding 「新卒社員」や「中途社員」が辞めない仕組みづくり
『オンボーディング』とは、新入社員をスムーズに社内に溶け込ませ、パフォーマンスを上げさせるための一連の仕組みづくりを言います。この冊子ではHR先進国であるアメリカ企業の事例も踏まえ、人材育成のための最新のメソッドを解説。
オンボーディングの具体的な取り組み方をご紹介しています。
HR駆け込み寺
公開日:2020.3.13
目次
経営者のみならず、幹部、人事担当者、上司にとって頭を悩ませるのが何かとトラブルを引き起こす問題社員への対応…。パワハラ、セクハラなど社員の間で直接的に被害を及ぼすケースもあれば、無断欠勤、業務指示の無視などで他の社員への負担を増やすケースもあります。会社として一番避けたいのは、このような問題社員が原因で、優秀な社員のモチベーションを下げたり、生産性を阻害したりすることです。最悪の場合、優秀な社員が退職してしまったり、裁判沙汰になってしまったり…ということになりかねません。このような場合、どのように対応したらスムーズに解決できるのでしょうか。人事・労務トラブル解決のプロフェッショナルである社会保険労務士の五味田匡功(ごみたまさよし)先生にアドバイスしていただきます。
ある企業の人事部長です。20代の女性社員から「10歳ほど年上の既婚男性上司との接し方で困っている…」と相談を受けています。
彼女の報告によると「社内の会議室がいっぱいだから」など何かと理由を付けて勤務時間終了後に社外で面談しようとするそうで、本当に業務上必要な面談ならともかく、面談のほとんどは私的な話ばかり、「今度一緒に食事に行こう」といつも誘ってくるとのことです。
「親が心配するので早く帰宅しないと…」など理由を付けて断るようにしているそうですが、「お前のことをちゃんと知りたいから時間をとって話そうとしているのに、そのような態度なら査定内容を考えないといけない」と言って責めてくるため、彼女は上司の顔を見るだけで息切れ、動悸がするようになってしまったとのこと。
彼女は「今の会社の仕事はやりたい仕事なので、できれば辞めたくないが、このままだと勤務を続けるのが難しいのでは…」と悩んでおり、会社としても彼女は優秀なので辞めてほしくないです。この場合、どのような対策をしたらよいでしょうか。
この方のお話を聞く限りでは、いわゆる「セクハラ」「パワハラ」などハラスメント事例に該当する事案ですね。ただ、このハラスメント事例でとても難しいところが、本人と上司の「状況」や「関係性」によって判断が変わってくるというところです。
ご相談いただいたこのケースの場合、内容から察するに女性は上司と「仲がよくないのに誘われている…」と感じているようですが、もしかしたら上司としては部下である女性の方と「仲がよいから誘っている」と思っている可能性があります。
「状況」でいうと、たとえば「一緒に食事しよう」というのをこの女性の前だけでなく、みんなの前で言っているようであれば、「冗談」とも受け取れるでしょうし、この上司と女性の部下との付き合いが長く、信頼関係があればハラスメント事例とまでいかないかもしれません。しかし、このお誘いの会話が、面談など上司と相談者の女性と個室で一対一で行われていた、この女性の上司になったのもつい最近でそこまで関係性ができていない、という状況だと、さすがに言われた方も「冗談」とは受け取れないと思います。
一般的にこのような場合は、女性からは被害状況について会社にとても言い出しにくい状態になります。「冗談」とは受け取れない状況だとして、女性が上司のさらに上の上司にあたる方に相談したとします。そうすると上司は自分の上司からヒアリングされる際にたいてい「自分はそんな(ハラスメントの)つもりはなかった…」と答え、ハラスメントがあったかどうか、それに対して改善されるのかどうか…という微妙な判断になる可能性もあります。
特に女性の場合は、自分から言い出すことによって周囲から自意識過剰と思われたり、報復人事など不利益を被ったりしないか…というリスクがあるので、ますます言いづらくなっていると思います。
では、このような場合、あくまで「状況」や「関係性」にもよりますが「会社」と「個人」で、それぞれどのように対応するのがよいのでしょうか。
まず「会社」の場合。とにかく被害にあった方が安心して相談できる窓口を用意することです。「本当にこれはハラスメント事例にあたるのか…」と疑わしい場合もあるかもしれません。しかし、受けた本人が少しでも疑問に感じたら、まずは気軽に相談できる環境を整えてあげることが大切です。
具体的には
などを盛り込んでいるとよいでしょう。
そして「個人」の場合。もし、会社に相談室があるのであれば、まずそこに相談すること。なければ上司の上司に相談すること。それで改善されれば、その会社はよい会社だと思います。
一方、相談したことによってますます上司のセクハラがひどくなったり、会社から不利益を被るような待遇になったりするような場合、見切りをつけて新たな道を探すのも一つの手段かと思います。体制を変えないようとしない会社に、そこまで嫌な思いをして留まるのも本人はつらいと思います。
会社以外の第三者機関に相談する、という手段もあるにはあります。ただし、弁護士だったりユニオンだったり、働きながら相談する時間と費用を捻出するのは、相当なパワーがかかります。また外部が介入する場合、具体的な事件でもない限り動きにくいという側面もあります。そこまでの労力をかけてまで、今の会社に居続けたいのかどうかというところも考えてから相談した方がよいでしょう。
会社として何を一番避けたいかと言うと「優秀な人材に辞められてしまうこと」です。社員からハラスメント事例について相談があった際に何もしないような会社であれば、どんどん優秀な人材から先に会社を辞めてしまうでしょう。この相談内容から察するに、たとえ会社が在籍し続けてほしいと思っていたとしても、このまま何の具体的な対策もとらなければ相談した女性社員はいずれ「不健全なことがまかり通って、改善されないような会社にそこまでしがみつく価値はない…」と考え、近いうちに辞めていってしまうと思います。
こうして優秀な人材はどんどんいい会社に転職していって、不健全な会社からは人がどんどんいなくなります。世の中からブラック企業が淘汰されていけば、いい会社だけが生き残り、従業員も安心して働けるようになります。
個人としては、まずは会社に相談を。会社としては社員が安心して気軽に相談できる窓口を用意して、健全な会社運営を目指しましょう。
会社としてオープンに相談できる窓口を用意し、個人が言い出しにくい内容でも、まずは相談窓口や上司の上司にあたる人に相談できる環境にすること。それでも何も変わらないような会社は、社員から見切りをつけられ、優秀な人材からどんどん離職されてしまうのでご注意を。
ソビア社会保険労務士事務所 所長 社会保険労務士/中小企業診断士
一般財団法人日本次世代企業普及機構(通称:ホワイト財団)代表理事
次世代に残すべき素晴らしい企業を発掘し、「ホワイト企業」として認定します。
ホワイト財団は、“次世代に残すべき素晴らしい企業”を発見し、ホワイト企業認定によって取り組みを評価・表彰する組織です。
私たちが考える「ホワイト企業」とは、いわゆる世間で言われている「ブラック企業ではない企業」ではなく、労働法遵守は大前提とした下記のような企業が、ホワイト企業と呼ぶにふさわしいと考えています。
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