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メタ認知とは?トレーニング方法とビジネスでの活かし方
公開日:2021.9.28
- オススメ
メタ認知は昨今ビジネスでもよく使われる用語です。
例えば、人事や上司などが「メタ認知」を考慮した研修や教育を実施することで、社員の成長を促進できます。
より良い組織づくりの為にメタ認知の意味やトレーニング方法を知っておきましょう。
メタ認知とは?
メタ認知とは「客観的に自らの認知を自覚すること」です。つまり、自分が物事について理解しているということを客観的に把握することを意味します。
客観的に判断する場合は、「自身の認知」と「周囲の認知」に乖離がないと判断できている状況であれば、メタ認知ができているといえます。
メタ認知の意味
メタ認知は、認知していることを認知する。
例えば、「自分はリンゴの事について詳しく知っている」と認知したとしましょう。
この場合、客観的にも「本当にリンゴを詳しく知っていると言える」要素が必要となります。
また、「リンゴを知っているか?」と聞けば、多くの人は「知っている」と答えるでしょう。
「リンゴを詳しく知っているか?」と問われた時、
・「詳しく知っている!」
・「詳しくは知らない」
・「詳しくって何?」
上記のように、回答が異なることになるでしょう。
リンゴについての知識でメタ認知度を測る場合、以下のような段階があります。
❶ 知らない
❷ 色・形・味(子供が知っている)
❸ 価値・保存方法・調理方法・旬の時期(社会人が知っている)
❹ 生産方法・収穫方法・品種・成分(専門職が知っている)
❺ 分類・学名・歴史(研究者が知っている)
このように、「リンゴ」という一つの言葉に対して、非常に多くの情報が存在するため、以下の状況を把握しておかなければなりません。
- 情報をどこまで知っているか
- 客観的に見てどこまで知っていれば「詳しく知っている」といえるのか
さらに重要なポイントがあります。客観的に見てどこまで知っていれば「詳しく知っている」といえるのかという基準だけでなく、客観視する人物は変動するということです。
状況が変われば基準が変わる例
・子供たちの中で「リンゴについてよく知っている」
・研究者の中で「リンゴについてよく知っている」
同じ「リンゴについてよく知っている」でも全く知識レベルが異なります。
そのため、メタ認知とはしっかりと周囲の知識レベルを把握し、自身の知識レベルと見比べ、自身はどこに位置しているのかを認識することが大切です。
メタ認知の提唱者
メタ認知の提唱者はアメリカの心理学者John Hurley Flavell(ジョン・ハーレー・フラベル)です。
1970年代に定義した概念です。John H. Flavellは、社会的認知発達心理学の創設者であり、スタンフォード大学の心理学名誉教授です。
世界の発達心理学の発展に大きく貢献している人物で、メタ認知の第一人者です。
John H. Flavellは、メタ認知について分析し、下記のように分類しました。
メタ認知的知識・メタ認知的技能(メタ認知的モニタリング・メタ認知的コントロール)
メタ認知的知識についてはこちら
メタ認知的技能についてはこちら
起源はソクラテスの言葉
ギリシャの哲学者ソクラテスの有名な言葉で「彼らは何も知らないのに知っていると思い込んでいるが、私は何も知らないということを知っている。」というものがあります。
これは「自分が認知していることを把握している」状態を表します。
メタ認知に相通じる「無知の知」という考え方です。
メタ認知の働き
メタ認知には大きく分けて「メタ認知的知識」と「メタ認知的技能」があります。それぞれの働きや具体例について、みていきましょう。
メタとは
メタとは高次元的なという意味を持ち、例えば以下の事例のように使われます。
①漫画では「メタ発言」という表現を用いることがあります。
漫画のキャラクターが「この漫画の作者はもうダメだ」と発言したとして、この情報は漫画に出てくるキャラクターは知りえないことです。
②映画では「メタ推理」という表現を用いることがあります。
映画を見ているときに、「タイトルが前編となっているから、まだ事件は解決しない」や「この作者はこのようなトリックは描かない」など、映画の世界では知りえない情報です。
メタとは、作品から見て視聴者や作者のような高次元的な存在からの意見のことを意味します。
この場合のメタ認知は、自身を作品に置き換えて、第三者的な存在からの意見を認識するというものです。
メタ認知的知識
メタ認知的知識とは、自身について知っている知識です。例えば、以下のような要素は全てメタ認知知識に該当します。
- 何が得意で何が不得意なのか
- どのような状況であればリラックスできるのか
- パフォーマンスを発揮するには何が必要なのか
John Hurley Flavellはメタ認知的知識を次のように分類しています。
人間の認知特性についての知識
- 自分は、大勢の前では緊張してしまって話せない
- 自分は、歩くことは好きだが、早く走るのは苦手だ
- 自分は、作業を覚えれば早いが、覚えるまでに時間がかかる
課題についての知識
- 数学は桁数が多くなると計算ミスが多くなる
- 英語の単語テストは簡単だが、作文は不自然な文章になりがち
- 漢字の読み書きができると国語のテストは有利になる
方略についての知識
- 桁数の多い計算は、分割して計算することでミスを減らせる。分割を意識しよう
- 英語は文法暗記よりもコアイメージを理解することで不自然な作文を回避できる。コアイメージを理解しよう
- 本を読んで知らない漢字を書き出して調べると効率的に学べる。本を読んでみよう
メタ認知的技能(活動)
メタ認知的技能とは、メタ認知的知識を活用して最善の選択をしたり、不得意を改善したりする能力のことです。
自身の得意・不得意を把握したうえで下記のようなことを考えて実行します。
- 得意を伸ばすか、不得意を克服するか、どちらのほうが良いか。
- 不得意を克服するにはどうすればいいのか。
メタ認知的技能の高い人は、自分自身を理解した上で「どうすればいいのか」を考えて実施できるでしょう。
John Hurley Flavellはメタ認知的技能(活動)を次のように分類しています。
- メタ認知的モニタリング
- メタ認知的コントロール
それぞれの働きを見ていきましょう。
メタ認知的モニタリング
メタ認知的モニタリングでは、メタ認知の管理と更新を行います。
以下のように、現在把握している自身の情報の更新の有無、把握している情報は正否などをモニタリングして判断し、情報を管理していきましょう。
・学校では、テスト後の点数の確認。
周囲と比較し、数学の点数が悪い、自分は得意だと思っていたが、標準的だ。メタ認知を更新すべきだ。
・仕事では、タスク完了後のタスク処理速度と精度の確認。
周囲と比較し、タスク処理速度が150%と速い。反比例して精度は80%と低い。メタ認知を更新すべきだ。
メタ認知的コントロール
メタ認知的コントロールでは、メタ認知的モニタリングで得られた情報を活用して、以下のように自身の制御・改善を行います。
・学校では、テスト後の点数の確認。
問題解決フロー
周囲と比較すると数学の点数が悪い、自分は得意だと思っていたが、標準的だ。メタ認知を更新すべきだ。
不正解だった問題を特定しよう → なぜ不正解だったのだろう → 当てはめる公式が違っていた! → 公式を正しく理解できていなかったようだ → 公式を改めて理解しよう → 改めて不正解だった問題を解いてみよう → 改善できた!
・仕事では、タスク完了後のタスク処理速度と精度の確認。
問題解決フロー
周囲と比較すると、タスク処理速度が150%と速い。反比例して精度は80%と低い。メタ認知を更新すべきだ。
タスク処理の速さを120%に制限しよう→処理速度を落とした分、精度を20%向上させることに努めてみよう→改善できた!
メタ認知的モニタリングやメタ認知的コントロールは無意識化で行われることが多いものです。メタ認知という言葉や認知活動についての理解がない状態でも、考えずとも無意識化で行っています。
無意識化で行われてきたメタ認知の働きを意識的に改善していくことで、より認知の精度を高め、パフォーマンスを改善できます。
メタ認知と年齢との関係
一般的にはメタ認知能力は3前後に芽生え、加齢とともに増加していくものと言われています。しかし、実は以下のように部分的なスコアでは上下することがわかっています。
・幼稚園では3歳~6歳。
メタ認知が無意識化で形成されていく
知育環境に置かれ、成功と失敗を経験し始める
・小学校低学年では6歳~9歳。
メタ認知を意識し始める
就学・部活動などコミュニティに属したり、人と関わる機会が増える
語彙や知識が増え始め、コミュニケーションの幅が広がる
・小学校高学年では10歳~12歳。
メタ認知的知識が養われ、自分の特徴を理解し始める
授業やテスト、試合といった挑戦的な事象が多くなる
他人と比較する機会が増え、メタ認知的技能が養われていく
・中学生では13歳~15歳。
意図的にメタ認知的モニタリング・メタ認知的コントロールを行い始める
高校受験や部活動での大会など、他人と比較したうえで個人やチームの成績として表彰される機会が増える
メタ認知的技能が養われ、失敗や成功を経験として蓄積していく
・高校生では16歳~18歳。
18歳前後は情報処理能力や記憶力がピークに達するだけでなく、期間社会進出に最も影響を与える
部活動や勉学を経て将来像を見据えた生活を意識し始める
意図的にメタ認知的モニタリング・メタ認知的コントロールを行って日々努力と改善を積み上げていった生徒とそうでない生徒では大きく差が開く
この時点で勉学や部活動で優秀な成績を収められる人物であれば、実年齢よりも問題解決能力が高いと評価できる
・大学生では19歳~22歳。
22歳は他人の名前を覚える能力のピーク
経験や知識を積み重ね、十分にメタ認知ができる
社会進出の準備期間として研修やアルバイト、或いは研究職として学業以外での関りが増加する。学歴や部活動での成果を重視する会社は多く、特に大企業ではその傾向が強く現れる
採用時点で成熟しているだけでなく、比較的能力値の高い人物を選定する。また、高学歴な人物は早期成熟の可能性が高く、期待値が高い
・社会人では23歳~65歳。
メタ認知的知識をメタ認知的技術で有効活用してきた人は、問題解決能力や優れた技術を有している
そうでない場合には、問題解決能力や技術面で実年齢よりも下のスコアとなる場合が多い
メタ認知が低い人の特徴と具体例
ここでは、メタ認知が低い人の特徴と具体例についてみていきましょう。
(メタ認知能力が低い場合の例:数学)
「数学は嫌いだ。私にはむいてない。」
(メタ認知能力が低い場合の例:上司との会話)
「上司は私の意見を聞いてくれない。嫌われているからだ。」
「嫌いだ。苦手だ。と感じて解決しようとしない」傾向が見られます。
主観ではこのように感じるものの、客観的にみるとどうなるだろうか?自分に原因があるのではないか?のような思考へ繋げられない状態の人が【メタ認知能力の低い人】に当てはまります。
メタ認知が高い人の特徴と具体例
メタ認知が高い人の特徴と具体例をみていきましょう。
(メタ認知能力が高い場合の例:数学)
「問題が解けないのは公式を知らないからだ。公式を覚える必要がある。教科書を見直して分かりやすくノートにまとめてみよう。客観的にみると勉強時間が足りない。友達はもっと勉強に時間をつかっている様子だ。おそらく私は応用力も柔軟性も足りていない。効率的に補填するために類似の問題集を買って多くの問題を解いてみよう。難しい時は先生に聞いてみるのもいいかもしれない。」
(メタ認知能力が高い場合の例:上司との会話)
「上司は、忙しい人だ。時間を改める必要がある。話しかけるタイミングを考えよう。事前に社内メールでアポをとっておくことも必要かもしれない。短時間で効率的に伝えられるようにメモを書いて工夫しよう。今までは感情的な話し方だったかもしれない。論理的に話すことを心がけてみよう。」
「直接話す必要はなく、社内メールで解決できるかもしれない。周囲も社内メールを多く利用しているようだ。私もそうしてみよう。」
嫌いだ。苦手だ。と感じても、問題と向き合って解決するために熟考できる傾向が見られます。主観に加えて、客観的に物事を捉えられる人が【メタ認知能力の高い人】に該当する点は把握しておきましょう。
メタ認知の例
メタ認知を実践する方法として、まずは自分の考えについて考える必要があります。
例を交えて解説していきます。
高校生3年生の生徒3人に質問しました。
先生「5000文字の作文を書いてください」
Ⓐ君「書くことは苦手だ。イライラする。」
Ⓑ君「書くことは苦手だけど、1時間おきに休憩すればストレスが減る。数回に分ければ5000文字を書くことができる。」
Ⓒ君「経験したことがある。以前は1時間おきに15分間休憩したけど、今回は2時間おきに10分間休憩すれば十分。以前よりも早く書ける。」
それぞれのメタ認知に対する回答を詳しくみていきましょう。
Ⓐ君「書くことは苦手だ。イライラする。」
同年齢と比較しても明らかにメタ認知的知識が不足しています。苦手という区切りでその先の改善への道をすべて放棄している状態です。
メタ認知的知識のような自身の分析が行えず、なぜ苦手なのかを理解できず、改善するための思考が行えていません。
Ⓑ君「書くことは苦手だけど、1時間おきに休憩すればストレスが減る。数回に分ければ5000文字を書くことができる。」
文章をこれからも書くことを考えると「イライラするかもしれないけど、適度に休憩を挟む」ことで対処できる可能性があります。
メタ認知的知識をもとに、メタ認知的モニタリングとメタ認知的コントロールによって苦手なりにも対処法を考えらるでしょう。
また、この場合は自身の能力を理解して対処法を考案し、作業に組み込むことによって「できる」「できない」の判断が行えます。
Ⓒ君「2000文字の作文を書いた経験がある。以前は1時間おきに15分間休憩したけど、今回は2時間おきに10分間休憩すれば十分。以前よりも早く書ける。」
また、「5000文字と聞くと多く感じて不安だけど、原稿用紙12枚分と思えばなんとかなる。確か中学生の時に書いた読書感想文は2000文字だった」との認識もあります。
メタ認知的モニタリングで、過去の経験から現在の状態へメタ認知的知識を更新し、メタ認知的コントロールで自身を制御できています。
経験と知識から苦手に対する対処法を意識して、最大のパフォーマンスで効率的に作業が行えるように工夫できるでしょう。
事例をまとてみると、
A君は同世代のB君やC君と比べて、メタ認知においては未熟であると言えます。
B君は今後、経験を積むことで成熟し、C君に限りなく近づくことができるでしょう。
C君は十分に成熟していると言えるでしょう。
できない理由があったり、それを克服することが現状できなかったりした場合に「できない」と判断することも立派なメタ認知です。
メタ認知の5段階
メタ認知には5つの段階があり、学習の5段階と類似しています。
【学習の5段階】
1.無意識的無能(知らないしできない)
2.意識的無能(知っていてもできない)
3.意識的有能(考えるとできる)
4.無意識的有能(考えなくてもできる)
5.無意識的有能に意識的有能(どこからでも教えることができる)
❶自分は何ができて、何ができないか分からない。
ほかの人が何をできて、何ができないか知らない
集団の中で自分がどこに位置しているのかわからない
主観でも判断できない
❷何が得意・不得意・どれくらいできる・どれくらいできないのか分かる。
自分は走るのが得意だが、数学が苦手だ
主観で判断できる
❸何が得意・不得意かを客観的判断して自分を評価できる。
周囲と比較して自分の事を評価できる、集団の中で自分の立ち位置を理解して、何が得意で何が不得意かを認知できる
主観での評価と客観での評価を比べて正しくメタ認知ができる
主観+客観で判断できる
❸できるようになるには、どうすればいいのか対処法を考えられる。
できない理由を特定し、できるようになるための対処法を考えられる
メタ認知的知識を活用してメタ認知的モニタリング・メタ認知的コントロールを行える
主観+客観で判断して対策法を考えられる
❺最大化や効率化を意識した改善ができる。
その分野において十分に成熟し、対策法を意識せずとも実行できる
さらに、その分野において未熟な人物の行動や判断、思考などを理解して修正することができる
主観+客観で判断して対策法を考えられる。さらに最大化・効率化の為に考えて実行できる
また、他人に教えることができる
メタ認知能力を向上させるためのトレーニングを実践
実際に何をどうすればメタ認知能力を高めることができるのか、みていきます。
メタ認知に効果的な方法が3つあります。
・セルフモニタリングと自問自答
・コーチング
・メタコグニティブトレーニング
それぞれの方法で、実際にメタ認知を行う際のフローを確認していきましょう。
セルフモニタリングと自問自答
メタ認知のセルフモニタリングとは、自分の事を観察することです。
「自分は何をしていて、何を考えているのか」行動や思考を観察(モニタリング)し、自問自答してみましょう。
いい点を取れるようにノートにまとめている。
前回は数学の点数が平均よりも低かった。
今回は数学の点数を平均以上にしたい。
このように自身の行動や思考について観察し、自問自答してみるとメタ認知がしやすいといえます。一般的にはここで解決しなかった場合は他者の意見を参考にすることが大切です。
主観で解決しなかったということは、自身の認知と客観的な認知に差があった可能性が高いためです。
メタ認知における、セルフモニタリングの注意すべき点
セルフモニタリングの注意すべき点は、主観での思い込みです。自問自答で得た結論を正しいと思い込んでしまうことで、正確なメタ認知ができません。
柔軟に他者の意見を取り入れて「自身の認識」と「周囲との認識」の差をなくすことが必要です。
コーチング
メタ認知のコーチングとは、自分の事を他人に観察してもらうことです。
セルフモニタリングは自分自身で完結するものでしたが、コーチングには他人に干渉してもらうものです。
例えば以下のように、セルフモニタリングよりも精度が高く、客観的な意見を取り入れることでよりメタ認知がしやすくなります。
上記のように、コーチングではモニタリングや質疑応答を補助してもらうことができる点を企業でも把握しておきましょう。
客観的な意見を取り入れてメタ認知が行えるので、主観だけでの判断よりもより正確にメタ認知しやすい方法です。
コーチングの相手を増やすことでより豊富な情報量を元にメタ認知が可能です。上司と部下、先生と生徒の関係でもコーチングが生かせます。
会話の中でコーチングを行い、メタ認知能力を育てることができるます。
なかなか成長してくれない新入社員や部下の事でに悩んでいる人は、不自然にならないようなコーチングで成長を促進してあげましょう。
メタ認知における、コーチングの注意すべき点
コーチングの注意すべき点は、他者に頼りすぎると主観での判断ができなくなることです。
メタ認知とは「自身の認識」と「周囲の認識」の差をなくすことであるため、客観的な意見は必須ともいえます。
しかし、なんでも他人に聞いてしまう場合、自身の意見や考えを主張することもなくなってしまいます。最悪の場合、考えを放棄しているとも受け取られてしまうケースもあるでしょう。
そのため、周囲の意見をとりいれつつ、自身の意見も尊重しつつ、バランスをとっていくことが大切です。
(Metacognitive Training: MCT)メタコグニティブトレーニング
ドイツ・ハンブルク大学の Moritz 教授が自らの認知バイアスに無理なく気づくことができる方法「メタ認知トレーニング(Metacognitive Training: MCT)」を開発しました。MCT はグループでの実施が基本ですが、個人用のMTC+も開発されています。
MTCダウンロードと解説
メタ認知のメリット
メタ認知能力の最大のメリットは、問題解決能力の高さです。問題解決能力は、人生におけるあらゆる場面で活躍します。
ビジネスや開発・研究や実験・資格取得や運動まで、人生で経験する全ての問題に対して活用可能です。
メタ認知は「認知を認知する」と定義され、状況を好転させるためには主観に加えて高次な視点が役立ちます。
人は問題に直面した時に、思考して行動に移ります。蓄積されたメタ認知的知識を活用して、問題解決までの思考速度や実行速度、判断速度が向上して問題解決能力が飛躍的に高まるでしょう。
問題解決能力が高まると問題に直面した時の素早い判断が可能になります。優先行動の順位づけが即座に行えるようになるだけでなく、対処法の実行までの速度が向上可能です。
ビジネスでの活かし方
人事
人事部では、評価、教育・研修、組織づくり、社員同士のいざこざの解消など、様々な問題に直面します。
人事部の人間が自身をメタ認知できていることが重要です。
加えて、社員がメタ認知できているかも重要になってきます。
人事評価の場合、「社員本人の認知」と「評価者の認知」が乖離していないことが大切です。
ここにズレが生じると評価に値する結果を出していると錯覚して「自分だけ評価されない」「上司に嫌われている」などの不満につながります。
客観的に周囲を見渡して「なぜ評価されないのか」「評価されるためにはどうすればいいのか」を自発的に行わせることが必要です。
また、職務記述書などを使用して、社員の目標や成果への報酬などを明確化しておくことも大切です。人事評価時に認知のズレが生じているとトラブルになります。
トラブル防止・解決のためにも、人事部が率先してメタ認知を理解する必要があります。
メタ認知の重要性を理解したうえで、教育・研修を行って社員が自発的にメタ認知を行える環境づくりを意識することで、社員の成長につながるでしょう。
メタ認知能力の向上は、社会性や問題解決能力に大きな恩恵をもたらします。
よりよい組織づくりのためには、円滑なコミュニケーションも大切です。
例えば、社員同士のいざこざや些細なトラブルは積み重なることで休職や退職、内部崩壊につながります。しかし、日ごろから社員全員がメタ認知による熟考と自身の制御を意識した円滑なコミュニケーションを行うことで、このような事態を避けることが可能です。
社会人に必須となる知識である「メタ認知」を社員に共有すべき人物が「人事部」だといえます。メタ認知を含め、人事に生かせる情報は無数に存在するため、積極的に情報を収集して会社と社員のより良い関係づくりに励みましょう。
コミュニケーション
良好なコミュニケーションは日々の積み重ねです。
「この人はこの話題が好きのようだ」「次はこの話題について学んでから話してみるといいかもしれない」「この人はこの話題が嫌いのようだ」「次はこの話題については触れないようにしよう」
以上のように、会話を展開しつつ相手の反応を見て、喜怒哀楽を読み取って情報を蓄積していくことで、好印象を得る為に自身の行動を制御できるようになります。
タスク処理
タスクに関しては実行速度や問題発生時の対処速度の向上です。メタ認知による客観的視点からの冷静な判断は周囲から高評価を得られることでしょう。
自身の短所や長所を客観的にも把握できているので、短所を補うための対処法や長所を伸ばすための改善案を持ち合わせています。
また、日常的に「自身の認知」と「周囲の認知」を比較していることから、周囲の認知を認知することにも長けています。
周囲の認知を認知して、このプロジェクトは自身の短所を補うべきか、それとも長所を伸ばすべきかといった柔軟な対応が可能です。
就職
メタ認知は就職にも有利に働きます。
問題解決能力の向上は自身の成長スピードにも影響します。
学生時代に早期成熟を達成した成績優秀者を企業が優遇する理由も、このような背景があると考えると非常に合理的です。
普段は無意識に行っているメタ認知でも、意識的に行うことでその精度が更に高まります。しっかりとメタ認知を理解してビジネスシーンでも活かしましょう。
メタ認知に関するよくある質問
- 【メタ認知のメリットは?】
- メタ認知能力の最大のメリットは、問題解決能力の高さです。
この問題解決能力は、人生におけるあらゆる場面で活躍します。
ビジネスや開発、研究や実験、学業や運動まで、人生で経験する全ての問題に対して活用可能です。
メタ認知のメリットについて詳しくはこちら - 【メタ認知能力を高める方法は?】
- セルフモニタリング・コーチング・メタコグニティブトレーニングの3つがあります。
セルフモニタリングは1人、コーチングは2人、メタコグニティブトレーニングはグループで行います。
メタ認知能力を向上させるためのトレーニングについて詳しくはこちら - 【メタ認知と年齢に関係性は?】
- 深い関係性があると言えます。通常、年齢を重ねるほど知識や経験は増え、より正確なメタ認知ができるようになります。
中には年齢に関わらず、心理的・環境的な影響によって主観と客観の乖離を認知できない=メタ認知ができない人もいます。
メタ認知と年齢との関係について詳しくはこちら - 【メタ認知の「メタ」とは?】
- メタ=「高次の」という意味を持ちます。高次元的な存在のことです。
メタ認知は、より広く高い視点からの認知ということになります。
メタについて詳しくはこちら
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