オンボーディング Onboarding 「新卒社員」や「中途社員」が辞めない仕組みづくり
『オンボーディング』とは、新入社員をスムーズに社内に溶け込ませ、パフォーマンスを上げさせるための一連の仕組みづくりを言います。この冊子ではHR先進国であるアメリカ企業の事例も踏まえ、人材育成のための最新のメソッドを解説。
オンボーディングの具体的な取り組み方をご紹介しています。
人材育成・開発・研修
公開日:2020.10.21
コミュニケーションロスという言葉をご存知でしょうか。コミュニケーションロスは近年研究が進んでいる現象の一つで、言葉自体は昔からあったものです。業務においてこのコミュニケーションロスを放置することで大きな問題につながるということが判明しています。そこで本記事ではコミュニケーションロスについてご説明するとともに、コミュニケーションロスの対策についても解説していきます。
コミュニケーションロスは、「自分の職場では大丈夫だろう」と安易に考えるのではなく、「どこでも起こりうる」という認識が重要となります。ぜひ最後までお読みいただきコミュニケーションロスの対策にお役立てください。
目次
最初にコミュニケーションロスについてご説明します。コミュニケーションロスとは、コミュニケーションが失われることではなく、コミュニケーション不足から起きるミスや失敗のことです。例えば集合時間の伝達漏れや納期の伝え忘れといったうっかりしたミスに分類されるもので、ここで重要なことはコミュニケーションロスはコミュニケーション不足を表す言葉であり、コミュニケーションそのものを失っていることではありません。
コミュニケーションロスでイメージされがちなのは、黙々と作業を行いコミュニケーションを十分に行わない職場です。しかし、それはコミュニケーションロスではなくコミュニケーションを取ろうとしない職場。もちろんそれにも問題はあるのですが、今回は除外して考えます。今回のケースに当てはまるのは、コミュニケーションは取られているが、コミュニケーションの取り方が悪くミスにつながっている職場です。
コミュニケーションロスの代表例は「報・連・相」が足りない職場と言われています。「報・連・相」は「報告・連絡・相談」の頭文字であり、これらが欠けることでコミュニケーションロスの原因となります。それでは「報・連・相」を完璧におこなえばコミュニケーションロスは起きないのでしょうか。答えはNOであり、「報・連・相」を徹底するだけでは対策にはなりません。
そこで次はコミュニケーションロスが起きる根本原因について見ていきましょう。
コミュニケーションロスの原因は「報・連・相」不足と思われがちですが、実際の原因は違います。「報・連・相」不足はコミュニケーションロスを招く一つの要因ではありますが、実際はもっと根の深いところに原因があります。今回は人間工学という学問をもとに、コミュニケーションロスについて解説します。
コミュニケーションロスの根本原因はヒューマンエラーです。ヒューマンエラーとは人間が機械やモノを扱うときに起きる些細なミスのこと。具体的には料理中に包丁で指を切ったり暗証番号の入力を間違えたりなどの出来事が該当します。このヒューマンエラーは科学的に防ぐことができません。それが可能になるためには限りなく人間をロボット化する必要があり、現実的ではないからです。
ヒューマンエラーをコミュニケーション不足が招いている場合があります。しかし、伝え忘れや報告し忘れといった現象は常に起こるわけでなく、あくまで稀に発生する現象。そのため、普段から「報・連・相」を行わない人物を除いては、ヒューマンエラーであるといえ、完全に防ぐのは不可能です。
次に、コミュニケーションロスに効果的な対策である、コミュニケーション能力を高めるという方法についてお話しします。
コミュニケーション能力の原則は、他者との意思疎通にあります。コミュニケーション能力とは他者といかにして意思疎通をできるかを評価した言葉であり、その能力のことをコミュニケーション能力と呼称します。そのため、必ず一方的でなく双方ともにリアクションがあることをコミュニケーションと定義します。一方的に情報を伝えるだけでは機能しないので、注意が必要です。
コミュニケーション能力が低い人は、コミュニケーションロスの比率が高くなるといわれています。その理由としてはコミュニケーションを理解できていないからです。コミュニケーションは前述のとおり相互に意思疎通を行うものであり、片方からだけでは成り立ちません。そのため一方的に指示をおこなう上司、指示に疑問を持っても質問・相談をおこなわない部下といった人物がいると、コミュニケーションロスの発生頻度が高まります。
これはコミュニケーション能力が低いために発生したコミュニケーションロスであり、コミュニケーションロスの中でも防げる部類になります。就職前はコミュニケーション能力が重要視されることもあり、コミュニケーション能力を高めようとする人は多いです。しかし、就職後には徐々に意識しなくなってしまい、自然と社内コミュニケーションはパターン化されてしまうことが多いようです。
そういった油断によるコミュニケーション能力の低下は、コミュニケーションロスを引き起こします。コミュニケーションロスの発生すべてを防ぐことは難しいですが、発生頻度を下げるにはコミュニケーション能力の向上は効果的です。ただし、相互に意思疎通をおこなうものという前提を忘れずに、社内コミュニケーションの改善を行うことが大きな効果につながります。
もし今コミュニケーションロスに悩んでいる人は、社内コミュニケーションを見直すと効果的かもしれません。そして、コミュニケーション能力を高める以外の対策はないのでしょうか。実はコミュニケーションロスには明確な対策が存在します。そこで最後にコミュニケーションロスを防ぐ対策について解説します。
最後にコミュニケーションロスの対策について解説します。それは2つの観点から考える必要があり、今回は観点別に解説していきます。
一つ目はコミュニケーションロスの発生回数を下げるという考え方です。前提としてコミュニケーションロスはゼロにすることができません。会社の規模にもよりますが、小さなものは日に数回から十数回ほど発生するといわれています。少なくすることは方法次第では可能で、おすすめは指示系統と指示内容の明確化です。コミュニケーションロスでは頻繁に言った、言わなかったの論争が発生します。
これは仕事を口頭のみで指示を出すことに原因があります。上司から指示が出された仕事の内容が勝手に変わっていた、という経験がある人は多いのではないでしょうか。これは上司の伝え忘れや、部下との認識がズレたことによる、コミュニケーションロスの一例です。こういったケースの場合は、口頭+指示書という形で仕事を依頼することが効果的です。
指示書には仕事の目的や内容、おおまかな納期まで記載しておきましょう。しかし、現役で部下を持っている人間からすれば、毎回指示書を出すのは不可能という意見が出ると思います。当然、すべての仕事に指示書をつけるのは非効率ですが、そこで重要になるのがマニュアル化とテンプレートです。指示書については記載部分を極力減らしたテンプレートを作成し、仕事内容をまとめたマニュアルを添付すると効果を発揮します。
マニュアルやテンプレートの作成に労力はかかりますが、一度作成すると使いまわしが可能。コミュニケーションロスの大半は忘れていた、聞かされていないといったケアレスミスが原因で必ず防げるわけではありませんが、少なくとも伝え忘れは減らせます。
二つ目はコミュニケーションロスが発生したときの被害を最小限にする対策です。例えばA社に対して今週中に見積もりを提出する必要があるとします。納期としては今週中なので金曜の終業前までに完成すれば問題なく、作業時間としては3時間ほどのボリュームです。この場合、部下に指示を出すときにいつまでに必要と伝えるべきか考えてみてください。ポイントはコミュニケーションロスが発生する可能性も考慮に入れるということです。
この場合水曜日の終業前に設定するのが効果的なのではないでしょうか。理由として金曜の午前中や木曜の終業までとした場合、コミュニケーションロスの影響が別業務に出る可能性が高いからです。部下の管理手法については別の課題ですが、基本的には作業時間の10倍近い納期がある仕事はそこまでのボリュームではありません。そのため、作業時間の5~8倍程度の期間があれば十分と考えられます。
このようにコミュニケーションロスが発生する前提で対策を考えることが重要となります。一般的なリスクアセスメントを意識した納期を意識することで、コミュニケーションロスの対策につながります。
本記事ではコミュニケーションロスの定義を解説し、その対策について解説を行いました。コミュニケーションロスは対策次第で発生頻度や被害を最小限に防ぐことが可能です。重要な考え方なのでぜひとも意識して対策することをおすすめします。
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