オンボーディング Onboarding 「新卒社員」や「中途社員」が辞めない仕組みづくり
『オンボーディング』とは、新入社員をスムーズに社内に溶け込ませ、パフォーマンスを上げさせるための一連の仕組みづくりを言います。この冊子ではHR先進国であるアメリカ企業の事例も踏まえ、人材育成のための最新のメソッドを解説。
オンボーディングの具体的な取り組み方をご紹介しています。
テレワーク
公開日:2020.7.7
テレワークになると生産性・エンゲージメントはどうなる? 維持・向上の秘訣がここに!
特集:with/afterコロナ時代の働き方
世界中に甚大な被害をもたらしている新型コロナウイルスのパンデミック。その大きな波は、日常生活はもちろん社会生活にも急激に広まり、その対策に追われる事態となりました。そして外出禁止を余儀なくされたことにより、多くの企業が新しい働き方として、テレワーク導入に踏み切ったのです。
本特集では新型コロナウイルスをきっかけに大きく変わった「働き方」と、さまざまな課題を解決しながら新しい働き方に取り組む各企業の先進的な施策を、いち早く取材。テレワーク対策に悩む企業・経営陣・管理職の方々に向けてご紹介していきます。
第1回
株式会社オウケイウェイヴ
経営管理本部 人事部 部長代理 山本 卓也氏
コロナで急速に進んだテレワーク。スムーズな移行・運用に事前準備が奏功(前編)
Q&Aサイトを主軸として、人と人とが助け合えるさまざまな「場」を提供する株式会社オウケイウェイヴ(以下、オウケイウェイヴ)。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、オウケイウェイヴの従業員も、そのほとんどがテレワークでの勤務を余儀なくされました。しかし同社では、今回のコロナ禍の前からすでにテレワーク導入の準備を進めていたといいます。
今回の前編では、テレワークの導入に至るまで経緯や事前準備の方法、実際の取り組みなどについて、経営管理本部 人事部 部長代理の山本卓也氏に詳しくお話しいただきました。
この記事は2020年6月に取材した内容をもとにしております。
目次
私たちオウケイウェイヴは、生産性の向上やグループ各社の連携強化、そして企業理念のさらなる追求のために、2020年1月、本社を恵比寿から虎ノ門へと移転しました。その際、コンセプトとして掲げていたのが「変化と成長」。実は、移転の取り組みの一つとしてコロナ前からテレワークの導入を計画していたのです。そして導入期間を以下の4つのフェーズに分け、2019年の12月からスタートしました。
0.5:テスト運用期として12月中に全社員がテレワークを試し、各従業員の環境などを確認する
1:初期として、テレワークにおける不具合や問題点などの見極めを行う
2:安定期としてテレワークを浸透させていく
3:発展期。必要に応じて従業員がさらに働きやすくするための仕組みづくりや規定などを新たに取り入れていく
さらに、この一連のフェーズを実行していく前段階として、2019年の夏以前から、社内のペーパーレス化やノートパソコンおよびスマートフォンの支給を実施。さらにテレワークにかかわる規定の作成と従業員研修を終えている状態でした。ただ実際にテレワークが浸透していったのはかなりゆっくりで、それほど進んでいなかったのが現状でしたね。どうしてもみんな出勤することが習慣化していましたし、テレワークはあくまでも働き方の選択肢の一つで目的ではなかったからです。
移転先の新オフィスには、アクティビティベース型ワークプレイス(ABW)※を導入しました。一人で仕事をするためのブースがあったり、ファミレスやカフェのような席があったりと、ワークスペースの種類を多様化することで従業員が業務に合わせて席を選べるようになっています。テレワーク同様、その日の働き方に合わせて業務を行う場所を選べる環境を整えたかったのです。ただ、内装工事の遅れや、テレワークを想定して各従業員のワークスペースを以前の半分ほどに縮小していたこともあり、当初は席がなくて床で作業するスタッフがいたりもしていました(笑)。
移転してから約1カ月、まだ浸透前だったテレワークが急速に進む事態となりました。今回の新型コロナウイルスの影響です。各社、対応はさまざまだったようですが、オウケイウェイヴでは緊急事態宣言発令よりもかなり前の2月19日から原則出社禁止しました。社内に緊急対策室をつくり、3月9日からは、やむを得ず出勤しなければならない場合のみ、その理由を添えて申請を行う許可制として、従業員の出社を徹底的にコントロールしました。もちろん想定外の状況ではありましたが、それまでテレワーク導入のために進めていた事前の準備が功を奏し、大きな問題もなく97~99%の従業員がテレワークへと移行することができたのです。
もちろん、社内でテレワークが順調に進んでも、お客様への対応ができなければ企業としては大問題です。ただ、オウケイウェイヴの場合、大きなコールセンターなどを持っているわけではなく、お客様のお問い合わせに対してメールなどで対応することが基本だったので、そこもクリアすることができました。クライアントへの電話対応が必要な場合でも、すでに各従業員がスマートフォンを持っていましたから、平時と同様に随時対応が可能。こういった部分は、自社が提供していたサービスとテレワークが割と相性がよく、幸運だったと言えるかもしれませんね。
事前にある程度準備していたとはいえ、テレワークが一気に進んだことによって新たな課題や必要なモノも見えてきました。例えば、事前に支給していたスマートフォンのデータ通信量です。当初はそこまで大容量のデータ通信を準備していなかったため、テザリングで対応する従業員もいました。ただ、テザリングを使用した従業員から「データ通信の容量が足りない」という意見が出てきました。打ち合わせが多いと1日に10GB以上必要となってしまうのです。これらはテレワークを日常的に行わないと見えてこない課題だったので、随時対応しましたが、多少バタバタとしてしまいましたね。
また、4月以降に入社する新入社員に対しては、入社手続きや研修などすべてオンラインで対応をしました。なかにはリアルで一度も対面していないまま勤務開始となった新入社員もいます。
そしてテレワークでは、日々のコミュニケーションや表情、様子から互いを察するなど、日々自然とできていたことが難しくなってしまいます。そこで、実際に運用してみて気付いたことや、従業員へのアンケートを実施して上がってきた要望などから、以前から実施していた「コミュニケーション費」をテレワークでも活用できるようにしました。
例えばオンライン飲み会にかかった費用の支給や産業医によるメンタルケア、会社で使用しなくなったディスプレイやバランスボールなどを自宅で快適に業務を行えるように配布するなど、必要に応じて対応していきました。またそれらとは別に、使い道を指定しないテレワーク手当の支給も行っています。
他には、以前から運用していた図書購入費を使って、必要とする従業員の自宅に書籍を届けたり、CHRO(人事担当役員)と従業員15人前後で一緒にオンラインで会社の施策などについて意見交換会を行ったりといった取り組みもしています。
また特に若手などは、テレワークなど離れた状況でコミュニケーション不足になると不安感を覚えがちです。先ほどの産業医のケアはもちろんですが、その前に上司から直接コミュニケーションをとってもらうことが効果的。上司がしっかりと部下の行動や成果を見ていて、承認すること。そして、ただ部下を見ているだけでなく「見ているよ、みんなも感謝しているよ」と直接言葉で伝えてあげることが大事なんです。それにはテレワーク前から使っている弊社のサービス、OKWAVE GRATICA(オウケイウェイヴ グラティカ)がとても役立っていますね。週に一度、上司向けに連絡事項をアナウンスする際に、グラティカの活用もアナウンスしています。
通常、急速なテレワークの導入は大きな変化を強いるものです。しかし、オウケイウェイヴでは、非常時の対応としてではなく、働き方や働く環境の選択肢としてテレワークの準備・導入を進めていたたため、事前準備で、多くの障害を取り除くことができました。
もちろん、今回の新型コロナウイルスの拡大は、私たちの生活や社会活動に大きな被害をもたらしました。そして、世界中が少しでも早い終息を祈っています。しかし、悪い面ばかりに目を向けるのではなく、ここから学ぶこと、未来に活かせることは多くあるはずです。私たちオウケイウェイヴにとってこの状況は、「テレワークの状況下でも会社への帰属意識を保てるかどうか」などの従業員のエンゲージメントについて改めて考える機会になりました。そして、私たちが将来行っていきたいと考えていた、グローバルな展開をリアルに体験できた機会ともなった気がします。
この経験はきっと、場所や環境にしばられない新たな働き方についての大きな指針とすることができるはずです。
次回後編では、テレワークが急速に進むなかであらわになった、新たな課題や生産性を維持する方法など、オウケイウェイヴのテレワークに対する具体的な取り組みについてお伝えします。
※アクティビティベース型ワークスペース(ABW)
従業員が仕事の内容や目的に合わせて、働く場所や机を自由に選択することができるオフィススタイルのこと。そのため個室やソファテーブルなど、それぞれの仕事内容に合わせたワーキングスペースが用意されていることが多い
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