入社3年以内の新卒社員が離職する割合が3割を超える昨今。新卒の新入社員だけではなく、中途社員の離職を防ぐことも企業の課題となっています。
「会社全体でオンボーディングの意味をしっかりと理解し、新入社員を放っておかないようにすること。そしてイニシエーションを乗り越えてでも入りたいと思える会社づくりをすることが大切です」と語ったのは、石坂 聡氏(Asian Caesars CEO)と広瀬 元義氏(株式会社アックスコンサルティング 代表取締役)。前編の記事はこちら
中編では前編に引き続き、企業の「人間関係」や「オンボーディング」「エンゲージメント」について、石坂氏、広瀬氏にお話しいただきます
心が疲れてしまわないよう
オン・オフができる仕組みを
新卒や中途の新入社員へのオンボーディングはもちろん大事ですが、オンボーディングを進める先輩社員が精神的に疲れてしまっている場合があります。特にバックオフィス部門、経理にしても人事にしても、とにかく作業量が多い。さらに働き方の改革もしなくてはいけない。
特に新卒社員が入ってくる2、3、4月はいろいろやることがあって、大変ですよね…。
そうです。それにオンボーディングには、ものすごいエネルギーが必要ですよね。先輩社員にしても、人事担当者にしても、常に新しいチャレンジを続けていけるだけのポジティブさが必要なのに、あれもこれもしないといけない状況になっていて、疲れてしまっています。
あれもこれもとなると頭がオフにならないんですよね。今は職場を離れても仕事ができる環境があちこちにあり、勤務時間外でも出社せずに自宅でメールのやり取りができます。オフの時間を決めないと、常に何か考えてしまい、いろいろなことを気にしていたら頭がパンクしてしまいます。
誰かが強制的に休ませてあげたり、サポートできる仕組みがあると良いですよね。社員に少しお休みを与えれば仕事に戻ったときに、すごく仕事がはかどるはず。ちょっと話は変わりますが、最近、猫を飼い始めまして、猫の様子を観察するのがすごくヒントになったんですよ(笑)。起きている時の活動量がすごいんです。
ええ(笑)。エサがほしいときはとにかく甘えてきたり、暴れたりしますが、エサを食べ終わったらさっきの元気はどこえやら笑。何事もなかったようにスヤスヤ寝てしまいます。
あと、頭の中をオフにする取り組みとして、意識的に携帯を操作できない時間をつくるのも効果的です。北欧のフィンランドでは電気が通ってない森の中のウィークエンドホームを持つ人が多く、徹底的にオフの時間をつくるんだそうです。オフの時間は、季節ごととかではなく本当は毎日必要。ぼーっとする時間が大事で、それが頭の中をリフレッシュしてクリエイティブな発想力や活力につながるんです。
上司と部下がコミュニケーションを取れる場が必要
ここまでオンボーディングについて話してきましたが、次に上司と部下の関係性についてお話ししたいです。上司と部下の関係はこの10年で変わったか、変わってないかでいうと、どう考えますか?
あまり変わっていないと思います。昔からの先輩後輩、上下関係、社会的期待値みたいなものを引きずっていることが多い。なのでよほど信頼関係を築けていない限りは、上司と部下の関係は変わっていないと思います。
やはりそうですか。では、上司は部下との関係構築を具体的にどのように変えるべきだと考えますか?
まず、上司も部下もお互いにコミュニケーションを取れる場が必要だと思います。ひと昔前のように「俺の背中を見て学べ」というような姿勢では今の若い人はついてこない人の方が多いでしょう。
昔なら飲み会で、先輩社員が後輩社員の愚痴を聞いてあげたり、プライベートの話をしたりしてお互いに仲良くなっていたけれど、今はそういったつながりが少ない分、何が好きで、どんな悩みを抱えているのか、共有する場が少ないですよね。
そう。自分の意見を言い出せない部下がたくさんいると思います。
毎日2~3分のタッチベースで部下の想いを吸い上げる
上司と部下の関係で一番重要なのは、部下のストレスを取り除くこと。部下がストレスを感じているのは、仕事の成果に対する不安感や、期待に応えられなかったという罪悪感、チームにいながらも感じる疎外感とかですね。
部下から「もっとこういうことがしたい」と自分の意見を伝えられる場は必要ですね。広瀬さんがおっしゃったように、以前は飲み会があったり、アフター5に上司が部下を連れ出したり、部下のガス抜きのために話を聞いたりするなど、多くの機会がありました。今はそういう時代じゃなくなっているのはいいとしても、それに代わる場があるのかどうかですね。
上司に対して、部下が今考えていることを打ち明けられる場ですね。
上司が気を利かせるとか、信頼関係があれば話もできるんでしょうけど、みんな仕事に来て、終わったらパッと帰る。上司と部下が雑談する場もないので、お互いにどう話を切り出していいかもわからないでしょうし、わからずじまいっていうのはあるかもしれません。
でもそれではいけない。チームが一つになって突き進むためには上司と部下の信頼関係や協力関係が重要ですよね。
そうですね。たくさんの人が集まって、みんなで社会価値を出すとなったらチームワークは必要ですし、お金も発生している。さらに議論を戦わせていいものをつくって、上司が部下をどう評価するか。上司からの評価は部下の人生がかかっちゃうわけですからね。
そういう意味では、今は上司から部下へ積極的に声をかけ、
フィードバックするなど、上司から部下への歩み寄りがお互いの信頼関係を深めるには効果的ですね。
そうなんです。上司が部下とのコミュニケーションの多くするために、もっと積極的に声をかけてあげるといいと思います。
チームが一つになるためには、上司と部下のコミュニケーションが習慣となるまで徹底的に行うしかないでしょう。そうすれば、それが普通となっている人たちが上司になった時には自然な「タッチベース(※1)」が可能になると思います。
※1 タッチベース
上司と部下がコミュニケーションを頻繁かつ適切にとることで、上司が部下の考えを把握し、部門のモチベーションを引き出す手法
確かに。この「タッチベース」がないと、部下が何をどう考えていのるか知る機会がないので、久しぶりに話したと思ったら「辞めます!」と言われ、ビックリ退職になりかねません。
だからこそ、常日頃から「タッチベース」を意識しておくのが重要なのです。月に1回や半年で一度の
1on1ミーティングでは遅すぎる。一日に何度も、家族や仲間とメールのやり取りをしますよね。これと同じように
毎日2~3分でいいから部下の意見を吸い上げる仕組みを用意すべきです。アメリカの多くの企業ではこうした仕組みを取り入れことで、働きやすい環境を真剣に考えています。私たちもそこを見習わなければなりませんね。
まとめ
会社の売上を上げるためには、ただ目の前の仕事をこなすのではなく、上司と部下のコミュニケーション重要です。上司は部下の意見を吸い上げる仕組みがあるのかなど、社員がはたらきやすい環境について真剣に考えてみてはいかがでしょうか。
今回のポイント
- 社員の心が疲れてしまわないように、オン・オフができる環境を会社側が作る
- 会社一丸となって、上司と部下のコミュニケーションが習慣となるまで徹底する
- 毎日2~3分のタッチベースで部下の意見を吸い上げる
この記事を書いた人
HR BLOG編集部
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