オンボーディング Onboarding 「新卒社員」や「中途社員」が辞めない仕組みづくり
『オンボーディング』とは、新入社員をスムーズに社内に溶け込ませ、パフォーマンスを上げさせるための一連の仕組みづくりを言います。この冊子ではHR先進国であるアメリカ企業の事例も踏まえ、人材育成のための最新のメソッドを解説。
オンボーディングの具体的な取り組み方をご紹介しています。
HR駆け込み寺
公開日:2020.3.26
目次
経営者のみならず、幹部、人事担当者、上司にとって頭を悩ませるのが何かとトラブルを引き起こす問題社員への対応…。パワハラ、セクハラなど社員の間で直接的に被害を及ぼすケースもあれば、無断欠勤、業務指示の無視などで他の社員への負担を増やすケースもあります。会社として一番避けたいのは、このような問題社員が原因で、優秀な社員のモチベーションを下げたり、生産性を阻害したりすることです。最悪の場合、優秀な社員が退職してしまったり、裁判沙汰になってしまったり…ということになりかねません。このような場合、どのように対応したらスムーズに解決できるのでしょうか。人事・労務トラブル解決のプロフェッショナルである社会保険労務士の五味田匡功(ごみたまさよし)先生にアドバイスしていただきます。
100人規模の企画会社の社長で、人事も兼任しています。あるチームのマネージャーより、チームのある部下の勤怠や勤務態度がひどく対応に困っている、と相談を受けています。
経験者の中途採用枠で社歴も長い社員で、元々はまじめで仕事もテキパキとこなし、周囲ともコミュニケーションがとれていたのですが、1年前から様子が急変しました。他の社員ともまったく会話をしなくなり、上司であるマネージャーの指示をはじめ、会社のルールに従わず、好き勝手にふるまうようになってしまいした。業務時間中にECサイトを閲覧したり、私物のスマートフォンをいじっていたり(弊社はIT系企業でないので、そのようなものを見る業務はありません)、チームのメンバーに何も言わず長時間離席したり、外出したりするそうです。
その部下は経験者採用なので当初それなりのポジションで入社してもらっているのですが、このような勤務態度なので、この1年はその職位にふさわしい実績をまったく残せていません。その部下が問題行動を起こすたびにマネージャーが都度注意するのですが、その場で素直に返事はするものの、行動に反映させることはなく、全く業務意欲を感じない状況とのこと。社内外含め、業務上必要なコミュニケーションすら取れないため、協力会社や他部門からクレームが出てしまい、ますます任せられる業務がなくなってしまったそうです。
同じチームの若いメンバーたちは「なぜあんなに仕事をしない人が自分たちより給料が高いのか」と、不満が溜まっている状態です。マネージャーは「伸びしろがあり、やる気のある彼らが、このような会社の雰囲気に嫌気がさして退職することのないようにしたい」とのこと。このようなケースの場合、どのように対応するのが会社としてよいのでしょうか。
今回ご相談いただいたケースでは、以前はちゃんと働いていた部下が指示に従わずパフォーマンスが発揮できていない状況である、ということですね。ここで確認しておきたいのが、マネージャーとこの部下の方が、事前にどのような目標設定をしていたか、ということです。
「指示に従わない」、「社員と交流しない」という内容に対して、会社や上司が部下にどこまでのレベルを期待しているのか?そして定量的かつ具体的に示している目標設定を行っているのか?以前はテキパキと仕事をこなしていた、でも今はテキパキしていない、とのことですがこの「テキパキ」はどのような定義をされていますか?あくまで一般的な常識の範囲内という前提はありますが、この定義がお互いの合意の下で明確になっていないと、上司としては「ちゃんとやっていない」と評価し、本人は「自分はちゃんとやっている」と申告するし、平行線のままになります。
わかりやすい例でたとえると「幹部採用」がそうです。ある会社が幹部として中途の経理部長を雇ったとします。会社としては「経理部長なんだから、これくらいのことはやってもらわないと困る」と期待しているとします。経理部長も「自分は経理部長として入社したんだからこれくらいはやらないといけない」と意欲高く取り組んでいます。しかしお互いが考えている「これくらい」が「どれくらい」をイメージしているのか、具体的な行動目標、数値などで明確化しておかないと上司の幹部像と雇われる側の幹部像がお互いにすれ違ってしまいます。
そしてこの問題は、すべての上司と部下に対してあてはまると思います。人事や評価に限らず、世の中のもめごとのうち9割は、事前のすり合わせで避けられます。そこまで事前合意をしていても残り1割は何らかの諸事情でトラブルに至るケースもありますが、基本的には事前合意でほとんどのトラブルは避けることができます。だからこそ、真っ先に上司と部下で具体的な目標を決めて定量化し、合意することが大事なのです。そして、目標達成したかどうかの合意事項に対してお互いにそれができたかできなかったかすり合わせを都度行いましょう。
会社として法的なリスクを減らす、ということと人材の育成はイコールです。法的な問題が発生しないよう、社員の教育、研修はしっかり行いましょう。部下と一緒に目標を決めて事前に合意をとり、成果が出るようサポートしてあげるのが上司の役割です。部下に注意や指導もせず、ほったらかしにしたまま「期待した成果が出なかった」と評価や給料を下げるというのはいけません。問題社員、と切り捨ててしまう前に、まず会社、上司としてやるべきことをやって、それでも改善の傾向が見られないのであれば、そこで初めて「指導、教育したものの事前合意した目標が達成できなかった」ということで、目標に対してのマイナス評価をするようにしましょう。
「目標を具体的かつ定量的に設定している」、「面談などでお互いに合意をとった」、「目標に達していない場合は適切な指導も行った」など、それでも指示に従わず改善が見られないという状況であれば、査定のタイミングで給与の見直しなどを行い、しかるべき評価をせざるを得ないでしょう。事前にお互いの合意があって初めて「あなたにはこれだけのことをやっていただくという約束で、これだけの待遇を会社として約束していました。しかしその約束が守られないのであれば、会社としてこのような評価になります」と社員に伝えられるのです。くれぐれも正当な理由もなく給与をいきなり下げる、ということのないよう注意しましょう。
まずは部下と目標を決めて事前合意をとること。
ここまでやっても改善点が見られない場合に、給与など待遇面の見直しを行うこと。
ソビア社会保険労務士事務所 所長 社会保険労務士/中小企業診断士
一般財団法人日本次世代企業普及機構(通称:ホワイト財団)代表理事
次世代に残すべき素晴らしい企業を発掘し、「ホワイト企業」として認定します。
ホワイト財団は、“次世代に残すべき素晴らしい企業”を発見し、ホワイト企業認定によって取り組みを評価・表彰する組織です。
私たちが考える「ホワイト企業」とは、いわゆる世間で言われている「ブラック企業ではない企業」ではなく、労働法遵守は大前提とした下記のような企業が、ホワイト企業と呼ぶにふさわしいと考えています。
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