オンボーディング Onboarding 「新卒社員」や「中途社員」が辞めない仕組みづくり
『オンボーディング』とは、新入社員をスムーズに社内に溶け込ませ、パフォーマンスを上げさせるための一連の仕組みづくりを言います。この冊子ではHR先進国であるアメリカ企業の事例も踏まえ、人材育成のための最新のメソッドを解説。
オンボーディングの具体的な取り組み方をご紹介しています。
オンボーディング
公開日:2020.11.12
社員の育成にオンボーディングを導入する企業が増えています。オンボーディングは単なる新入社員研修ではなく、かれらを組織の一員として定着させ、いち早く戦力化させるためのプロセス。新卒はもちろん中途入社の社員に対しても取り入れられ、人事や教育担当、さらには会社全体が取り組むべきものとして浸透しはじめています。
しかし、2020年の新型コロナウイルスの感染拡大を受け、新卒の社員は、入社式はもちろん研修すらままならないという状況に陥りました。そんな中広まったのがテレワークですが、オンボーディングも業務と同様にテレワークは可能なのでしょうか?
テレワークが広まり始めた当初は、スムーズに業務を遂行することができなかった企業も多かったようですが、徐々にそのノウハウが企業や個人で共有され、一気に浸透していきました。さらに、新入社員の採用の説明会や面接もオンライン上で行われたり、オンライン研修なども実施されたりするケースも増えてきており、今後、採用後に実施されるオンボーディングのプロセスについてもリモートで実施できる体制が求められつつあります。
オンボーディングは、通常のオフィスでの受け入れにおいても非常に重要なプロセスですが、リモートで実施する場合には、さらに注意が必要となります。リモート環境下で新入社員が組織に馴染み、いち早く戦力化するため必要な、いわば「リモートオンボーディング」は、どのような点を注意すべきかをご紹介します。
新型コロナウィルスの影響のため、遠隔でオンボーディングに取り組んだ企業は多いようです。もちろん、そのためには出社してのオンボーディングとは異なる準備が必要です。オンボーディングの内容によって各社準備に違いはありますが、共通の準備として下記のようなものがあげられるでしょう。
パソコンやスマートフォンなど業務に必要なハードウェアや、それらに付随するもの、例えばマイクやカメラ、ヘッドフォンなどを準備します。新入社員がテレワークを行う場所に送付してセットアップするか、もしくは、一度オフィスに来てもらってセットアップする方法などが考えられます。
リモート会議用のツールに加え、情報共有、ファイル共有、社内申請等のためのツールが必要になります。また、新入社員が知るべき情報を全てリストアップして、ToDoリストとして渡せるようにし、滞りなくツールを使えるようにしておくことも重要です。
しかしこれらのツールをセットアップしても、操作方法がわからなければ何の意味もありません。操作方法だけでなく自社ルールに基づいた利用方法を習得するには、マニュアルに落とし込むのではなく、デジタルアダプションツールで、操作ガイダンスや業務ルールをツール上に表示するのが効果的と考えられます。
新入社員が既存社員とつながり、組織に迎え入れられていると感じるようにすることも、オンボーディングにとって重要な役割の一つ。テレワーク中であっても同様です。
前述したコミュニケーションツールなどを使いながら、部署メンバーと顔を合わせられる機会を設けましょう。チームメンバーだけてなく、他部署のキーパーソンとのミーティングを設定することで貴重な情報を得たり、オンボーディングが順調であるか、困ったことはないかなどの確認のための定期的なミーティングを開催したりと、できるだけ頻繁にオンラインでのコミュニケーションを取りましょう。
新入社員が組織内のさまざまな人と繋がれるようサポートする役割として、メンター制度は有効です。新入社員にとってメンターは、最初に最もつながりを持てる相手、安心を得られる存在となり、彼らが企業に根付くための橋渡しとなり得ます。
テレワークでのオンボーディングの準備を十分したつもりでも、オフィスでの方法と異なるため慣れない部分も多いはず。ここでは実際にテレワークでオンボーディングを実行した企業の実例をご紹介します。
「入社を待っていました」というウェルカム感を大切にしているこの企業では、通常時はウェルカムカード、名刺、ロゴTシャツ等が入った入社キットの配布や、メンターのお迎えを実施していましたが、テレワーク中は、紙で渡していたウェルカムメッセージを「オンライン寄せ書き」で代替。さらにメンターがZoomでお迎えしたりなどといった工夫をしていました。
会社の雰囲気やカルチャーを体感するのが難しい状況を考慮して、「Remo」というツールを活用し、部署関係なく交流できる「バーチャルオフィス」を用意。全社的なコミュニケーションの活性化の施策に取り組んでいます。
オフィス周辺の居酒屋の名前でオンラインルームを設定したり、22時から二次会の会場として別ルームを用意しておいたりなど、「オンライン飲み会」を楽しくする工夫をしています。
チームごとに相談専用のオンラインルームを常設。聞きたいことがあれば「チャットで連絡→音声で会話」という体制を作り、相談しやすい環境を構築しています。
どうしてもコミュニケーションが重たくなりがちなWeb会議を、音声チャットツール「Tandem」を活用し、「新卒部屋」や「晩酌待機部屋」といった目的別のオンラインルームを設置。気軽に参加できるようにしています。
普段より疲労が溜まりやすいオンラインの環境を考慮して、自由時間や休憩時間を設けるようにしました。また、グループワーク研修では、Zoomのブレイクアウトルーム機能やGoogleのオンラインホワイトボード「Jamboard」を活用し、オンラインの議論の活性化を図りました。
社内イントラネットに「リモートコミュニケーションのルール」をはじめとした、リモートワークの手引となるページを設け、リモートワークに不慣れな人もスムーズに業務が遂行できるようにしました。
コロナ禍でのテレワーク、そしてオンボーディングは避けられない状況に。しかし、厳しい状況でも工夫次第でオンボーディングを成功させることは可能のようです。ぜひ、各社の成功例をお手本に取り組んでみてはいかがでしょうか。
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